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とある近衛の心の日記★

3月2日byA

 最近、コーネが匂い袋を作っているらしい。

 誰かにプレゼントするのかね?双子共が騒いでやがたが、下手な男に騙されてないと良いんだけどねぇ。ま、そのうちにでも確かめてやるか。


3月21日byA

 今日は殿下の護衛だったが、交代している隙に逃げられた。

 一刻もしないで戻ってきたけど、何をしていたのやら。ずいぶん機嫌が良くなっていて不気味だ。


3月22日byT

 昨日は殿下に逃げられてリアにこっぴどく怒られた。

 リアの時に逃げられないからって、よりにもよってなんで俺のときに逃げるんだ。ついていない。まぁ殿下とリアは親しいみたいだし、殿下の行動パターンをリアほど知ってるやつもいないし、リアが居ないときが狙い目だと思っているのは周知の事実なんだけど。

 嗚呼。

 てことは、知ってて油断した俺が悪いのか。

 次からは気をつけよう。


4月3日byA

 今日、殿下からハーブの香りがした。

 いつも香水なのに珍しいこともあるものだと思ったら、どうやら匂い袋を持っているらしい。しかも手作りの匂い袋だ。ちらりと見たが、なかなか手の込んだ意匠の刺繍だった。レイチェル様はあまり手芸が好きではないと侍女から聞いたことがあるが、他の令嬢からの貢物にしては質素すぎる。CとLの頭文字だし、侍女か誰かに刺繍させてレイチェル様が渡したのかもしれないが。

 コーネも作っていたし、流行しているのかもしれない。

 ちなみに香りは、ミントとカモマイルのようだ。


4月20日byA

 とりあえず、驚いた。

 なんの気なしに匂い袋のことをコーネに聞いたら、殿下の持ってる匂い袋と同じ意匠だった。ずいぶんあっさり白状していたが、母さんに友達にやるって誤魔化してたから大丈夫だとおもったんだろうか?そうだとしたらかなり迂闊だ。

 もしかしたら一方的に慕っているのだと思っているのかもしれない。自分が渡した匂い袋を殿下がいつも持っているとは思っていないのなら、まぁ多少は理解できる。

 しかし、まさか殿下とコーネとは。

 なんて意表を突く組み合わせなのか。

 少し、心配だ。


5月4日byT

 今日は殿下がサーベルト家にお忍びで訪ねられる日だった。

 かなりご機嫌でいらっしゃるが、肝心のレイチェル様は王妃様とお茶会のはずである。サーベルト家のご当主様とはあまりそりが合わないと聞いていたのだが、関係が改善されたのだろうか。わざわざ手土産まで持っていくとは。

 ちなみに、次の間で待っているときに出された紅茶がとても美味しかった。

 少し幼いが可愛らしい侍女が運んでくれたのだが、名前を聞きそびれてしまった。残念である。


5月11日byA

 生真面目堅物人間の隊長に、初めて浮名が流れた。

 あの隊長が侍女の尻を追いかけるなんて、きっと槍が降るに違いない。


6月3日byA

 どうやらコーネは本当に殿下と交流があるようだ。

 隊長が期間限定で希望した内勤のことを知っていた。こんなことをすでに知っているのは殿下のごく限られた周囲だけなのにもかかわらず、だ。否定もしなかったしな。一応、友達がどうのこうのとか言い訳していたが、そこらへんの侍女にそんなことを話すはずもない。

 ったく、殿下もいつの間にコーネに目をつけやがったのか。

 そのうち締め上げて吐かせてやる。


6月12日byA

 ようやく隊長が通常勤務に戻った。

 コーネの件については、何度聞いても口を割らない。

 しかも、隊長の恋の相手がコーネっていう噂はどういうことなのか。まさか、本当に隊長が?いや隊長とコーネが知り合いならば殿下との繋がりもそれなら納得できるが、しかし隊長にそんな甲斐性があるとは思えない。

 蚊帳の外に置かれるのは、面白くねぇな。


7月28日byA

 今日は久しぶりにサーベルト家のローレル様が殿下に会いにきた。

 茶会が終わった後の殿下の機嫌は最悪だった。どうやら、何か自慢されたらしい。

 羨ましくなどない、というような内容の台詞を五回ほど言ってきた。可愛い仔犬が欲しいらしい。

 俺に言われても困る。


8月20日byT

 最近はレイチェル様をめぐる恋の鞘当が盛り上がっている。

 王族というのはどこの国も派手好きなのだろうか。

 まぁ、そんなことより俺が気になっているのは、サーベルト家で見た侍女である。あの後、二回ほどサーベルト家に行く機会があったが一度も見かけない。もしやすでに結婚して屋敷を下がったのだろうか。

 そうだとしたら、ちょっと、いやかなり残念だなぁ。


8月29日byA

 どうもコーネと殿下が恋仲だというのは違うみてぇだな。

 何かしらの繋がりはあるようだが、普段のコーネから恋をしてる様子など微塵も感じられない。

 今日もガーランド殿下の話を他人事のように笑っていたし。

 髪の毛をぐしゃぐしゃにするなと怒られた。可愛いヤツ。


9月1日byT

 例の侍女に良く似た子を見かけた。

 でも下女の仕事をしているみたいだし、別人だろう。この子も可愛いかった。


10月26日byA

 今日は、久しぶりに殿下に逃げられた。

 しばらく大人しかったから油断していたとはいえ、二刻もの間行方をくらますとは、一体どこへ逃げ込んでいたのか。まぁ王宮の庭園あたりに行かれてしまえば探し出すのは難しいが、俺の目を盗んでまで行きたい理由がわからねぇし。

 やっぱりどっかの侍女の部屋にでも行ってるのだろうか。

 まぁ、次はねぇだろうが。


11月13日byA

 殿下の私室に呼びつけられて、何事かと思ったらコーネのことだった。

 なぜかは知らないが、夜会に出ることになったらしい。詮索無用ということみてぇだから、仕方ない。

 まぁ、めんどくせぇ相手選びをしなくて良くなったとだけ思っておこう。

 何か釈然としないのは気のせいだということにしておく。


11月20日byA

 実家でもある屋敷にコーネを呼んだ。

 どうやら裏があるとは思っていたようだが、俺がエスコート役になったには驚いていた。引く手あまたの俺の相手役なんだから、もっと喜べってぇの。

 ムカついたから少しからかってやった。

 思いのほか、コーネが子供じゃなくて焦ったのがバレていなければいいんだけどな。


12月24日byA

 今夜は色々と驚かされた。

 コーネの友達って、レイチェル様かよ!そりゃあ、殿下とも知り合うはずだ。それだけじゃねぇみたいだけどな。

 とりあえず、コーネが着飾ると好みの美人になることを知った。


* * *


続く?

はじまりから王宮の夜にかけての時期です。

ちなみにTは名前の出ていない正真正銘の脇役なので、本編で探せなくても問題ありません。第三部で出てくるかもしれません。

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