第三小節 - 慟哭
「エヒトさん!」
大きな声と揺れを感じ、俺は目を開いた。目の前には今にも泣きそうな顔をしたアニマがいる。
「アニマ…無事だったのか…」
「私は大丈夫です、何があったんですか!」
周囲を見ると気を失う前と同じ、盗賊のアジト跡にいた。
「こんなところに一人で、何をしていたんです?」
「アニマを探していたんだ…」
「私はずっとアモールにいましたよ」
「え?」
それを聞いて一気に意識が覚醒する。無駄足だったのか…。
「でもグリレさんが外に出たって言ってたんだけど」
「確かに出ましたが少しぶらついて下方の門から戻りました。入れ違いになってなってしまったみたいです。それに、私一人でこんな、こんな場所には来ません」
俺を支えるアニマの手は震えている。俺は酷い思い違いをしていた。ここはアニマの思い出の地ではない。綺麗な場所でも懐かしむ場所でもない。あの光景を見た今ならここに来ているかも、とは思わなかっただろう。
アニマの手を離れ、痛む後頭部を押さえながら立ち上がる。
「宿に戻ったら誰もいないし、エヒトさんが私を探すためにここへ向かったと書いてあったので慌てましたよ…」
「ごめん、アニマ。すぐに出よう」
震えるアニマの手を取り、俺は出口に向かって進み始めた。アニマは何も言わず着いてくる。
外に出ると遠くにアモールの街と海が見えた。ホッと胸を撫で下ろしそのまま歩き続ける。
「どうしてあそこで倒れていたんです?」
「ああ、カリャカリのメンバーらしい男に襲われたんだ。全く太刀打ちできなかった」
「襲われた!?ここまでルカを探しに来たんですかね…」
「"背の低い女を知らないか"、って言ってたから確実にルカのことだと思う」
「間違いなさそうですね。それに太刀打ちできなかったって、そんなに強い相手だったんですか?」
「いや、何もさせてもらえなかったよ。隔絶した強さだった。正直もう会いたくないな」
「私たちの旅の目的とは関係がないので会うことはもうないと思いたいですが…ルカと共にいる以上注意しないといけませんね」
「そうだな」
「それにしても、エヒトさんはどうして泣いていたんです?負けたことが悔しかったんですかね?」
「泣いていた?」
「はい。私が起こす前に涙を流していらしたので」
「…そうだな…酷く悲しいことがあって、それのせいかもしれない。悔しいとかではないよ」
「そうでしたか」
そう言ってアニマは手を離し頭を撫でてくる。
「涙が溢れた時はこうして頭を撫でてもらうんです。そしたら辛いことも悲しいことも、全て払ってくれるみたいでしょう?」
「…ごめん、アニマ。こんな場所に来させてしまって…」
「良いんですよ。もう私は平気ですから」
そう言って手を止めずアニマは微笑んでいる。先ほどまであんなに震えていたのに、その気持ちを押し隠して俺を励まそうとしてくれている。
二人でフローラルを発って以降、アニマには支えられてばかりだ。俺も強くなって仲間としてアニマの支えにならないといけない、そう感じるのだった。
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街に着いた時には既に昼を過ぎていた。宿に着き部屋に入るとマルカートはベッドで寝息を立てている。その隣に腰を下ろしたアニマはマルカートを撫でる。
「ふふ、幸せそうに寝ていますね」
「昨日ルカに抱きついて寝てたアニマと同じような顔してるな」
「…え?なんですかそれは?」
キョトンとした顔でアニマは俺を見てくる。まさか覚えていないのか?と思いつつ昨日のことを話した。
次第に頬を染めアニマは俯いて言い訳を始める。
「お、おかしいですね。私の記憶ではエヒトさんと夕食を食べて湯浴びして…というか初めてのお酒でこう、気分が良かったんでしょうね!そうに決まってますよ!」
「そんなに必死にならなくても…ルカは喜んでたし」
「うぅ…」
一層深く下を向いて顔を覆ってしまった。
すると横で寝ていたマルカートから声がかかる。
「何よ二人ともうるさいわね…随分遅かったじゃない…」
ふあとあくびをしながら起き上がる。そしてアニマの顔と俺の顔を交互に見てとんでもないことを口走る。
「…え?あなたたちもしかして私の隣で致したの…?」
「「なにもしてない(ません)!!」」
「おぉ、ピッタリね」
拍手をしながらマルカートはからかってくる。とんでもないやつだ。
居心地の悪い空気に居たたまれず話題を無理やり変える。
「で?お兄さんとはどうだったんだよ」
「お昼を一緒に食べて色々な話をしてきたわ!」
「それは良かったです。お元気そうでしたか?」
「とてもね!アニマのことはとりあえず何も言ってないけど…どうしようかしらね」
「私は…私に会うことでレイニンさんが救われるのであれば、会っても良いと思っています。それがルカの望みでもありますし」
「ありがとう、アニマ。よし、そうと決まれば夜私の実家に行くわよ!」
「夜実家に?なんで?」
「誰がどこで聞いてるとも分からないし、それに夕飯を一緒にどうかって昨日マ…母に言われたのよ!」
「…普通にママって呼べば良いだろ」
「なんか恥ずかしいじゃない、年甲斐もなく…ってそれは良いのよ!夜は夕飯を食べに実家に行く、でいいわね?」
「私は大丈夫ですよ」
「俺はどうなんだ?俺に関してはがっつり特級犯罪者の手配犯だろ?」
「大丈夫よ!大船に乗った気持ちで任せなさい!」
絶対大丈夫じゃないな、と思ったもののここはマルカートを信じてみる。仮にバレたとしてそうなったらまた逃げるだけだ。それに俺もマルカートの家族に話はある。
「わかった、今夜はそれで明日聖域に向かおう。親方が来るのは明後日だよな?」
「そうね!予定では明後日だし、聖域も朝に街を出れば日帰りで行けるでしょうから問題ないはずよ!」
「ではそうしましょうか。とりあえず今からの時間は何をしますか?」
アニマに不意に振られて何ができるか考えてみる。いや、待て。とても大事な話があることを失念している。
「話をしないか?」
「唐突ね、何かしら」
「ルカに関わることなんだけどさ、カリャカリのことで聞きたいことがある」
「…カリャカリについて、ね。良いわよ」
「右手の甲にカリャカリのマークの入れ墨が入った男を知ってるか?」
それを口にした瞬間、マルカートは怯えた表情を見せ冷や汗を流す。
「…知っているわ。それがどうしたの」
「今日行った盗賊のアジト跡で遭遇して負けた」
「こちらに、あいつが来ているのね…」
「恐ろしいやつだった。手も足も出ず何もできないままに一撃で伸されてしまったんだ」
「エヒトと言えど今のままではあいつには敵わないわ、カリャカリの二番手よ」
「あれで二番手なのか…」
「トップはもっとヤバイわ。…で、面倒くさがりなやつだから見逃してもらった、というところかしら?」
「そうだと思う。いつでも俺を殺せる状態だったのにそのまま立ち去ったから」
「運が良かったと思うべきね…」
「カリャカリはアルマで一番名の知れた盗賊団ですし、拠点をいくつか持っていて騎士団でもうかつに手出しできないと言われています」
「アニマの言う通りね。私は本部拠点に潜入していたからよく知ってるわ。話したことはないけど…それにしてもトッドがここまで来るなんて…」
「トッドって言うのか」
「ええ。必ず覚えておいて。次会うことがあったら逃げに徹しなさい。運が良ければ見逃してもらえるわ」
「…でもルカは見逃してもらえるのか?」
「私は無理よ。見つかった瞬間殺される可能性が高いわね」
「そんな…なんとかすることはできないんでしょうか?」
「…可能性があるとすれば私たちが今以上に強くなることよ。あいつより、もっと強く」
「そうなるしかないな。ルカを見捨てるなんて選択肢は絶対に無い」
「…ありがとう。迷惑をかけてごめんなさい」
「気にするなって。仲間じゃないか」
ここまで聞いてやはりあの男、トッドが異常に強い者であることが分かった。また会う可能性はもちろんある。その時に備えて俺は強くならないといけない。
「ルカはカリャカリのボスも知っているんですよね?どんな人物なんですか?」
「トッドとはまた違う強さね。カリャカリのトップ、フューレンは血も涙もなく目的のために手段を選ばない。残忍で残酷な男よ」
「フューレン…」
「あいつがいるからカリャカリはアルマで最も強く騎士団もうかつに手を出せない、そんな盗賊団に成ったと。そう思えるくらい強いわ」
マルカートの話はそこで終わった。
盗賊団カリャカリと今後も関わることがあるかは分からない。分からないが注意しておく必要はあるだろう。マルカートのことを思えば尚更だ。
更に言えばいずれにしても俺たちは騎士団と戦闘になる可能性が十分ある。そのことからももっと強くならないといけない。盗賊団の二番手に負けていては目的を達成することはできないだろう。緩んでいた意識を占め直し、再度その認識を持つ。
「とにかく俺は今のままじゃ全然だめだな。リゾルートさんの言っていた通り、力を付けて臨まないといけない」
「そうですね。私もこれまでは必要以上に鍛えることはしていなかったので…エヒトさんやルカのためにも強くならなければいけません」
「二人にこれ以上強くなられたら立つ瀬がないわね。私も頑張るわ!」
そのあとは他愛のない話をして時間が過ぎるのを待った。
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「そろそろ行こうかしら?」
マルカートが潜入した他の盗賊団の話に一区切りがついた時、不意に窓の外を見てそう言った。
「もう日が落ち始めてるな」
「こうして宿でゆっくりできたのも久しぶりですね」
「私はずっと一人だったんだから初めてよ!」
「それもそうだな」
マルカートは鞄を取り立ち上がり、俺たちもそれに続き宿を後にする。
「遠いのか?」
「そうね、左方の門から真反対にあるから…といっても同じアモール内だしそんなに時間はかからないわ!」
「こうしてアモールを歩くのも久しぶりです」
フードを深めに被ったアニマは回りをキョロキョロしながら呟く。
「前と変わってる?」
「町並みは変わりませんね。それにタクトゥスの興行で何度か訪れていましたので目新しさは然程ないです」
「その時は散策とかしなかったの?」
「念のため、でしょうか…単純に勇気が出なかったのもありますが、宿に閉じ籠ってこうして外を歩くことはしませんでした」
「そうだよな…」
「あら、でもあなたの姿を知っている人はそんなに多くないわよ?」
「え?そうなのか?」
「容姿は口承されているわ!でも実際の姿を知っているのは孤児院の人だけね」
「…あいつが私を目立たないように閉じ込めていたからです。孤児院から出たことなんてほとんどありませんでした」
「アニマ…」
「あ、もう過去の事ですし別に悲観的には思っていませんよ!」
橋を渡りながらアニマはそう言った。孤児として拾われ救われたとしても、それが悪意を孕んだものであったのなら。それを知った時の心情は。今朝見たアニマの過去の記憶がフラッシュバックする。
"あいつら全員殺してやる"
涙を流す瞳に煌々と燃える火を映し、アニマは呪うかのようにそう言っていた。
「私が拾われたのもこの辺りなんですよ」
橋を渡りきり川沿いを歩いている途中アニマはポツリと呟く。
「生きていて良かったと、今はそう思っています」
今は、ということはそういうことだろう。アモールはアニマにとって辛い場所であるとは聞いていた。聞いていても理解できていなかったのは俺の不徳だ。
「私もそう思っているわ!あなたは決して悪くない。悪いのは悪意を持った人たちだし、そもそもあなたを裁こうとする事もおかしいのよ!」
「そうだな。もう事情は割れているんだし、免罪されていいものを…なかなか難しいみたいだけど」
「父にも言われました。アルマにいる以上、私は贖罪を受けるしかないと、なぜ自分の手を汚してしまったのかと叱責もされました。父も許せないと怒ってはくれていましたが」
そう言ってアニマは空を見上げる。アルマの自治において私的な制裁は認められていない。これはモンテさんに聞いていた。しかし相手は町中に信用されているジューンであり、過去にそう言った記録も見つかっていなかったのだ。一人の少女が訴えたところで取り合ってくれたのだろうか。ジューンは正しく裁かれたのだろうか。
アニマの行いが短絡的だと言うことはできるだろう。しかしそれをもって余りある傷を彼女は受けたのだ。その身にも、心にも。
「暗い雰囲気はここまでね!今は私たちがいるじゃない!」
「そうですね。私の理解者が傍にいてくれる、それだけで私は幸せです」
マルカートはアニマに手を差し出しそれをアニマは握る。
「俺は仲間はずれか?」
「あら!エヒトも私と手を繋ぎたいの?それともアニマがいいのかしら?」
「からかうなよ」
「ふふ、エヒトさんは結構寂しがり屋ですからね」
「そんな話が!?詳しく教えて頂戴!弱みよ!」
「あれはですね…」
「はいはい!もう良いよ!やぶ蛇だったなまったく」
夕焼けの中を三人で談笑しながら進んでいく。理解者が傍にいてくれることが幸せ、それは俺にも当てはまる。右も左も分からない俺を支えてくれた人はたくさんいるからだ。
ザントやミサちゃん、ターブルたちは元気かな、などと感慨に耽る。夕飯の席で話したがザントはたまに長期間家を空けることもあるそうだ。ミサちゃんがしっかりしていたのはそれもあるんだろうな、と納得したのを覚えている。
ローゼンたちもどうしているだろうか。無事にタクトゥスの一団はフローラルを出て次の町へ行っているだろうか。
ボーッとそんなことを考えているとアニマと話していたマルカートが声をかけてきた。
「着いたわよ!」
ドンと立派な家が目の前にはあった。
「で、でかい家だな」
「そうかしら?ま、そんなことは良いのよ!入るわよ!」
ドンドンと乱雑に扉を叩きマルカートは返事を待たず開く。
「ルカちゃん?返事は待って開けるものよ?」
「家族なのだから良いじゃない!こちら、お話ししていたユースとレイヤー夫妻よ!」
「あらあら!よく来てくれたわねえ。大したおもてなしもできないけど、ゆっくりしていって頂戴ね」
マルカートと違っておっとりした様子のマルカート母は俺たちに手招きをする。
「こんばんは。突然押し掛けてしまい申し訳ありません。お誘い頂きありがとうございます」
「いいのよ、ルカちゃんがお世話になってるんだもの。お口に合うかは分からないけど楽しんでいってね」
「父さんと兄さんは?」
「あら!"父さん"なんて気取った言い方して」
「うぐっ…それは良いじゃない!で、二人はどうしたの?」
「パパは急に仕事が入ってねぇ。しばらくしたら帰ってくると思うけど食べて待ってましょ?レイちゃんはもう帰ってくるはずだけど…」
そう言いきる前に扉が叩かれる。返事をしながらマルカートの母は扉を開けた。そこにいたのは騎士の姿をした男性だ。恐らくレイニンさんだろう。
そんなことを考えていると隣のアニマが俺の袖をグッと握り、その手は少し震えている。
「ただいま、母さん」
「おかえりなさい。ちょうどルカちゃんとお友達が来ていたのよ」
「こんばんは、急に押し掛けてすみません。お邪魔してます」
「ああ、これはご丁寧に。ルカとグリレさんから聞いてますよ。ようこそ、アモールへ。もうお酒は楽しまれましたか?」
「はい、昨晩頂きました。とても美味しくついつい飲み過ぎてしまいますね」
それはアニマのことだが。
「はは、お褒めいただけると自分事のように嬉しいものですね。さ、お話は座りながらでも…外套は被ったままですか?」
ついに正体を出す時だ。マルカートを見やるとコクリと頷いている。
「母さん、兄さん、とても大事な話があるのよ」
「か、母さん?なんだその呼び方」
レイニンさんは失笑しカーテンを閉めながらマルカートに茶々を入れる。
「も、もう!分かったわよ!ママと兄さん、ほんとはパパにも聞いていて欲しかったけど…」
「どんな話かしら?」
「まずは嘘をついてごめんなさい。この二人はユースとレイヤーではないの」
「うん?話が読めないけど…別人ってこと?」
「違うの。元からそんな夫婦は存在しないのよ」
「ここにいるじゃないか」
「この二人はユースとレイヤーじゃない。外套、取れるかしら」
一層握る手の力を強めアニマは震えを大きくする。相手は神殿騎士だ。マルカートに"謝りたい"と話していた時から既に7年も経っている。心変わりしている可能性もあるだろう。しかしもうここまで来たのだ。マルカートを信じるしかない。
「ルカを信じよう、怖いだろうけど。俺もついてる」
「…はい…分かりました…」
そういってアニマは手を離し、深く呼吸をしてゆっくりと外套を脱いだ。影により黒く見えていた髪は光を浴びてその紅さを際立たせていく。俺も続くように外套を脱いだ。
「…お久しぶりです」
「…っ!あ、アーちゃんなのか…?」
「ママ、兄さん突然でごめんなさい。彼女はアニマよ」
「ああ、そんな…アニマちゃん…」
マルカートの母は両手で顔を覆い涙を流し始める。目の前のレイニンさんも瞳から涙を落とし膝をついた。
「アーちゃん…アーちゃん…」
レイニンさんは嗚咽を漏らしながら俯く。隣のマルカートも目に涙を浮かべている。
「本当に突然で申し訳ありません…」
「良いの、良いのよ。会いに来てくれて、生きていてくれてありがとう、アニマちゃん…」
「アーちゃん、あの時、あの時のことを俺、ずっと、俺ずっと謝りたくて、でももう会えなくて」
「はい、ルカから少し伺っていました。だからこそ会いに来ました」
「あの時はご、ごめん、本当にごめん、謝っても、どんなに謝っても許されないけど、疑って、傷付けて、そのせいでこんなことになって…」
「私は大丈夫です。レイニンお兄…レイニンさん、もう肩の荷を下ろして、私にいつまでも囚われなくていいんです」
「ありがとう…ごめん、ごめんよ、本当に…それしか言えなくて…でもまさか会えるなんて、思ってなくて…」
そのタイミングでまた扉が叩かれる。だが誰一人開けに行ける人はいない。返事が無いことから来訪者は扉を開ける。
「帰ったぞー!あれ?なんだ、みんないるじゃないか」
「おかえりなさい、パパ」
「お、おう!…なんでみんなして泣いてるんだ?」
状況を飲み込めないマルカートの父はキョロキョロと部屋の中を見回し、そしてアニマをじっと見つめすぐに扉を勢いよく閉めた。
「おいおいおい!ついに、ついに出会えたのかルカ!」
「そ、そうよ」
「おおおおおお!!叫びたい気分だ!」
「叫んでるじゃない!」
「おっと、失礼!なるほど、二人が泣いているのも納得…ルカはなんで泣いてるんだ?」
「もらい泣きよ!」
「はははは!相変わらず泣き虫だな!」
そんな掛け合いをする二人はまさに親子だった。マルカートのハイテンションは父親譲りか…と合点がいく。
「それにしてもよく来てくれた!まさかこんな出会いがあるとは…是非ゆっくりしていってくれ」
「そ、そうね。私も夕飯の用意をしないと…」
涙を拭ったマルカートの母は立ち上がり、作っていた料理をテーブルへ並べていく。
「ほら、レイニンも席に着こう。気持ちは分かるけどな、アニマちゃんにとってもお兄ちゃんなんだろ?しっかりしないとだめだぞ!」
「ありがとう、父さん。そうだね、俺しっかりしないとだめだ」
そう言ってレイニンさんも席へつく。
「さて、この素晴らしい出会いと美味しい夕飯をアクラルネ様に感謝し頂きます」
「頂きます」
そうしてなんとも言えない空気の中、マイペースなマルカートの父に引っ張られ夕飯の席は始まったのだった。




