第8話 ノースサーティーダンジョン
結局、ルイスさんが、わたしが指名を受けた依頼に付き添ってくれることになった。
ルイスさん忙しいのにいいのだろうか。
「だってアリスが心配だし」
とかイケメンムーブで言ってくれて、うっかりキュンとしてしまったわよ。
大魔法使い様も魅了スキルにかかっちゃってる? レジストできるはずなんですけども。
それはさておき、問題はメルツちゃんよ。
メルツちゃん一人でお留守番させるのも……って考えていたら、ジャック君のおうちがメルツちゃんをあずかってくれることになった。
メルツちゃんは、わたしがメルクーア大迷宮都市に行くと言ったら、一緒に行くって言ったけど……危ないじゃん。
何が起きるかわからないし。
それに、学校があるんだよね。あとちょっとで学校も夏休みになるんだけど――そうなのよ、夏季休校があるのよ。これはサンクレルの土地柄のせいね、この地域は夏場が暑いから。
一か月半ぐらいは休校するんだって。異世界転生前の世界とそこは同じ。
いっしょに学校に行ってくれるし、ママちゃん親子も預かってくれるので、ありがたい。
サンクレル多国籍食料品店の食材をお礼に渡すことにした。
本当は森の家から目の前の冒険者街道でメルクーア大迷宮都市に向かうのが近道なんだけど、メルツちゃんを預かってもらうので一度サンクレルに出てヴァイデドルフへ、そしてヴァイデドルフからノースイート大街道を通るっていう道順でメルクーア大迷宮都市に向かうことにした。
初めてのメルクーア大迷宮都市だし、ここにきて一年で、そろそろこの都市のこともちょっとは出歩いてみたいなって気持ちもあったし。ママちゃんはどうするかってことなんだけど、一応リードをつけて、テイムしてますよって態で一緒にサンクレルからヴァイデドルフに向かうことに。
ベビ犬ちゃん達はわたしとメルツちゃんが抱っこしてるので、街行く人たちはベビ犬ちゃんの可愛さにメロメロだった。
子供が子犬を抱っこしてるビジュアルは異世界でも優勝だね!
「いきなりなお願いですみません」
わたしがそういうと、ジャック君のおうちの人達は「ぜんぜん、気にしなくていいわよ~」って言ってくれた。
お姉さんのデイジーさんとマリアさん、そしてジャック君のおばあちゃん。
おばあちゃんが、この家の主人なのね。
それがよくわかる。
他にもお兄さん二人いたけど、みんなおばあちゃんの意見をすごく聞いてる。
お婆さんがいうには、お兄さんやお姉さんは年齢が近くて、小さいころはお互い協力しあってるところがあったけど、ジャック君はそういう相手がいなくて、メルツちゃんが遊びにきてくれることで、そういう部分も身につくだろうとのこと。
はわ~子育て百戦錬磨って感じのお言葉だ。
ユジンさんはサンクレルでハンザ工務店さんにお務めだけど、ウィルさんアーサーさんは、B級冒険者でおうちの牧場を兼業してるらしい。
ルイスさんがメルツちゃんの付き添いでジャック君のおうちを訪ねた際、めっちゃ緊張した感じで対応していたそうな。
そりゃ冒険者界隈ではトップオブトップですからね、このイケメン様は。
「メルクーア大迷宮都市の廃ダンジョンの除霊って、どこのダンジョンですか?」
「ノースサーティーダンジョンっていうんですよ」
ジャック君のお兄さんウィルさんとアーサーさんが互いの顔を見合わせる。
「ルイスさんがいるから大丈夫だとは思うけど……」
「そこ、俺達もちょっと気になってるんですよね、あの、迷惑でなければ、場所の案内しましょうか?」
その言葉にわたしとルイスさんが顔を見合わせる。
指名依頼なんて初めてだし、こういうのいいのかしら?
まあルイスさんの付き添い時点でだいたいはOKの気がする。それに、付き添ってくれる方が多ければ多いほど、不安要素はなくなるんだけど。
わたしがそう目線でルイスさんに訴えるとルイスさんは頷く。
「僕とアリスがいれば問題はないとは思うけれど、ノースエリアのダンジョンは僕も昔行ったきりだから、お言葉に甘えてもいいかな?」
お兄さん達は頷いて、アーサーさんが付き添うことになった。
「最近の話なんですよ、ノースエリアのダンジョンに潜るパーティーが行方不明になってるんです」
ヴァイデドルフからメルクーア大迷宮都市行きの寄合馬車に乗ってる時にアーサーさんがそう言った。
わたしとルイスさんは顔を見合わせる。
「メルクーア大迷宮都市の冒険者ギルドでは、ノースエリアダンジョンへの探索は制限してるんです」
むむむ。
ルイスさん達「シー・ファング」がメルクーア大迷宮踏破しても、冒険者はアイテムを目指してダンジョンに潜る。
生活の糧だもんね。
そんな冒険者がたくさんいるはずの場所で、行方不明者とは……。
「冒険者だけじゃないんです」
「はい?」
「ノースエリアダンジョンに近い住居区では、やっぱり行方不明者が多発してるみたいで、メルクーア大迷宮都市の冒険者ギルドでは、今注目してるんですよ。最初は、こういうダンジョンに潜らない探索依頼だから、初心者が受けてたんですよね。でも依頼をうけたパーティー丸々行方不明になったので、この探索依頼はB級冒険者以上っていう制限がかけられ始めてるようです」
んん~。
「この制限が告知される前に、最後に依頼を受けた初心者パーティーが、そのノースサーティーダンジョン周辺の探索をしていたらしいっていう情報があるんですよ」
ゴーストじゃないなこれ。
そんな物量を幽体であるゴーストが運べるわけないわ。
とり憑くにしてもさ、そんな何人もとり憑けないでしょ。
「すっごく人為的くさい」
わたしが呟くと、ルイスさんはよくできましたって感じでわたしににっこり笑いかける。
「アーサーさんもそう思うでしょ?」
「いや確かに、そう思いますけど、でも、なんかへんな雰囲気は感じられるんですよね」
「へん?」
「つまりその、(ゴーストが)出そうな」
ううーん。ゴーストって寄ってくるからなあ……。
ほら、よくあるじゃん、怖い話をすると本当に寄ってくるよとか言われるアレ。
確かにそういうのはあるんだけどさあ。
大人数をそんなにとり憑けないはずなんだよねえ。
とりあえず、メルクーア大迷宮都市の冒険者ギルドで、詳細を聞くか。
サンクレルの冒険者ギルドからも連絡入ってるだろうしね。




