第11話 家族ぐるみでお夕飯をお呼ばれしちゃった。
「天使の梯子を二回も使用しちゃったから、ちょっと住居区だけでもなんとかしないと……」
わたしが呟くと、アーサーさんはキョトンとした顔をしてる。
「どういうことですか? アリスさん」
「うーん、わたし、サンクレルで、聖なる鎮魂歌ホーリーレクイエムで除霊したことがあって、その家屋の周辺の人にも影響がでたみたいなのよ」
「アリスの浄化魔法の影響力は周辺住民の善性が増すからね、変なのがやってきてそいつが暴れたら被害が出やすい。ギルドに報告に行こう」
「え、防御とか結界とかしなくて平気?」
「アリスの依頼はノースサーティーダンジョン周辺浄化だからね。冒険者投入して行方不明者捜索も含め、ギルドに一度連絡を入れた方がいい」
なるほど。そういうことね。
そうやって再度依頼を出してもらう形で、冒険者は日々糧を得てるのか。
ルイスさんがそういうと、アーサーさんはまじまじとわたしを見る。
そんなに見ると、魅了スキルさんが働くんで見ない方がいいですよ?
「アーサーさん、転移魔法とか平気? 酔う人は苦手らしいけど」
「転移魔法……あ、それはルイスさんが使うのか」
「現場にこないと、使えないからね。この現場は覚えたから。何かあって再びこの現場にくるとしたら転移魔法でくることができる」
「あの、連続で転移魔法を使って大丈夫なんですか?」
「大丈夫、距離近いし、ダンジョン内じゃないからね」
そういえば、ルイスさんの魔法書でダンジョン内の転移魔法ってかなり魔力を使用とか書いてあったけど……。
ダンジョン内でも転移魔法を繰り返してたのか……恐ろしい……。
それだけ大元のメルクーア大迷宮が広いってことなんだろうけど。
行きは時間がかかるけど、帰りは早い。
メルクーアの冒険者ギルドに報告して、ルイスさんの転移魔法で、ヴァイドルフのアーサーさん(ジャック君)のおうちに。
ウィルさんが、「まさか日帰りで帰ってくるとは……」とか言ってたけど、チートな大魔法使い様の転移魔法があるからですよ。
帰宅した時は、ちょうどメルツちゃんとジャック君が仲良く夕飯を食べてて、ジャック君のおばあちゃんに、わたしとルイスさんもご飯食べていけって勧められた。
「転移魔法……」
「今回の現場の位置がしっかりわからなかったので、アーサーさんに道案内をしていただいて助かりました。帰りは僕が記憶してる場所であれば魔法を使えるのでこうして戻ってきたのですが……すみません、夕飯時に」
「いえいえ、ご無事でよかった」
このおうちの家長はおばあちゃんだけど、実働として動くのはウィルさんらしくて、おばあちゃん得意料理のクリームシチューを頂きながら、ウィルさんにこの速さで帰宅できた経緯を説明してた。
「でもなんでアーサー落ち込んでるのよ?」
デイジーさんがアーサーさんに尋ねる。
デイジーさんってキラキラしてんのよね。
この人、魅了スキル持ってそう……髪色とか瞳の色は茶色なんだけど、瞳なんて、スモーキークォーツっぽいキラキラがあるんだよねえ。
「マジで道案内で終わってしまった……」
「なんで? がっちりガードもしてくれたでしょ? ねえルイスさん」
「うん。お身内に魅了スキル持ちがいるから耐性があったのか……アリスがいてもふわふわした感じはなかったし、擬態したアレも魅了スキル持ちだったのに冷静だからお願いしてよかったですよ」
ウィルさんも困ったような顔を浮かべる。
「いってもルイスさんがアリスさんを紹介した朝の時点で、状態異常を瞬時にレジストしてたから……」
「アリスの魅了は強すぎるから、僕も長時間のレジスト維持はできませんよ。アリス本人も抑えてるし」
そうね、頑張って魅了スキルさんを制御するように日々努めてますけどね。
全開放するときは、もうヤッチマイナーって気持ちでお願いしてるけど。
「そうじゃなくて……B級冒険者としての矜持が……」
ははあ、なるほどねえ。
でも、そうはいっても、ほら、ここに大迷宮踏破者の大魔法使いがいることだし……と心の中で思う。
アーサーさんはおばあちゃんを見ると、おばあちゃんはうんうんと頷いてる。
そんなおばあちゃんを見て、アーサーさんは気を取り直した様子。
「いや、そうそう見たことのない神聖魔法を間近で見れたから、それもいい経験積ませてもらったと思おう! ありがとうございます」
「とんでもない、ご案内ありがとうございました!」
「アリスおねーさんの神聖魔法……ってホーリーレクイエム?」
メルツちゃんがわたしを見て尋ねる。
「今回はちょっと広範囲だったから違う神聖魔法を使ったよ~」
「そうなの⁉ メルツも見たかったな!」
メルツちゃんの言葉にジャック君は首をかしげる。
「アリスさん……アイテム作成者じゃないの……?」
「アリスおねーさんはね、付与魔法が使えるの、いっぱい効果つけられるよ! リュックもすごかってでしょ?」
「うん、すごかった!」
ごちそうさましたメルツちゃんとジャック君が流しに食器を片づけにいきながら、そんなお話をしてる。
なんだろう、この小さい子がお話してる様子を見るだけで可愛いのは。
そんなこんなで、家族ぐるみのお夕食をいただいて、わたし達は、森のおうちに帰宅したのだった。
あ~ほんとうに、ジャック君が自慢するだけあって、ステラおばあちゃんのクリームシチュー、美味しかった!




