第二小節 - 結晶
「…私は、」
アニマが言葉を口にしようとしたその時、少し離れた場所でガラスが砕ける音が鳴り響く。
「なんだ!?」
「この気配!魔物です!」
「はっ!誤魔化したってだめよ!質問に答えなさい!」
「言ってる場合じゃないだろ!」
ガラスの砕ける音は徐々に距離を縮めこちらへ突き進んでいるように感じる。
「おいおい、来るぞこれ!!」
そんなことを口にした直後、先ほどまでマルカートがいた木が音を立て倒れてゆく。その後ろから現れたのは全身がガラスで出来たような、双子星からの光を煌々と反射し透けた蟹のような生物だった。
「魔物は出ないんじゃなかったのか!?」
「以前通ったときも過去の記録でもこんな魔物の発見報告はありません!」
「私も、聞いたことがない…!」
巨大な蟹のような生物はそのハサミをガチガチと鳴らしこちらを威嚇している。まるでナイフとフォークをぶつけるかのように、ガチガチと。
「逃げられるか、これ」
「ガラスを突き破って突撃してきた以上、私たちが正規のルートを通ってはまず撒けません。それに双子星の光があっても眼魔力のみで道を正しく抜けるのは難しいです」
「…私、眼魔力は使えないのよね…」
「ルカを見捨てるわけにもいかない、やるしかないぞ」
「しかし全く情報にない魔物をどうやって…」
するとその言葉を聞いたマルカートはハルバードを前方に向け詠唱を始める。
「億年重ねし時の魔力よ、汝が持ちし文献の錠を開き示せ!ディスクロージャー!」
ハルバードの先から淡い光が漏れ前方の蟹型魔物に直撃する。
「今のは?」
「相手の情報を引き出す魔法よ!…ネーム、ヴェーレキカダ。夜に双子星の光を受けアクラルネ様の魔力を求め活動する、魔結晶体で出来た巨大な魔物。動きは鈍重だが…」
言い終わる前にヴェーレキカダというらしい魔物がハサミを開き突撃してきた。
「一旦回避に専念しろ!とにかく試せることをやるしかない!」
「了解です」
「分かったわ!」
魔物は一直線に俺に向かってくる。胴を二つにする気だったのか、先ほど立っていた場所で重厚なガラスのハサミが勢い良く閉じられる。
もしあそこにいたらと思うとゾッとする。
しかし行動直後、重いハサミを振り回すことまでは出来ないのか、隙だらけのハサミへ魔力を纒い攻撃を繰り出す。
「堕脚!!」
勢い良く振り下ろした右足は確実にガラスの体へ直撃する。しかし全く効いていないようでびくともしない。
「硬すぎるだろ…!」
思わずそんな声が漏れる。
ヴェーレキカダは依然として俺に狙いを定めているようだ。二人を見ると少し離れた場所で詠唱している。
相手の攻撃を躱し、無駄と分かっている反撃を繰り返すこと数回、詠唱を終えたアニマが炎の剣を携えて隣へ駆けてきた。
「どうですか」
「無理だ、全く打撃が通らない」
「熱と剣で多少でも入ればいいですがっ!」
言いきると同時、姿を一瞬で消したアニマは同じく巨大なハサミへ向かって剣を振り下ろし、そして弾かれる。
数度剣撃を放つもやはりダメージがあるようには見えない。
「どうすればいいんだ、打つ手がないぞ」
「ウルフリーダーとの戦闘で使用した魔力の塊をぶつけるあれなら効くかもしれませんが」
「効かなかったらおしまいだな」
「ですね…」
と、その時突然ヴェーレキカダの体が鈍い光に包まれる。同時にマルカートは脇を通りこちらへ向かってきた。
「魔結晶体で出来ている、ってことは魔力の通りが良いってことよ。炎に耐性があるみたいだけど、魔法で敵の固さを低減した今なら通るかもしれないわ」
その言葉を聞き即座にヴェーレキカダに肉薄する。
「こんなのどうよ、魔拳剛打!!」
右手に、あの時とは似て否なるコントロール出来ている量の魔力を纏い全力でぶつける。拳はハサミには当たらなかったものの片側の足を粉々に砕いた。
「効いてるぞ!!」
「良い感じね!その調子で頼むわ!」
「私も行きます」
アニマは剣に纏っていた炎をいつの間にか静め、今度は単純に魔力を纏っただけの剣となっている。
そのままの勢いでヴェーレキカダに向かって袈裟斬り、その一閃を嫌がってかハサミを高く振り上げ寸でのところで躱されてしまう。しかし勢いは殺さずそのまま足へ向かって斬撃を当て破壊する。
「効きますね、これならいけます」
「もっといくわよ、シェインズグラビティ!」
いつの間にか詠唱を終えていたマルカートが新たに魔法を発動すると、大きく振り上げていたハサミが一気に落ちてくる。
「ハサミを更に重くしたわ!」
「いくぞレイヤー!」
アニマと目配せし一気に魔力を拳へ纏う。
「おおおおおお!魔拳剛打!!」
先ほど手応えを感じた技をもう一度放ち、アニマは高く飛び上がった。上空から全身を使って剣をハサミの付け根辺りへ向かって振り下ろす。
ガラスの粉々に砕ける音を響かせながら巨大なハサミは地に落ちた。
細かいガラス片が飛び散り皮膚を軽く切る。しかしそんなかすり傷を気にしていられる相手ではない、
「よし!これであとは処理するだけ…」
そう思っていたのも束の間、ヴェーレキカダの体が星の光を吸収するように輝き、そしてそれと呼応するように体が再生していく。
「嘘だろ…」
「あら?再生するわよ」
「知ってたのかよ!」
「さっき説明の途中だったからね!でもひとまず時間を稼ぐ必要があったわ!」
「どうしたら倒せるんですか?」
「核があるみたいね!怪しいのはどう見ても背中の甲羅の中かしら?」
「あそこか、一際分厚いところだな」
「…そうですね、真ん中付近に魔力の集合体が見えます」
「ああ、あれだな」
「さ、第2ラウンドいくわよ!」
言い終わると同時、ヴェーレキカダを包んでいた光は収縮し完全に元に戻った姿が現れる。
変わったのはターゲット、初手でマルカートを狙ってきた。
「馬鹿じゃないってことね!でも舐めすぎよ!」
大きなハサミを向け突進してきたヴェーレキカダに対し、マルカートは背丈以上のハルバードを地面に突き刺し宙へと舞うことで回避する。そのまま再生したばかりのハサミへハルバードを振り下ろし、やはり弾かれてしまう。
「くぅ…!痺れるわね!あんたたちこんなのに攻撃してたわけ!?」
「そうだよ!無理するなよ!」
「無理する時でしょうに!また魔法で攻撃を通るようにしたいわ、時間を稼いで!」
「「了解!」」
マルカートが魔法の詠唱を終えるまで時間を稼ぐ、とにかくこの硬さは厄介だ。
意識をこちらに向けさせるようとにかく攻撃を繰り返す。アニマも同様、注意を引きつつマルカートと射線が被らないように立ち回っている。
そうしてしばらく耐えたところでマルカートから声が掛かる。
「待たせたわね!ディベンターレ・モルビド!!」
詠唱を終え発動した魔法は先ほどのようにヴェーレキカダの体を包み込む。
「柔くしたわ!任せたわよ!」
「ああ!いくぞ、レイヤー!」
言葉と同時、アニマは目にも止まらぬ早さで足を砕き落とす。重心が傾いた状態になり背中ががら空きとなっている。
「堕脚!!」
その背中へ魔力を纏った足を振り下ろし、轟音を立て背中のガラスが砕け散る。
「あった、これだ!」
「そのまま決めてください!」
「ああああああ!魂砕撃!!」
右手へ魔力を集約し核へと叩きつける。
パリン、と優しいガラスの割れる音が響き、ヴェーレキカダの体のヒビが広がって徐々に崩れていく。
「勝った、のか」
「そのようですね…」
「あんたたち、やるわね!」
戦いを無事に終え反動で動けないところに、離れてサポートをしてくれていたマルカートが近付いてくる。
「ルカのおかげだ、助かった」
「ふん!私の方がお姉さんなんだからこのくらい当たり前よ!」
「私たちの年を知らないはずでは?」
「17,8くらいのお子様でしょ?顔を見れば分かるわよ!」
「ま、合ってるな」
「人生経験の差ね!」
そう言いながらマルカートは崩れたガラス片を慎重に漁っている。
「何してるんだ?」
「決まってるじゃない、これは戦利品よ?あそこまでの魔物なら…あった!これ!」
得意気な顔をしてそう言ったマルカートの右手には、先ほど砕いた核に当たると思われるガラスが握られていた。
「それ、ヴェーレキカダのガラスか?」
「いいえ、これは魔結晶よ!」
「魔結晶、先ほども言っていましたがそれはなんですか?」
「あんたたち魔結晶を知らないの?教えてあげるわ!」
そう言ってマルカートは説明してくれた。
魔結晶とは、アルマの魔力が流動できず滞留し、時間をかけて固まった塊のことらしい。そしてこのヴェーレの森を構築するガラスこそ未熟ながらも魔結晶の元であり、更に年月を重ねることで凝縮され魔結晶となるそうだ。
「てことは?」
「そう!これこそ魔結晶。高値で売れるし魔士の武具にも使われる大事な素材よ!」
「魔士?」
「あんたほんとに何も知らないのね」
「魔士と言うのは私や彼女のように触媒を介して魔法を使用する者たちの呼称です。魔法を単純に発動するよりも触媒が持つ特性で威力や効果が高まるため、戦闘となると持っている人は多いですよ」
「レイヤーも持ってるのか?」
「私のこの剣が触媒ですね。といってもどんな原理か知ったのは初めてです」
「自分の使う道具ぐらい知っておきなさいよ…まぁいいわ!思いがけず良いものを手に入れたわね」
そう言ってマルカートは手に持っている魔結晶を俺に渡してきた。
「ん?」
「ん?じゃないわよ、これはあんたのものよ」
「俺の?」
「当たり前じゃない!私一人じゃ倒せなかったんだしとどめを刺したあんたのもの、何か変?」
「受け取っておきましょう、それを武具にすればよりこの先の旅で力になってくれるはずです」
「わかった、ありがたく貰っておくよ」
その後は夜営地を簡単に片付け、ひとまず寝られるよう準備を整える。そうこうしているとマルカートが声をかけてきた。
「あんたたち旅をしてるのよね?」
「ああ、今は聖域を巡る旅をしてる」
「新婚旅行なの?」
「違う!って、そんな慣例でもあるのか?」
「結婚した夫婦は聖域の巡礼を行うのが普通よ?」
「確かにそうですね。ただ私たちは旅の仲間であって夫婦でもましてや恋仲でもありませんので」
「そう!なら丁度良いわ、私も連れていきなさい!」
「は!?」
「……それはなぜですか?」
「あんたたちのこと気に入ったわ!バカ正直のレイヤーにちょっと抜けてるユース、そしてしっかり者のマルカートで丁度良いじゃない!」
「丁度良いも分からないし、バカ正直でちょっと抜けてるのもルカのことだろ?」
「きー!失礼ね!でも否定はしないわ!」
「しないのか…」
「少し考えても良いですか?」
「勿論良いわよ!」
そうしてマルカートから少し離れアニマと相談することとなった。
「どう思う?」
「私としては無しではないです。あの腕前は大変心強いです、ですが…」
「ああ、過去のことだよな」
「はい。あまりにも突然のことで動揺を隠せていなかったかもしれません」
「俺には分からなかったけどな…」
「もし仲間になるというならこのまま偽名でいくのも難しいでしょう。全てを明かした上で同行して貰うしかありません」
「アニマのことと、俺のこともか?」
「その方がスムーズだとは思いますよ。アクラルネ様を信奉しているようですし」
「それはそうだけど…」
「気が乗りませんか?マルカートは信用できないですか?」
「いや、そんなことはないな。恐らく彼女が言っていることに嘘は一切ない。ただ着いてきたいっていう理由が汲めないんだよな」
「それは本人に確認しますか。邪な考えでなければ私は彼女を引き込むのはありだと考えています」
「俺もルカは信用に値するし良いやつだと思うよ。とりあえず本人に話を聞いてみるか」
話が一段落しマルカートの元へ戻る。マルカートは焚き火の横でハルバードを磨いていた。
「あら、早かったわね」
「あなたに確認したいことがあります」
「何でも聞きなさい!」
「なんで俺たちに着いてきたいんだ?」
「そうね………正直に言えばとても寂しいのよ」
少しの間を持ちそう言ってマルカートは顔を伏せた。
「さっきも言ったように7年。詳細に言えば特訓を始めて7年、盗賊狩りをして5年になるけど、その間仲間と呼べる人に出会うことはなく一人でここまでやってきたわ」
5年もの間一人で敵地に潜入し盗賊狩りをする、これがどれだけ異常で凄まじいことか。分からないわけがない。諦めずに続けてきたことがその執念を物語っている。
「私は見た目で子ども扱いされていた。だから盗賊に暴力を振るわれることは無かった。でも潜入していることがバレたのは今回が始めてではないのよ。過去にもこうして逃げ出したことはある。その時ももう死ぬかもしれない、だめかもしれない、そう思ったわ」
「でも辞められなかったんだな」
「そうよ!私にとっては血の繋がりなんて関係ない。優しくて大事な兄のためにアニマを探すまでこれは辞められないのよ」
「……」
「そうこうしているうちに一人にも慣れる、そう思っていたのに。あんたたちと話すのも戦闘も、何もかもが新鮮で楽しくて仕様がないわ。私でももしあんたたちの力になれるのなら一緒に旅をしたいと心から思ってしまったのよ」
「寂しいから、ってことか」
「二番はそれね。一番は単純にあんたたちを気に入ったことだわ!」
「そうか…」
アニマの顔を見ると決意を固めたような顔をしていた。マルカートに全てを打ち明けるのだろう。まっすぐにマルカートを見てアニマは言葉を紡ぎ始めた。
「まずあなたの話はよく分かりましたし本音を打ち明けてくれているのでしょう。バカ正直なあなたですから嘘をついているとは思いません」
「また失礼ね」
「仲間になるのなら私たちもあなたと本音で話さなければいけません。これからする話は旅を共にしようとしなかろうと、口外することを禁じます。アクラルネ様に誓えますか?」
「良いわよ、アクラルネ様に誓って約束するわ!」
「…まず、私の本当の名前はアニマ、彼はエヒト、エヒト・エーデルです」
「ん?」
「私たちは今代のアクラルネ様として現在中央神殿に囚われているエヒトさんの妹、ネル様を連れ戻すために聖域を巡っています」
「ちょ、ちょっとまって」
「いえ、最後までまずは聞いてください。言いたいことはたくさんあるでしょうが」
「…わ、分かったわ」
「私は技団タクトゥスに長らくお世話になり、色々あってタクトゥスを抜け今はエヒトさんの目的のため旅を共にしています。エーデル聖家の正式な血統者でありアクラルネ様として覚醒したエヒトさんの力を高め、そして教団に対抗するために聖域を巡っているんです」
「筋は通っているわね」
「私たちは今後教団と大きな戦いになる可能性も勿論ありますし、各聖域を巡る道中たくさんのトラブルが起こる可能性や先程のように大型の魔物との戦闘も避けられないかもしれません。それでも私たちに力を貸してくれますか?」
「そう、ね…思ったより話がぶっ飛んでてまだ整理できていないわ!でもこれだけ聞いて怖じ気付いたんじゃ女が廃るわね!」
「一緒に来てくれるか?」
「私の気持ちは変わらない、でも1つ1つ確認させてほしいわ」
「構いませんよ」
「まず貴女、アニマ本人なの?」
しれっと鞄から虚絶の天秤を取り出しマルカートは尋ねる。
「はい、そうです。あなたが探しているアニマは私のことです」
「殺したファザーの名前は?」
「思い出したくもないですが…ジューンです」
「その名前を知っているのは町の人間か孤児院にいた子どもと事件の関係者だけよ。つまりあなたがアニマ本人で間違いないのね?」
アニマは真っ直ぐにマルカートを見てはい、と呟き頷いた。その姿を見て息をふーっと吐き、天秤に目をやり一層深く呼吸をしたマルカートは。
「ようやく、見付かったわ。なら私の盗賊狩りの目的ももう終わりね!大声で叫びたいくらい嬉しいわ!」
そう言ってアニマに抱き付いた。
「な、なにを」
「アニマ、あなた本当に大変だったわね!…あの事件のこと、町の人はみんな理解している。なぜああなったのか、ジューンが裏で何をしていたのか、全てが既に明かされているのよ」
「…はい、何度かタクトゥスで伺っていますので耳に挟んでいます…」
「特級犯罪者となってしまった以上、簡単に表へ出てくることはできない。それもとても分かるわ。長いこと愛する家族にも会うことができず、辛くて苦しかったわね」
「……はい」
「"あなたは悪くない"。これからは私も一緒にそれを抱えるわ。仲間として」
その言葉を聞いたアニマは出し渋っていた手をマルカートの背中に回し、優しく抱き締め返した。長いことアニマという存在はタクトゥスの中にしか存在せず、世間からは稀代の犯罪者として認識されている。まだ17の少女がその罪と重荷を一身に背負って生きてきたことに、一体どれだけの苦悩と苦痛があっただろうか。
そうしてマルカートとの抱擁を交わししばらくして、どちらからともなく離れる。少し気恥ずかし気にしながらアニマはマルカートにお礼の言葉を伝えた。
次に向き直ったのは俺の方だ。
「エヒト様、ここまでの無礼な立ち居振舞い大変失礼致しました。平にご容赦を…」
「やっぱそういう感じなのか」
「当然です。ご自身の立場をよく理解されていないかもしれませんが、アクラルネ様であられる以上私たちアルマの民は貴方様に全霊の礼節を持ち接するのが当然です」
「そんなの良いって!普通に話せないのか?」
「ご命令とあれば」
「じゃあそれで」
「分かったわ!貴方威厳が足りないわね!」
「切り替え早くない?」
「見習うべきところですね」
「というかちょっと乗ってみたけどこんなポカーンとした男が本当にアクラルネ様なのかしら?威厳も覇気も感じないわ!」
「失礼な!」
「イヤリングを出してみては?」
「あ、それがあるか」
「何のこと?」
「水神の鏡心を持っていますので」
「あ!それを出すのは辞めた方がいいわね」
「なんで?」
「さっきヴェーレキカダと戦ってる時の説明はもう忘れたの?」
「あー、アクラルネの魔力がどうたらって」
「それよ!アクラルネ様のもつ清純な魔力に魔結晶が呼応してあんな化け物を生んだと思うのよ」
「なるほど、確かにその可能性もありますね」
「だからここで神力を出すのは辞めておきなさい!」
「わ、分かった。となるとどう信じて貰えば良いんだ?」
「ひとまず私の中では保留にさせてもらうわ!エヒトがエーデル聖家の血縁者であろうとなかろうと、アクラルネ様であろうとなかろうと旅に同行する気持ちは変わらないもの!」
「じゃあ一緒に来てくれるのか?」
「頼んでいるのは私よ?とても楽しい旅になりそうね!」
そう言って無邪気に笑うマルカートに毒気を抜かれ、さっきまでの緊張もほぐれていく。
魔士として高い実力を持ち、真っ直ぐでバカ正直なこの人が同行してくれることで事態は好転していくと、そう前向きにさせてくれるような雰囲気がとても居心地よかった。
「ああ、これからよろしく頼む」
「こちらこそ!エヒト、アニマ。二人にここで出会えたのは運命よ。あんな雑魚蟹の結晶より硬い絆で結ばれるわね!」
「それは何とも言えません」
「きー!」
既に少し慣れ始めた2人の掛け合いをみて、この3人なら困難を乗り越えていけると、そう思うのだった。




