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とある弟君の心の日記★


10月31日byS

 今日もレイチーは意地悪だった。

 せっかく可愛いのに、あの性格の悪さじゃどこにもお嫁に行けるわけない。

 それに比べて、うちのお姉ちゃんは優しいし可愛いし働き者だし、きっと大人気になるに違いない。ちょっと甘いお菓子に弱すぎるけど、男はそんなところが「カワイイ」って思うものらしいし!

 レイチーにそう言ってやったら、お嫁にいったら家にはなかなか帰って来れなくなるって言われた。本当だろうか?

 それならレイチーにはさっさとお嫁に行ってもらって、お姉ちゃんの良さは俺だけが分かってるってことになれば良いのにな。まぁレイチーは顔しか見ないって噂の貴族のとこにでも行っちゃえば良いや、うん。

 だって、そうすればお姉ちゃんを一人占めできるもん!


12月26日byS

 俺は、今日からお姉ちゃんをコニ姉と呼ぶことにする。

 本当はコニと呼びたかったんだけど、呼び捨てにしたらコニ姉が落ち込みそうだから姉ってつけてみた。さっき呼んでみたら、ちょっとびっくりしてたけどそのあと普通に笑ってたから大丈夫そうだ。

 なんで呼び方を変えたかっていえば、まぁレイチーに対抗するためだ。

 だって、レイチーが「コニ」って呼ぶのは父さんと母さんと自分だけなんだからって自慢してきたのだ。たしかにそうだ!と目からうろこのきもち(使い方あってるかな?)だ。

 俺の方が、コニ姉のトクベツだぜ!

 なんたって弟、家族なのだ。

 ざまーみやがれ。


* * *


4月3日byS

 最低最悪だ!コニ姉が貴族に攫われる!!!

 くそ!全部レイチーのせいだ。

 昔、貴族のとこに行っちゃえば良いって思ってたけど、それは一人で行けば良いってことであって、コニ姉まで連れて行くなんて許せるはずがない。

 コニ姉が虐められたらどうするんだ。

 しかも、コニ姉が居ない家なんて、太陽のない空(すごくつまらないものを表現するのに使うってカッコいい吟遊詩人が言っていた)みたいなもんだ!


5月1日byS

 結局、コニ姉はレイチーの泣き落とし(女の涙は卑怯だ)に負けて貴族の屋敷に行ってしまった。

 淋しい。

 でも、十日に一回は家に戻ってくるから我慢してる。

 レイチーは戻らないから一人占めできるけど、他の九日をレイチーが一人占めしてるんだと思うと腹が立つ。つい文句を言って喧嘩になっちゃうんだけど、コニ姉は男心の分からない鈍感さん(これも相談した吟遊詩人がゆってた言葉で大人の男ってかんじ)だ。

 別にレイチーは大嫌いってわけじゃない。

 だけど、もう良い加減、俺がレイチーを好きだって勘違いは止めて欲しい。

 俺は、将来はコニ姉みたいな嫁をもらう(本当ならコニ姉と二人で暮らしたい)のが夢なのだ。


* * *


8月24日byS

 やっぱりコニ姉は貴族連中に苛められてるらしい!!

 出入りの衣裳屋が虐められてるのを目撃したのだ。コニ姉は何も言わないから知らなかった。しかも、どうやら虐めの理由はレイチーと仲が良いことをやっかまれてるかららしい。

 レイチー、許せねぇ!!!!

 絶対、コニ姉は返してもらう。


11月4日byS

 めちゃくちゃ怖ぇ貴族が家に来た。

 にこにこしてるが絶対あれは性格悪い。一瞬見ただけでいけすかねぇ野郎だとは思ったが、なんとレイチーの義理の兄らしい。再三のコニ姉を返せ要求を突っぱねていたのがコイツだったらしく、やっぱりコニ姉は屋敷から返してもらえないとのことだ。

 かなりの大金を置いていこうとしたが、親父が断っていた。

 うん!普段はちょっとヘタレだけど、今回ばかりは格好良いと思った。

 しかし、どんな大貴族だか知らないが、コニ姉が虐められてるのを知っていて離さないなんて酷すぎる。コニ姉は優しいから、自分からレイチーを捨てたりできないのは分かり切ってるけど。

 貴族なんて大嫌いだ。


* * *


2月25日byS

 ようやくコニ姉がお屋敷から解放されるらしい。

 良かった!ようやく家に帰ってくるんだ!と喜んでいたら、なんとそのまま王宮に上がるらしい。またしてもレイチーの我がままのせいだ。

 でも、今回はさすがにべったり一緒に居るのは断ったらしい。お屋敷の生活がよっぽど厳しかったんだろう、当然だ。さすがの我がままレイチーも、コニ姉の主張を受け入れたらしい。

 …ま、実際はコニ姉の頼みをレイチーが断ったことなんかない。

 それを知ってるから、俺たちだって親権を使って無理にコニ姉をお屋敷から戻さなかったのだ。本当に嫌だったら、コニ姉は自分で家に帰ってきただろうから。

 だから今回も、王宮に上がるのを本気で反対したりはしない。就職先としては申し分ない場所だし。

 ただ、またコニ姉と会いにくくなるのが淋しい。

 だから、ちょっとくらい駄々をこねるくらいは許して欲しいのだ。


3月1日byS

 久しぶりにレイチーと会った。

 かなり貴族っぽくなっていたけど、やっぱりレイチーはレイチーだった。ムカつく。

 一足先に王宮へ行ったコニ姉に手紙を届けるように頼みに来たってことだけど、どーやらコニ姉の勤め先は知らされていないらしい。ざまあみやがれってんだ!

 まぁ、俺の作ったレースのハンカチを送るときに、ついでに届けてやるけどね。


3月5日byS

 コニ姉から手紙と匂い袋が届いた。

 相変わらず丁寧な針運びの刺繍と俺の好きなミントとシナモネのブレンドに、愛を感じる。嬉しい。

 レイチー宛の手紙は、とりあえずお屋敷にでも送っておこう。

 王宮勤めが楽しそうで、俺も嬉しい。

 もっと帰ってこれたら、もっと嬉しいんだけどね!


* * *


続く?

本編【幕間】のあたり。

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