第三小節 - 意思
一気に脳内に流れ込んだ記憶に気持ちが悪くなる。呼吸が荒れ肩で息をする。それは隣に立つアニマとマルカートも同じようだ。
「なんだよ、今の…」
「分かりません…誰かの記憶でしょうか…」
"貴方たちが見たこれらは 失われた巫の里アートマーの記憶"
「あんな、あんなことが!実際にあったというの!?」
"そうです そしてシャルムの血を継ぎし炎霊の巫よ 貴女をここに呼んだのはそのためです"
「巫がアルマの魔力を管理していた…?それに操縦していたって、そんなのまるで…」
"巫は奪われてしまった 存在意義も役目も アルマにおいてもはや何もない それを取り戻し 今一度アルマを導くのです"
「私が巫であることは否定しません。しかし突然そんなことを言われても…」
"シャルムは強かった 彼女はあの後も折れることはなく 血を絶やさなかった 紡がれてきた意思と巫としての運命を 未来に託すために"
「…全てを信じたとして、アニマに何をさせたいんだ?」
"アクラルネを殺すのです"
心臓が締め付けられる。今精霊は何と言った?アクラルネを殺せ、その言葉が頭の中で木霊する。
「なぜアクラルネ様を殺す必要が…?」
"アルマの操縦権からなにから その全てを巫である貴方たちは奪われた その結果現在のアルマは不安定です"
「だから!なんでアクラルネ様を殺すなんて話になるのよ!」
"アクラルネの血を絶やし血の盟約を断ち切る そうすればあなたたち巫が今一度 このアルマにおける指導者になれるのです 最も合理的かつ簡単な方法をお伝えしています"
訳が分からない。言っていることは理解できるがそれはあまりにも不条理だ。
"アクラルネとは彼の者たちにより創られた存在 海洋民の一氏族に植え付けられた運命 彼らも不幸であったでしょう しかしそれをあるべき姿に戻すことが巫に紡がれてきた意思"
精霊は言葉を止めることなく続けていく。
"彼らに課せられた残酷な過去も未来も 全ては彼の者たちが作り上げたシナリオの一つ このままではアルマは崩壊の一途を辿ってしまう それを止めるのです"
「あなた、ここにそのアクラルネ様がいると分かっていて言っているのかしら」
"分かっています エヒト・エーデル ネル・エーデル 両名がアルマに戻った時点から歯車は回り始めた"
「分かっていて!なぜ殺せなどと言えるのですか!」
"先に言ったようにそれが最も簡単で確実だからです 巫に選ばれた時点でこれもまた貴方たちの運命"
「お断りよ!」
「同じくです。エヒトさんもネル様も、私たちは彼らを殺す気は一切ありません!」
「…」
"あえて荊の道を歩むこともまた運命 私たち精霊は巫の言葉を是とし支えましょう しかしアルマの崩壊を止める手立ては限られています"
「探すに決まっているわ!エヒトもネル様も殺さないし死なせない別の道を!アクラルネ様に課せられた運命も私たち巫に課せられた使命もアルマが崩壊する未来も、その全てを断ち切ってやるわよ!」
"分かりました 炎霊の巫 そして地霊の巫 お二人の意思を私たち精霊は尊重します"
そう言い残して精霊は口を閉ざした。
「もう!なんなのよ!ほんっとうに腹立たしいわね!二人とも、こんな陰気な場所にいつまでもいられない、出るわよ!」
「どうやって出るんだ?」
「先ほど見た記憶を辿ればあちらの方角に出口があるのではないでしょうか」
「さっさと行くわよ!」
"またご無事に戻られることを願っております"
精霊の言葉を背に受け俺たちは走り始めた。夢の中で見た女が使っていた出口はこの先だ。マルカートの背中からは怒りが伝わってくる。
「あった!あそこよ!」
マルカートが指を指した場所には不自然な通路が開いていた。人二人が並んで通れるくらいの抜け穴だ。
俺たちは足を止めず走り抜け外に出る。眩しい光に差され目を思わず閉じ、徐々に成れてきた目を開いた先は森の中だった。
三人揃って肩で息をして立ち止まる。
「教えてくれるよな、巫のこと」
「もうここまで知った以上、隠す必要はないです。私も知らないことがたくさんありましたが、色々と情報を整理しましょう」
「…空気を読めなくて申し訳ないのだけど、その前に親方との約束はどうするのかしら?」
「あっ」
ここまでのあれこれで完全に失念していた。親方が来るのは明日だ。
「今日はここで夜営しましょう。恐らく霊樹の森からそこまで離れていないはずです」
「そうしよう。遅れたら申し訳ないけど…二人にも整理をつける時間は必要だろ?」
「それは勿論そうよ!というかアニマ、貴女やっぱり炎霊の巫だったのね!?」
「はい。しかしルカも地霊の巫であることを隠していましたよね」
「だってそれは!」
「はいはい!言い合うのは辞めてくれ。俺にはそのどちらも聞き覚えがないし何も知らないんだ。一つ一つ整理していこう。俺にも色々聞きたいことがあるんだ」
「…わかりました」
「…分かったわ、熱くなってごめんなさいね」
そして起きたこと、知ったことを整理していく。
まず二人に聞いたところ、現在アルマは誕生から1017年が経っているとのことだ。先ほどの記憶の中ではアルマが誕生して541年経過しているといった会話があった。つまりあの記憶は今から473年前になる。
ではアクラルネが誕生したのはいつか。これはマルカートが言っていた。アクラルネは465年前に誕生している。
「つまり、さっきの記憶からアクラルネ誕生までの8年の間に何かが行われた。それによって巫は権限を失い、アクラルネ…エーデル家に引き継がされたんだ」
「認識に相違ないです」
そして巫は権限を奪われたのみではなく里を滅ぼされ、そのほとんどが殺されてしまっている。あの記憶の中に出てきた人物で生存した可能性が残っているのは4名。
一人目はシャルム。彼女の生存は間違いないだろう。
「シャルムはアニマの祖先なんだよな?」
「はい、昔の記憶なので曖昧ですがシャルムという名前は聞いたことがありました。彼女はスーティーン家が炎霊の巫を継ぐに至った大本の人物かと」
「分かった。…次、二人目はトッドの兄。地属性の精霊との契約者だったらしいけど」
チラリとマルカートを見る。
「そうよ、私の祖先で間違いないわ!でもそもそも私は巫を継ぐような系譜ではないのよ。アマービレ家は分家、なぜ私が巫に選ばれたのかは分からないわ!」
「…ひとまずアニマが炎霊の巫、ルカが地霊の巫で間違いないんだよな?」
「…はい、隠していてすみません」
「いや、聞かされていたとしてそれがどんなものでどんな意味かは分からなかっただろうから、謝る必要はないよ」
「私も隠していたわ。エヒトにも、アニマにも…」
「私はなんとも思っていませんよ。隠すに足る理由はありますから」
「それは今後話そう。次に三人目。これは確定ではないけどトゲ爺様と呼ばれていたアートマーの長だな」
明らかに異質なあの老人。記憶の中で感じるだけでも彼だけは異常だった。それがなにか説明はできない、できないがそう思うだけの違和感があった。
「恐らく彼はローゼンの先祖に当たるはずだ」
「団長の…?なぜですか?」
「記憶の中で語られていた一子相伝の秘術、空間歪曲魔法をローゼンが使えるからかな」
「…確かに。団長も私たちタクトゥスの全員を視認できなくしたり認識を曲げたり、ありえないと言わざるを得ない技量を持って隠してくれていました」
「ああ。アニマには悪いけど前から1つ疑問に思っていたことがあるんだよ」
「なんでしょうか?」
「なんでローゼンはあの盗賊のアジト跡にアニマを探しに来たんだ?」
「…それは……っ!まさか!」
「ローゼンはアニマが炎霊の巫だと知っていた可能性がある。そして仮にトゲ爺様の子孫ともなれば巫の歴史を全て知っていてもおかしくない」
「ちょ、ちょっと話が複雑になってきたわね」
「だな。一旦トゲ爺様についてまとめるなら、ローゼンは巫に権限を取り戻しアルマの指導者になるべく行動している可能性がある。そしてそれはトゲ爺様からローゼンまで継がれてきた意思だ」
「…おかしな点はありません」
さっきの記憶を見なければこんなことは考えつかなかっただろう。だがそれに足るいくつものピースが揃っている。
「で、最後にあの時点で生き残っている可能性…というか生き残っていた人物」
「トッドのことですね」
「そう。俺が昨日交戦したカリャカリの二番手。あいつと記憶の中のトッドは同一人物だと断言できる」
「私もそれに異論はないわね!あの男から感じた魔力とトッドの魔力、本当によく似ていたわ…」
「私は会ったことがないのでなんとも言えませんが、二人がそう言うならそうなのでしょう」
「大した問題ではないけど、あのトッドと記憶のトッドは別人だと断定して良いと思う。元の体になった男は死んでいるし、その体を使ってトッドを生き返らせたようなもんだ」
「となると後一人生き残りがいますね」
「後一人?」
「あの女ね!あいつが一番掴み所がないわね」
「死なないんだよな?となるとやっぱり今もアルマのどこかにいる可能性は高いか…トッドと一緒にカリャカリにいたって可能性は?」
「うーん。私が潜入していた半年の中では一度も見かけてないわね」
ひとまず人物のおさらいはここまでだろう。憶測も含まれてはいるがそう大きく違わないはずだ。
そして話は次のテーマに移る。
「人物のおさらいはこれでいいか。次は巫とは何か、アニマとルカが知っている範囲のことを教えてくれないか?」
「では私から…」
アニマの口から語られた巫の話は突飛なものだった。
「私の知る巫はアクラルネ様の権限を持っていた、などと言ったものではありません。炎霊の巫に与えられた役目はアルマを旅して魔物を滅すること。そしてアクラルネ様を支え婚礼を結び…」
「婚礼…?」
「…はい。過去の炎霊の巫はそれを成すことができませんでした。理由は諸説ありますがいずれにしてもこの140年、アクラルネ様がアルマに居なかったためそれは叶わなくて当然です。それ以前がどうかは知りませんが、成し遂げていないということは何かしらの理由があるのかと」
「炎霊の巫は魔物の駆除とアクラルネとの婚礼が役目ということだよな?」
「そうです。先ほど見た記憶がもし全て本当だとすると、あそこからスーティーン家がどのように神殿内部に取り入ったか分かりません。が、我々の一族が昔から魔物の浄化を生業としてきたことはこのお役目があったためです」
「でもアクラルネとの婚礼って…」
「…本来私は一族の悲願を達するためにエヒトさんと結婚し、子を成すことが義務付けられていたでしょう」
「そんな大切な事を一族の掟だとか、役目だとか、そんな理由で決められて良いわけがないわ!」
「ルカの言う通りです。私は既にスーティーンの名を捨てています。私は炎霊の巫でありながらこの役目を全うする気はありません」
「ああ、俺もそれで良いと思う。本来この時代に俺やネルが帰ってきてしまったことがややこしくなっている原因なんだろ?」
「…あまりそのように言いたくはありませんが、そうです」
「分かった。ひとまず炎霊の巫の役目はそういうことだな」
アニマが知っている話と先ほどの記憶の内容から推察するにだ。恐らく炎霊の巫にアクラルネを継承させる事が目的であると思われる。
アクラルネの継承権を持つエーデル家の人間と炎霊の巫を継いでいるスーティーン家の人間。この間に子が生まれた場合どうなる?それは炎霊の巫であるアクラルネが誕生する可能性。つまり巫がアルマの全権を取り戻すことと同義だ。
「やはり団長はこれを知っていたのだと思います」
アニマは顔を伏せてそう言った。
「ローゼンか。そうだろうな。恐らくローゼンは全て知っているしそれを前提で動いている。アニマを救ったこと、アニマを隠し続けたこと、俺の元にアニマを送り出したこと。これまでの話を繋げるなら全てに説明がつく」
「私がタクトゥスを離れた時も今思えば違和感はあったんです」
「そういえばどうしてタクトゥスを抜けたのかしら?私は詳細を聞いてないわね」
確かに色々あって抜けた、としかアニマはマルカートに伝えていない。改めてその時の状況をマルカートに説明する。
「それ、本当にレジェロさんは騎士に捕まっていたのかしら?」
「どういうことですか?」
「アニマは現場にいたのよね?」
「いえ、騎士が来たのを見てすぐに身を隠したので…実際に連行されたところは見ていません」
「…エヒトは?」
「俺も現場にはいなかったな。そう聞いただけだ」
「二人とも頭から抜ける事があるようだけど、ローゼンさんがトゲ爺って人の子孫なら空間歪曲魔法が使えるのよ?」
そこでハッとなる。空間歪曲魔法により見える景色などは好きに改竄できるのではないか?それであれば騎士が迫ってきた様子をアニマに見せ、更に他の団員にも信じ込ませ、その結果アクラルネの可能性が高いと思われた俺に着いていくよう仕向けることは可能だ。アニマはローゼンを信用しているのだから。
「ですがそんなまどろっこしいことをしますかね?」
「仮にだ。俺がアクラルネであると最初から確定していたとしたら?それならアニマは俺と婚礼を結ぼうと動いたか?」
「…いえ。先ほども言ったように私はスーティーンの名を捨て今はただのアニマです。継がれてきた意思を全うすることは悲願でしょうが、私にはその気はありませんでした」
「今はどうなの?」
「今、ですか…最初に会った時ほど嫌悪感はありませんし、むしろ仲間として信頼していますよ」
「それよね?ローゼンさんの狙いって」
「…そういうことか」
「お二人で話を進めないでください、どういうことですか?」
「ローゼンさんは賭けたのよ。アニマがエヒトと行動を共にするうちに信頼が芽生え、次第に惹かれていくことに」
「…っそれは!」
「無くはない話だと思う。ローゼンがアニマを盗賊のアジト跡から救った理由の仮説にも結び付く」
「ですが私がスーティーン家の人間だと知る機会なんて…」
「"ローゼンは昔騎士団に所属していた"」
俺の言葉にアニマの声が詰まる。そうだ、ローゼンは騎士団に所属していた過去がある。つまりその時にリゾルートさんの家系を知り娘がいることを知ったとしても不思議ではない。
更に言えばリゾルート隊の人たちもアニマという存在を認識していた。この事から全員では無いにしろ騎士団の中でアニマイコールスーティーン家の人間である、という認識があってもおかしくない。
「…この件は別で考えさせてください」
「そうだな…といってもほとんどが憶測だ。余り深く考えすぎないようにな」
アニマの話は一旦ここまで。炎霊の巫の件からだいぶ脱線してしまったがこれもまた大事な話だ。
「次はルカ、地霊の巫について教えてくれないか?」
「分かったわ」
そしてマルカートは語り始める。地霊の巫の伝承を。
「そもそもアマービレ家は分家の一つよ。宗家は母方、そっちに地霊の巫は継がれてきたわ。でもなぜか今回は私が選ばれた」
「その選ばれたってのはなんなんだ?」
「小恥ずかしいけど見せてあげるわ」
そう言ってマルカートは服のボタンを外して肩を露出する。左の二の腕側面、そこには光る紋章が描かれていた。
「これは私が生まれた時からあるものよ。これこそが巫に選ばれた証明。過去の巫達は何か別の手段をもって巫となっていたようだけど…選ばれた者には紋章が刻まれるのよ」
マルカートはそこまで言って服を正す。
「アニマにもあるのか?」
「はい、私にも刻まれています。私の場合は右足の付け根にありますね」
「そうか…」
「で、話を戻すけど。私が知っている地霊の巫の使命は血を絶やさない事よ。そしてもう一つ、アクラルネ様を殺すこと」
「ルカは知ってたのか!?」
「殺すように地霊の巫の家系に伝わっていることは聞かされていたわ。でも理由なんて知らなかった。だから私にそんなつもりはなかったのよ。そもそもアクラルネ様は外海にいたのだからそんなことできないし」
「そうか…そうだよな、そうじゃないとマルカート家がアクラルネ教徒である理由がない」
「それは少し違うわね。アルマではアクラルネ教徒であることが義務付けられているのよ?それ以外に信仰の対象がいないのだから当たり前ではあるし、仮に巫の敵であったとしても今現在までアルマを守ってきたのはアクラルネ様よ。そう言った側面からも私たちはアクラルネ様を神として信仰しているのよ」
「地霊の巫の役目は血を絶やさずいつかアクラルネを殺すこと、か」
二人が教えてくれた巫の家系として紡がれてきた役目。炎霊の巫は魔物の討伐とアクラルネとの婚礼、地霊の巫は血脈を絶やさない事とアクラルネの抹殺。それぞれ全く異なる方法ではあるが、いずれもアルマを巫の手に取り戻すことが着地点になっている。
「二人ともありがとう。さっきの記憶と二人の話からして、やっぱり巫はアルマの権限を奪還するために今も存在している。恐らくあの二人組でも探しきれず殺しきれなかったんだろう」
「そうね、私たちの祖先は生き残って今に繋いでいるのだから間違いないわ」
「それにしても、炎霊の巫と地霊の巫とでこんなにも言い伝わっていることが違うとは知りませんでした…」
「私もよ!聞いていて真逆だと結構驚いたわ!」
「里が壊滅した後にどうなったかは分からないけど、シャルムさんとトッドの兄クラールさんはまず意見のすり合わせをしていない。というかできなかったんだろうな。だからそれぞれの家系にそれぞれの意思が反映されているんじゃないか?」
「恐らくそうだと思います。隠れ住んでいたのかと。そうなるとなおのこと私の家系が騎士になっていることは不思議ですが…」
「なんか頑張ったのよきっと!だってアクラルネ様と結婚しようって言うのよ?近くにいることが一番の近道じゃないかしら!」
「そうだな。スーティーン家の望みはアクラルネを殺さずに巫が権限を取り戻すことだ。精霊の言っていた荊の道というのがそれだろうな」
ここまでで分かる巫の情報は出揃った。これ以上は二人も知らないようだし、もっと詳細に分かったとして何もできることはない。
「二人とも巫であることを隠していたのはどうしてなんだ?」
「私はスーティーン家の人間ではもう無いですし…それに言い触らしてはいけないと言われてましたので。そもそも一般的には巫という存在自体知られていませんよ」
「私の場合もそうね!巫だから偉いわけでもないし、ひけらかすようなものではないわ!」
「俺に黙ってたのはどうしてなんだ?」
「…私がエヒトさんと婚礼を結ばなくてはいけない、そんな使命があると言われたら困りませんか?」
「それも困るでしょうけど、エヒトとネル様を殺さないといけない、なんて私に言われてどうするの?」
「どっちも困るな」
「そうでしょう?それによって話が拗れてややこしくなることは明白です」
「あの記憶を共有しあったからこそ話せるのよ!じゃないと私たちはただの頭がイカれた人になってしまうわ!」
確かに二人の言う通り、隠すだけの理由はある。
「ひとまずこの話はここまでにしましょう。随分と日も落ちてきました」
「そうだな。この後はどうする?」
「この後って…夜営して寝るしかないわよね?」
「いえ、このまま不変の霊樹へ向かいたいです」
「親方との約束があるとは言えそんなに急がなくても間に合うんじゃないか?」
「今なら不変の霊樹は手薄である可能性が高いからです」
「…確かにそうね!遅い時間までネル様を連れ回すことはないでしょうし、私たちはアジト跡で隠れていると思われているはず。となれば聖域に騎士がいない可能性は高いわ!」
二人の意見を聞いてなるほどと納得する。確かに聖域に戻ってくると思われていない可能性もあるし、そうでなくてもいま向かうのが得策だろう。
「よし、じゃあ行くか」
そして俺たちは改めて森の中を進み始めるのだった。




