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第二小節 - 光球

今更ながらるびの振り方が分かりましたので、以降は本作における造語が新出した際にるびを付記させていただきます…

 夜が明け日が出てきた頃、俺たちはテントを後にした。

 まずはヴェーレの森を抜けスプレンドーレを目指す。昨日のような結晶体(けっしょうたい)の魔物がいる可能性も捨てきれないため注意し進んでいく。


「そういえば昨晩思い出したのですが」


 と、急にアニマが話を振ってきた。


「どうした?」

「父がヴェーレの森で大型の魔物の目撃例がある、と言ってましたよね」

「…そういえば分かれる前にリゾルートさんがそんなこと言ってたな」

「リゾルート様!?騎士団大隊長の!?」

「え、ええ、そうですよ」

「かっこいいお方よね、憧れるわ…というか父!?」


 テンションの振り幅がおかしくなったマルカートはアニマを射抜くように凝視してまさに驚愕といった顔だ。


「はい、私の実父です。…父はとても強かったです」

「英雄ですもの、それはそうよ!」

「英雄?」

「大型の魔物の駆除を多くしているのですが、過去に龍種を倒したことがある、と。本当かは知りませんが」

「きっと本当なんだろうな、素直に信じられるくらいリゾルートさんの魔力はこう、重く厚かった」

「お会いになったの?」

「つい二日前にな」

「惜しい!惜しいことをしたわマルカート!あと二日早く出会えていれば…!」

「どっちにしてもリゾルートさんの担当区域はここじゃないから会えないぞ」

「無慈悲な…」


 そう言って大きなリアクションを見せるマルカートに二人でクスクスと笑ってしまう。マルカート1人が増えた、ただそれだけで随分と雰囲気が明るくなる。


「話を戻しますが…恐らく双子星(ふたごぼし)が最も輝く夜にヴェーレの森を通った人だけ遭遇したことがあるんじゃないかと」

「ルカが言ってた説明には双子星も出てきてたな」

「そうね!」

「つまり私たちは偶然出会ったのではないですかね?」

「運が良いのか悪いのか…」

「でも拳大の魔結晶(まけっしょう)よ!高く売ることもできるし強い武具にもなるしで良い素材が手に入ったのだから幸運だわ!」

「それは間違いないですね」

「まあ対策が分かってればなんてことなかったしな。昼間には出ないんだよな?」

「出ないと思うわ!」

「なら私たちは道を正しく進むよう集中しましょうか」

「聴魔力なら使えるから索敵は任せなさい!」

「よし、それでいこう」


 そうしてヴェーレの森を進んでいく。最初に来たときとは違い俺とアニマが道を見ることに集中し、索敵をマルカートが受け持ってくれることで驚くほどスムーズだ。

 そうして半日が経過し、そろそろ一休みでもとガラスの上に腰かける。


「結構進んだんじゃないか?」

「そうですね、予定より随分早いペースなのでもしかしたら日が暮れる前に抜けられるかもしれません」

「こんな薄気味悪いところ、早く抜けてしまいたいわね!」

「…一人でここに入ったのにか?」

「背に腹は代えられない、ってことよ!」

「それ使い方合ってる?」

「知らないわ!で、昼食を食べるのよね?」

「ええ、簡単にではありますがそうしましょうか」


 その言葉を聞いたマルカートはキラキラと目を輝かせ、アニマの一挙手一投足まで見逃すまいとするかのような視線で凝視している。


「そんなに見ても食べ物は変わりませんよ?」


 アニマは鞄からサンドウィッチを3つ取り出し手渡してきた。スピリさん印の激ウマサンドウィッチだ。


「自然と私も頂いてるけど良いのかしら…?」

「良いに決まっていますよ」

「ありがたく頂くわ!」

「はい、では食べましょうか」


 そうして一口サンドウィッチにかぶりつく。やはり旨い。ソースなのか?具材なのか?全てがマッチしたこの味と食感はいくらでも食べられると錯覚するほどの旨さだ。

 不意にマルカートを見るとその手には何もなかった。


「ん?マルカートは食べないのか?」

「もう無くなってしまったわ!」

「はや!」

「旨い!本当に過去一番美味しいサンドウィッチだったわ!これを作ったシェフを呼びなさい!」

「作ったのはタクトゥスの調理師なので呼ぶのは無理ですね」

「惜しい!惜しいことをしたわマルカート!」

「二日前でもタクトゥスの面々とは会えてないぞ」

「先を見越して遮るとはやるわね」

「さっきと同じ流れを感じた」

「もっと大切に食べれば良かったわ」


 そんなことを口にして足をプラプラするマルカートにアニマがサンドウィッチを手渡す。


「私の食べかけですが、口を付けていないところを千切りましたのでどうぞ」

「アニマ、あなたきっと神の遣いなのね?そうに違いないわ!ああ、アニマ様と呼ぶしか無くなってしまう!」

「目の前に本物の神がいますよ?」

「神かっこ仮のことは今は良いわ!ありがとうアニマ、今度こそ美味しく大事に頂くわ!」

「失礼だな!」


 マルカートは受け取ったサンドウィッチを楽しむように、今度はちみちみと食べ始めた。横ではその様子を微笑ましくアニマが見ている。


「アニマ、俺の分いるか?」

「いえ、大丈夫ですよ。私はそこまでお腹が空いているわけではないので」

「そっか、なんかあったらすぐ言ってくれよ」

「勿論です」


 そんなやり取りを挟みながら楽しいランチの時間はすぐに終わり、またヴェーレの森を抜けるために進み始める。


---


 日が傾き始め橙色に染まり始めた頃。


「つ、ついに抜けたわー!ヴェーレの森、攻略ね!」

「約1日しかいなかったとは思えないしんどさだったな」

「変わり映えない景色もそうですが途中の迷路のような所は特に大変でしたね…しばらく眼魔力は控えたいです…」

 

 とても分かる。水面のようにうっすら反射して更に魔力を帯びたガラスで周りを囲まれているのだ。眼魔力は便利だがあの光景には酔いそうになった。


「とりあえず抜けることは出来たし今日はこの辺りで休むか?」

「そうですね、出て少し先に休めるポイントがあるはずです。そちらで今夜は休みましょうか」

「了解」


 ヴェーレの森を無事に抜け、少し歩いたところに夜営地はあった。といっても丸太と焚き火の後があるだけだが。


「今日は何を食べるのかしら!」

「そんなグルメキャラだったか?」

「あら、言ってなかったかしら?私は食べることが何よりも大好きなのよ!」

「初耳ですね。なにかリクエストはありますか?」

「そうね…魚も長いこと食べてないし魚が良いわね!」

「肉も魚もまともに食べてないって、どんな生活してたんだよ」

「調理してきますね」


 そう言ってアニマは少し離れた場所で夕飯の用意を始めた。


「ありがとうアニマ!…で、どんな生活をしてたかね。涙なしには語れないわよ!」

「そんなに辛い日々を送ってたのか」

「ええ…私は自分で料理したことがほとんどないのよ!だから仮に食材を手に入れてもそれを食べようとはならなかったわ!」

「…料理できないにしても食事処とかあるだろ、あと誇る所じゃないぞ」

「甘いわね!エヒトは盗賊狩りで得た報酬をどうしてたか知らないからそう言えるのよ!」

「そりゃ知らないからな」

「教えてないもの」

「…それで?どうしてたんだよ」

「盗賊狩りで得たお金はほぼ全てアモールの孤児院に寄付しているわ!やつらが溜め込んだ汚いお金は騎士団に、私が正規で稼いだお金は孤児院にいくようにしているわね!」

「随分殊勝だな。というか孤児院はまだあるのか?」

「あの事件以降は私のマ…母が孤児院を切り盛りしているわね!」

「だから内情にそんなに詳しかったんだな」

「そうよ、アニマの汚名を晴らせないか母と兄と話し合った日々が懐かしいものだわ」

「親父さんは加わらないのか?」

「パ…父は漁師をしてるのよ!毎日朝早くから遅くまで働いている分話し合いにはなかなか、ね」

「そういうことか。だから店で食べることもあまりできず…じゃあ何食べてたんだよ」

「…基本野草よ」

「はい?」

「その辺の草花やマッシュを炙って塩をかけて食べていたわ!魔物の肉も焼いたことはあるけど臭いし、釣りもしたことないから魚を食べる機会も無かったわね!」

「いつか死ぬぞ」

「私のお腹は鋼鉄製なのかしら?腹を下したことは一度もないわ!」

「…そうかい」


 意外、でもないか。マルカートほど真っ直ぐに自分を偽らない人を俺は知らない。覚えていないだけかもしれないが。そんな彼女がアニマの境遇に同情し、その後孤児院のサポートをしていたとしても不思議ではない。

 汚い金で子ども達に糧を与えるのは愚行だし愚弄しているわ、とマルカートは話を結んだ。腹を鳴らしながら。


「マルカートはそんなことをしていたんですね」


 食事の用意を終えたらしいアニマが皿に料理をのせて戻ってきた。話しながらずっと香っていたその料理は、野菜も含まれ色とりどりで美味しそうな魚の餡掛けだった。


「まー!ものの数分でこんな料理が出来るのね!?」

「今度一緒に料理をしてみますか?」

「私でも作れるかしら?」

「やってみないとわかりませんが私がちゃんと教えますよ」

「楽しみにしとくよ。じゃあ冷める前に食べよう」

「そうしましょうか、頂きます」


 アニマの作った魚料理は優しく味わい深くとても美味しかった。前からそうだが不思議と力が漲るような、そんな感じがするのだ。


「今日も美味しかった、ありがとう」

「それなら良かったです」

「とても活力が湧いてくるわ!あなたはやっぱり神の遣いね!そうに違いないわ!」

「大袈裟ですよ」

「でも本当に不思議だな。前から思ってたけどご飯を食べたあとは力が湧いてくるんだよ」

「…当然では?」

「当たり前よね?」


 何を当然のことを、と言った顔で2人は俺を見てきた。どういうことかが分からず尋ねてみると。


「アルマの生命はそのほとんどが魔力を内包していますので、それを食すと言うことは魔力を頂くと同義です。なので力が湧いてくるその感覚は間違いないですよ」

「そうね!…というか、エヒトは余りにもモノを知らなすぎじゃないかしら?一般常識が無いわね!」

「返す言葉もないな」

「そういえばマルカートにはエヒトさんのことを詳しく伝えていなかったですね」

「アニマもそろそろ私をルカと呼んでくれても良いのよ?」

「ん…善処します…」

「よし!で?エヒトの事情って何よ」


 アニマの返事に満面の笑みで答えるマルカートと反面、少し焦ったアニマの対比は面白かった。


「記憶喪失なんだよ。昔の事とか、ほとんど覚えてないんだ」

「あら!それは羨ましいわ!」

「羨ましい?なんで?」

「美味しいご飯も美しい景色も楽しい体験も、勿論悲しいこともあるでしょうけど、そういった経験を今からまたたくさん積めるのよ?羨ましいというのは変かしら?」

「とことん前向きだな」

「ですね」

「それこそ私の"らしさ"ってもんじゃない!」

「そうだな、あとは…アニマ、あの事も教えておいた方がいいよな?」

「えーと…ああ、パカタメンテでのことですね。はい、伝えておくべきかと思います」

「まだ何か秘密があったのね!謎に包まれた人は愉快で楽しいわ!」

「謎って訳じゃないんだけどな…俺も特級犯罪者なんだよ」


 さっきまでの空気と一変しその言葉を聞いたマルカートにドンと魔力が集まる、プレッシャーを強く感じるほどに。


「それはどういうことかしら?貴方大罪人なの?」

「待て待て!別に人に害を成したとかそんなんじゃない!」

「特級なんてそうそう付かないわ。余程の事をしたか、繰り返したか。返答次第では貴方を神殿騎士に引き渡すことも考えないといけないわね」

「俺は大陸民なんだよ!それで一度捕まって逃げ出したから、だから特級になっているんだ!」

「大陸民ですって!?アルマの海洋民である私に向かってよくそんな大見得を切れたものだわ!!」


 今にも魔力を放ってきそうな勢いでぶちギレるマルカートとは反面、アニマは涼しい顔をして水を飲んでいる。


「水飲んでないでアニマもなんか言ってくれ」

「まずマルカートは落ち着いてください。私の話を聞いたあとでも同じならそれは仕方ありません」

「…分かったわ」


 そう言ってマルカートは溜め始めていた魔力を霧散させる。


「まずエヒトさん、あなたの言葉が足りませんね。それだと海洋民を刺激して当然ですよ」

「う、すまない…」

「次にマルカート。すぐに手を出そうとするのは感心しません。実直なところがあなたの取り柄ですが仲間への暴力はだめですよ」

「…ごめんなさい」

「はい、では落ち着いたと思うのでちゃんと話しましょう」


 そうしてアニマは説明を始めた。

 ネルとは別々でパカタメンテ海岸に流れ着いたことやそのネルと正真正銘血縁であり、アクラルネとしての覚醒を終えていること。また先日リゾルートさんに会った際にもそれは認められ、だからこそ捕まらずにここにいることなどだ。


「つまり外海に連れ去られたアクラルネ様の子孫がエヒトと言いたいわけね?」

「そうです」

「…まず話におかしな点は無いし、嘘もない」


 またしれっと取り出していた天秤を眺めながらマルカートはそう呟く。


「リゾルート様が見逃した、ということからも信憑性は高いのよ。…じゃあ本当にエヒトがアクラルネ様ってことなの?こんなに普通なのに?」

「まだエヒトさんは覚醒して日が浅いですし、私たちは実際にアクラルネ様を拝謁したことはないので案外普通なのかもしれませんよ」

「勝手なイメージで後光の指すキラキラした人を思い浮かべていたわ!」

「なんでだよ、アクラルネ…というかエーデル家も元を辿ればただの海洋民なんだろ?」

「でも絵本や壁画なんかで見たアクラルネ様は後光が後ろから出て輝く光を纏っていた、まさに神と呼べる美しさだったのよ!」

「聖域で発現したあの光のことでしょうか?」

「それかもしれないな、というかそれしかないな」

「見たことがあるの?」

「ええ、エヒトさんの持つ水神の鏡心から発せられた光がまさに仰る通りのモノでしたよ」

「…それを見たら信じるわ!今は断崖の喉笛(だんがいののどぶえ)に向かっているのでしょう?」

「そうですね」

「あれ?でも今は巡礼期間外だから私は入れないじゃない!」

「あ、確かに」

「きー!私だけ除け者にして確認させないつもりね!」

「そもそも聖域へ巡礼期間外に入れる時点で信じてほしいものですが…」

「それはそれ、これはこれよ!」

「見たいだけだろ?」

「それは勿論そうね!」


 隠すことなくマルカートは本音を言う。しかしこうなると信じてもらうのは難しいだろう。どうしたものかと唸っているとマルカートは何かを思い出したように手をポンと叩く。


「兄なら分かるかもしれないわ!」

「…レイニンさんのことですか?」

「そうよ!兄も騎士団の所属だし、巡礼期間外に聖域へ行ったことを話していたわ!それに新婚の聖域巡礼も期間外に特例で行われるし、何かしらの方法があるのよ!」

「となるとアモールへ向かってから戻ってくる形になるか」

「それは時間が惜しいですね…」

「断崖の喉笛は良いわ!貴方達だけで行きなさい!」

「良いのか?」

「ひとまずはさっきの話を飲み込んであげる、でもアモールの近くにある聖域へは何としてでも同行したいわね!」


 そう言ってマルカートは大きく伸びをした。そして手をパンと叩き。


「さっきは威圧するようなことをしてごめんなさいね」

「いや、俺も伝え方が悪かったよ、ごめん」

「また保留とはなりましたがこの場はここまでにしましょう。夜も更けてきましたしそろそろ寝ましょうか」

「そうね!そうしましょう!」


 話も一段落したがふと気になったことを聞いてみる。


「昨日はルカだけ離れて寝てたけど、アニマと寝ないのか?」

「気を遣うじゃない!」

「私は構いませんが」

「あら、それは意外ね。アニマは嫌がるかと思っていたわ!」

「タクトゥスにいた時も他の団員と寝所を共にすることは珍しくなかったので…特に抵抗はないですね」

「一人離れてたら何かあったとき危ないだろ?今日は俺が夜番をしとくから二人はもう休んでいいよ」

「ありがとうございます、ではおやすみなさい」


 アニマはあくびをしながらそう言ってテントへと入っていった。頼むわね、おやすみなさいとマルカートもそれに続く。


---

 

 しばらくして焚き火と双子星の明かりとその音だけになり少し先は暗闇だ。昨日、今日とまた濃い日が続いた。マルカートとの出会いは特に。

 思わず笑みが溢れるくらいにはバタバタとしたこの日常を楽しんでいる自分がいる。しかしネルの事を思うとそれも直ぐに消えてしまう。今ネルはどうしているのか、神殿で何をし何をされているのか、たった一人の肉親が非業の運命に囚われていると思うと心に穴が空くようだ。

 俺はアニマのように謙虚で賢いこともなく、マルカートのように真っ直ぐ思いや考えを伝えることもできない。

 本当は今すぐにでも助けに行ければ…そう思ってしまうのも仕方ないだろう。焚き火を眺めながらついつい考えてしまう。


 突然だった。そんな感傷に浸っているとヴェーレの森の方向から巨大な魔力を感じとる。ぼーっとしていた頭と体がスイッチを入れたように瞬時に目覚め、一気に緊張が体を襲う。

 眼魔力で見ようとしても森の先は木々に覆われ見えない。まずは様子を見ようと足に魔力を纏い俺は一気にヴェーレの森へ駆けた。


 俺たちが休んで居た場所は出口から500メートルほどの位置。辿り着くのは容易だ。

 着いて視界に入ったのは宙に浮いた煌々と輝く光の玉。


「なん、だ…あれは」


 神々しいとも違う。だがどこかで見たことのあるような、そんな魔力を感じるその玉は徐々に高度を下げていき、そして目映い光がヴェーレの森全体を照らすかのように弾けた。

 沢山のガラスに反射し輝いたその眩しさに耐えきれず目を閉じる。瞼の向こう側が暗んでゆくのに合わせて目を少しずつ開いた。


 視界を完全に取り戻した時、目の前にソレはいた。

 ソレは、その光の塊は、先ほどとは違い眩しさは感じないが、しかし包み込まれるような温かさを感じる。


 思わずその光に向かって手を伸ばし、触れようとした瞬間。触れた先から崩れるように光は消えていった。

 完全に光が粒子となり消えた後、今度は夜営地の方向から絶叫が森の中にこだまする。

 俺は慌てて魔力を再度足に纏いアニマ達のいる場所へと駆け抜けた。何も声をかけず単独で行動してしまったことを怨み、思考はその一点に埋め尽くされていく。


 夜営地に戻るとテントから体を投げ出し呻き声を上げるアニマと、その隣には心配そうにアニマに声をかけ続けるマルカートがいた。


「エヒト!貴方どこに行ってたのよ!」

「ヴェーレの森に異変を感じて見に行ってきたんだ、アニマはどうした!?」

「私が知りたいわよ!いきなりアニマが大きな声を出して叫んで!しかも光り輝いていたのよ!?」

「光り輝いていた…?」

「嘘じゃないわ!というか今はそんなことどうでもいいのよ!どうしたらいいの、どうしたら…」


 慌てふためきながらマルカートはアニマの背中をさすり続けている。俺もそれに続きアニマの様子を確認する。

 アニマは荒く激しい息遣いから徐々に呼吸も落ち着いていき、そして眠った。


「な、なんだったのかしら…」

「分からない…本人が起きたら確認してみよう。何か知っているかもしれない」

「病気、とは違うわよね?」

「どうだろう、そういうことには詳しくないしな…」

「分かったわ、とりあえず明日確認ね!エヒトはちゃんと夜番をするのよ?」


 ギロリとこちらを見た後、マルカートは改めてテントの中へ戻っていった。

 謎の光、アニマの異変…頭を悩ませる事が山のように押し寄せ、しかしアニマが無事そうで良かったという安心もあり溜め息が出てしまう。

 アニマ本人も分からないかもしれないが一度確認してみよう。そう決めて俺は丸太に座り空を眺めながら夜を明かすのだった。

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