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元聖女のざまあヒロイン、強制力から逃亡しスローライフをおくりたい!  作者: 翠川稜
2部かもしれない

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第7話 指名依頼ですって⁉


「アリスおねーさん、イリーナさんからおてがみあずかってきたよー」


 学校帰りに、ジャック君にひっついて冒険者ギルドに寄り道したメルツちゃん。イリーナさんからのお手紙を頼まれたらしい。

 封筒から便せんをとりだして、内容を確認すると、「依頼があるので、冒険者ギルドにきてね」ってことだった。

 あら珍しい。

 じゃあ久々に法衣服を着なきゃ。

 錫杖もね。

 普通の恰好で冒険者ギルドに行くと、また食堂のバイトと間違われてしまうかもしれない。

 ルイスさんのお昼を用意して、メルツちゃんと一緒に朝からサンクレルに出発。

 メルツちゃんを学校まで送り届けてから冒険者ギルドへ。

 ギルドの扉を開けて足を踏み入れると、一斉に注目を浴びる。


 ――魅了スキルさんよ……朝から仕事しすぎなのよ……。


「イリーナさんをお願いします」


 カウンターの受付のお姉さんにそう伝えると、受付のお姉さんもニコニコしてる。

 いい笑顔~。

 そして後ろの強面の冒険者さんたちのそわそわ具合……。

 相変わらずだわ。

 見慣れない冒険者のお兄さんがわたしに声をかけてくる。


「ねえ君、一人で冒険者ギルドにくるなんて――……」


 と、一声かけてくる途中で、強面の見慣れている冒険者のお兄さん達が、冒険者らしい素早い動きで、声をかけてきたお兄さんを羽交い絞めにする。

 ……強面だけど、このサンクレル冒険者ギルドの常連さんは、わたしのこと、わかってきてるね!

 わたしは強面のお兄さん達を見て、ねぎらうように頷いて、サムズアップすると、強面のお兄さん一同も同じようにピッと親指を立てて頷く。

 羽交い絞めにされたお兄さんはずるずると強面のお兄さん達に引っ張られて外へ。この行動の一連は、わたしとわたしの魅了スキルに一定の理解を持ってもらってると思っていいのかしら? わたしの存在もサンクレル冒険者ギルドに、プリーストとしてちょっとは覚えてもらってきてるってこと?

 簡単な除霊ならおまかせくださいな!

 な~んて調子いいこと内心思っていたんだけど……。


「メルクーア大迷宮都市の廃ダンジョンでの除霊⁉」


 イリーナさんからそんな依頼をお願いされた。

 メルクーア大迷宮都市は、その名に冠する千年超えダンジョン、メルクーア大迷宮を抱える都市なんだけど。

 このでっかい大迷宮の周りには大小さまざまなダンジョンがあって、中にはこの大迷宮と直結してるダンジョンもあったりする。

 でも、まれにそうでないダンジョンがあるのよね。

 多分大迷宮に直結しようとしてもなんらかの事象があって繋がらなかったり、大元のメルクーア大迷宮から派生してそのまま分離してしまったりといろいろなんだけど。

 わたしにそのダンジョンのうちの一つを除霊してほしいらしいのよ。

 いや~へっぽこ新米プリースト一年のわたしに、その指名依頼とは……。

 何かの間違いでは?

 そりゃ本職プリースト。

 ゴースト系は強いけど、あとは全然なのよ!

 だから街の事故物件系ならどんとこいだけど、ダンジョンとなると、スケルトンだって倒せるかどうかわかんないもん!


「そうなのよ……神聖魔法に特化した僧侶とか司祭って意外かもしれないけど、なかなか少ないのよね。それを持っていても、どちらかといえば、みんな治癒魔法とか支援魔法のレベルの方に振られていて……そしてそういう人はだいたいパーティーを組んでるの」


 ですよねえ。


「え~でも~」

「アリスさんはお買い物好きでしょ? サンクレルにはいくけど、メルクーア大迷宮都市には行ったことないんじゃない?」

「ないです」

「服飾や小物なんかの素材系は断然メルクーア大迷宮都市商業エリアの方がダンジョン産の珍しいものがそろってるわよ?」


 うぐぐ。

 ちょっと惹かれる。

 やっぱり素材は直接見てみたいじゃん。可愛いのとか、かっこいいのとか、おしゃれなのとか作れるなら作りたいじゃん。

 わたしの付与魔法と相性がいい素材も見つかるかもしれないし……。

 でも。

 言っていい?

 ぶっちゃけ、こ~わ~い~!!

 ゴーストはいいのよ、ゴーストはなんとかなりそうだから。

 問題はそれ以外があった場合なのよ!


「廃ダンジョンっていっても、ダンジョンでしょ? モンスター出るじゃないですか! スライムをようやく倒せる程度だし、ホーンラビットに出くわしたら死んじゃう~!」

「それなのよねえ、その廃ダンジョンの周辺に異様な空気があるから、中に何があるかわからないのよ~」

「無理無理無理ぃ!!」

「だから、その出入口付近での除霊でいいから~。あとは他の冒険者にお任せして」


 イリーナさん! わたしの魅了スキルを舐めてますね⁉ 

 そんなソロのプリーストを入り口に置いて、廃ダンジョン調査する人がわたしを一緒に連れて行こうとするにきまってるじゃないですかー!


「ねえ、わたしが作ったアミュレットつけて潜らせれば一発で聖域化でしょ?」

「獣人系クランが一時買い占めて、アンデッドエリアに入って、効果の強いアミュレットは粉砕されたのよ」


 獣人系クランと聞いて「蒼狼の風」のメンバーの顔が浮かぶ。

 アンデッドエリアで苦労してたらしいもんねえ。

 森のおうちの除霊の時だって庭先で待機していたぐらいだし。

 大人買いの購入するのはわかる。

 そしてアミュレット。

 現在効果が強すぎないように、わたしだけでなく、ルイスさんも鑑定してくれて、通常の浄化、回復になるように魔法付与が均一でつけられるようになったのよね。

 そんなわけで、現在流通してるアミュレットは、初期アミュレットと比較して、効果は薄いらしいのよ。

 渾身の浄化回復アミュレットを作ると、せっかく効果が薄く均一になったのに、効果のふり幅が広くて、商品として市場に流せない。


「わたしはメルツちゃんと、ルイスさんのごはんを作らないと……女性の冒険者の人は子供ができたら引退してる人が多いって言ってた!」


「アリスさん……あなたはわたしと同じ独身で、メルツちゃんはあなたの産んだ子じゃないし、ルイスさんとも結婚してませんよね」


「してないけども!」


「お願いします! アリスさんしか頼めないんです!!」


 イリーナさんが土下座をせんばかりに頭を下げたのだった……。



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