第12話 冒険者街道の浄化依頼がきた。
先日、メルクーア大迷宮都市のノースサーティーダンジョンの浄化を終えて、この日は庭の雑草を刈りこんでたのよ。夏場は雑草が元気すぎる。
そしたらイリーナさんが家まできてくれた。
イリーナさんは、受付嬢からなんかステップアップして、カウンター勤務じゃなくなったみたいなんだよね。
だからこうやって、うちまできてくれる時間が取れるようになったとか。
イリーナさんがきたから、わたしも雑草刈りを切り上げて、お茶にしようかなって感じで、中古で買った芝刈り機をしまって、イリーナさんも店舗スペースのカウンターで待ってもらった。
作業服からいつものワンピースとお料理エプロンを身に着けて下に降りると、ルイスさんとイリーナさんがカウンターで雑談をしていた模様。
ルイスさんは、さっきまで作業小屋のほうでダンジョンアイテムの検証とかをしてたはず。
お客さんがきたと思って店舗スペースに来てくれたんだな。
三人分のお茶を用意してるところに、イリーナさんのこのセリフが出てきたのよ。
「アリスさん、メルクーア大迷宮都市の冒険者ギルドから依頼で、森のおうちからメルクーア大迷宮都市までの浄化依頼がきてます」
近々でアイテム作成の依頼がないから、冒険者ギルドからの依頼があるのはありがたいんだけどさー。
ここからメルクーア大迷宮都市まで歩いて一時間半。
でもな~浄化されてないからな~モンスターでてきたらやだな~。
ノースサーティーダンジョンの時、メルクーア大迷宮都市の冒険者ギルドから、この街道の残り半分浄化とか言われたけど、まさかこんな早く浄化依頼くるとは思わないじゃん。
「え~一人で怖いよう~」
わたしがそういうと、イリーナさん「どの口が言うんだ……」みたいな顔するのやめてもらってもいいですかね?
「イリーナさんひどい! 物理で来られたらわたしなんて紙ですよ、ペラッペラですよ!」
「防御結界付与のワンピースを作成して着用すれば大丈夫な気がするんですけど?」
イリーナさん……そうじゃないんだ。気持ちの問題ですよ。
「大丈夫じゃないよ! 怖いよ!」
「レッサーデーモンを浄化って、そっちの方が怖いって言っていいですよね? ルイスさん⁉」
「だってだって、B級のアーサーさんとルイスさんがいてくれれば、最悪なんとかしてくれると思ったし! レッサーデーモンは魅了スキル持ちだったし! わたし、魅了スキルなら負けないからいける! って思っただけだもん!」
ここで魅了スキルさんが頑張らないでいつ頑張るのって感じで全開放したからできたことですよ。モンスター相手にそれが通じるわけないでしょ!
「レッサーデーモンを魅了スキルでどうこうしようというところがおかしいわよ⁉ ルイスさん、そんなことある⁉」
「だって実際わたしの魅了スキルさんの方がすごかったよね? ルイスさん!」
わたしとイリーナさんに詰め寄られて、ルイスさんは引き気味だったけど、溜息をついてからこう言った。
「アリス。受けておきなさい。僕とメルツちゃんと一緒に街道からメルクーア大迷宮都市まで行こう」
イリーナさんよ……にこにこするのは何故なのよ。
「三人で行って、メルクーア大迷宮都市でお買い物したいでしょ。なんか素材が売ってるかもしれないし」
それは確かに先日そう思ったけどさ~。
「イリーナさん、頼むからダンジョンに潜れとか言わないでね、今回も受けるけど! 物理で攻撃のモンスターはガチ目に怖いからやなの!」
わたしがそう言うとイリーナさんは困ったように目を閉じて眉間に皺を寄せた。
「無理じゃない?」
「なんで⁉」
「無理かもなあ……でも、なるべく断ってあげて、イリーナさん」
「……まあ……そうですね……確かに。不確定要素が多すぎるというのもあるし……」
「アリス」
唇を尖らせてむ~っとしてるわたしに、ルイスさんが話しかける。
「僕がなるべくアリスの案件には付き添うから、今回は受けてあげてよ。アリスもいろいろ生産者として作りたいものがあると思うし。サンクレルに行くのと同じぐらい、メルクーア大迷宮都市には行けた方がいいだろう?」
……付き添ってくれるのは心強いですけど……ルイスさんだって、暇じゃないじゃん。
「……わかった……」
イリーナさんがあきらかにほっとした様子を見せてる。
「イリーナさん……サンクレルの住居の除霊とかなら、全然大丈夫だけどアンデッド系ダンジョンに潜れっていうのも本当は怖いんですよ」
「うーん……でもアンデッド系ダンジョンならアリスさんソロでも片づけそうではあるのよねえ。できそうでしょ? ルイスさん」
イリーナさんの言葉にルイスさんは困ったように笑う。
「イリーナさん、無理強いはほんとにやめてあげてほしい。冒険者はダンジョンに潜るのは本当にやる気のある人なんだよ。このサンクレルやメルクーア大迷宮都市は現在、ダンジョンに潜らなくても、生活できるからね」
「まあ……ルイスさんがそういうなら……」
「じゃあ、僕は続きをしてくるので」
ルイスさんは立ち上がって作業小屋の方へ行ってしまった。
「アリスさん……めっちゃ愛されてない?」
「そうかなー」
ご飯作ってくれる人がいればって感じもあるんだよね……。
頼っちゃってるっていうのはあるけどさ~。
果たしてこういうのいいんだろうか。




