第9話 メルクーア大迷宮都市
さてさて、到着。
サザランディア大陸の中でも代表格のダンジョンを有するメルクーア大迷宮都市。
見るのと聞くのとは大違い。
大迷宮都市の名にふさわしく、大都会だ!
サンクレルは魚市場の部分があるから商業エリアが広く感じられるけど、全然変わらないじゃん?
そしてダンジョン産のアイテムや食材を取り扱うお店の多いこと。
これはお買い物欲が高まるわあ。
依頼じゃないときに、メルツちゃんと一緒に買い物にこようっと。
ルイスさんもアーサーさんもこの街に慣れてるのか、すいすいと進んで、メルクーアの冒険者ギルドの建物に入る。
またこれが、サンクレル冒険者ギルドの倍ぐらいの建物ですよ。
扉を開けて受付のお姉さんがいる。
依頼カウンターとは別にコンシェルジュ付きだよ!
そして、建物に入った瞬間一斉に注目を浴びる。
わたしの魅了スキルさんが、またまた頑張ってる~とか思うでしょ?
違うよ。原因はルイスさんだよ。
大迷宮踏破したパーティーの大魔法使いだよ、この大都会にチョー有名人キター! そんな感じ。またB級冒険者のアーサーさんが付き従ってる。これはSPポジションでしょ。
距離感わきまえないファンが殺到するんじゃないかと、わたしとしてはドキドキしたわ。
コンシェルジュのお姉さんが視線はルイスさんにくぎ付けで、わたしが進み出ると、最初はなんだこの小娘的な視線をくれてたんだけど、それは一瞬だった。
魅了スキルさんが働きはじめちゃいましたね。
魅了スキルさん。いいですよ、頑張っちゃってくださーい。
使えるものは使うよ。
「し、失礼しました。どういったご用件でしょうか?」
お姉さんは慌てて営業モードに切り替わる。
めっちゃニコニコ顔に変化。
わたしの魅了スキル。年齢性別人種問わずですよ。
「サンクレル冒険者ギルドからきたプリーストのアリスです。ノースサーティーダンジョンについて詳細なお話を伺うようにとのことで参りました」
わたしがそう言うと、受付のお姉さんは慌てて二階の個室へわたし達を案内してくれた。
小会議室みたいな個室で職員のおねーさんにお茶を入れてもらい待つこと数分。
ていうかさ、このへっぽこプリーストがこの大迷宮を擁する冒険者ギルドでお茶を給仕してもらうこの事態よ。
それでもって、説明にやってきたのがギルドマスターと、サブマスターとか、これ絶対ルイスさん効果ですよねー。
「ルイスが来るとは思わなかった。サンクレルのプリーストがくると思ってたんだが……アーサーも一緒にくるとか……」
ギルドのお偉いさんお二人はルイスさんとアーサーさんを見てから、真ん中でちょこーんと座ってるわたしに視線を移す。
「うちの大家が受けた案件でね。心配だからついてきた」
「うちの弟が世話になってる人だから案内してきた」
ルイスさんとアーサーさんが言う。
「大家……」
「弟……」
見た目が若いプリースト。それが、B級冒険者と、ルイスさんを付き添わせてしまう状態に、ちょっと驚いたみたいだ。
「メルクーアとサンクレルの冒険者街道のど真ん中の森の家の管理人だよ」
「うん。あの街道半分は浄化結界が張ってあるからな……えっと途中から浄化されてないのは……」
「アリスが森の家とサンクレルしか使ってないから。今日もこの依頼で、うちの子をアーサーさんの家に預ける為、ノースイート街道で遠回りしたから浄化されてない。この人が鼻歌交じりであの道を闊歩したら浄化されるよ」
「まじか……近いうちそこんとこお願いしたいけど……」
「正式に依頼出してね」
ただで浄化させようとすんじゃないよと、ルイスさんが言外に言う。
「サンクレルの冒険者ギルドだけじゃなく、ルイスのお墨付きってことか、ではアリスさん」
「はい」
「現在ノースサーティーダンジョン周辺で冒険者が行方不明になってる。近くの住人も併せて30名ほどだ。ノースサーティーダンジョンで、ゴーストを見たという証言があがっているので、除霊をお願いしたい」
「……行方不明者の調査も含まれる感じですか? ちょっとそれはわたしでは無理なのですが」
「いやいや、それは別件だと思ってる。ただそのゴースト相手だと、苦手な冒険者もいるんだよ。そこを祓ってくれれば、行方不明者の捜索にでてもいい人材も投入できるので、ぜひ、そこをお願いしたい」
あ~そういうことね。
そうよねえ、獣人系の人とゴーストって相性悪いっていうし……実際わたしの知ってる獣人冒険者パーティー「蒼狼の風」のメンバーもアンデッド系は苦手っぽかった。
行方不明者を捜索するなら鼻が利く獣人パーティーを使いたいけど、ゴーストが邪魔ってことか。
「了解です」
わたしは了承してルイスさんとアーサーさんと一緒に冒険者ギルドから出た。
「アリスさん、時間的に飯を食ってから現場に行きますか?」
アーサーさんの申し出に、ルイスさんと目を合わせる。
気持ちは美味しいもの食べたいになってきてるよ。
「ルイスさん、美味しいお店知ってるよね?」
「知ってる」
でしょうね。
美味しいお店、紹介してください!
途中で屋台街に通りかかって、立ち止まりそうになったのをぐっとこらえた。
そして、ルイスさんの案内でレストランの前につくとアーサーさんが声を出す。
「え~まじっすか……」
ふむ。アーサーさんもこの街には詳しいのね、こっそり聞いてみる。
「もしかして、お高いの?」
「はい」
「さすがルイスさん……食にはこだわりが……」
わたしとアーサーさんのぼそぼそという会話を耳ざとく聞いて、振り返る。
「ルイスさん! ゴチになります! はい、アーサーさんもご一緒に!」
「「ゴチになります!!」」
わたしに引きずられてアーサーさんと声を揃えてそう言うと、ルイスさんは苦笑してお店のドアを開けたのだった。




