第6話 ぱぱーん。子供用リュック~。
メルツちゃんはジャック君の武器を作るみたいで、ジャック君のダンジョンにお邪魔するのはもうちょっとあとになりそうっていう話をしていた。
でも学校で、お互いの進捗を話し合おうって決めたらしい。
なにがなんでも「一緒に遊ぶ~」を優先しないところが、ここの大陸の子供っていうか異世界の子供っていうか。
それともこの二人の性格なのかな。
でもメルツちゃんが「武器作るから、時々、きてね!」って、帰り際のジャック君にそう念をおしてた。
使う本人に合わせて作るらしい。
メルツちゃんオーダーメイド作品ということか。
なんかすごそう。
そんなわけで、わたし、メルツちゃん用とジャック君用のダンジョンリュックを作成中。
お弁当やドロップアイテムなんかを入れやすいように。
メルツちゃんは、「ダンジョンにはランドセル背負っていけばいいよ~学校のみんなも、かばんはひとつだよ」なんて言ってた。
あーもしかして、「アリスおねーさんはお貴族様だったから、使う用途に分ける?」とか思われてるのかしら? でもランドセルは学校用に作ったのよ。まあランドセルって、あれも元々、軍用とか前世で聞いたことあるけど。
メルツちゃんの鞄一つあればいい~って、この異世界だとド正論なんだろうけどさ、これはわたしの性格なのか、毎度毎度、物欲旺盛ざまあヒロインに転生しつづけていた弊害なのかはわからなけど、わたしは、使い分けしたいのよ!
そして家族同様メルツちゃんにも、用途用途でそういうオシャレ気分をちょっとでも感じてほしいのよ!
それにさあ、仲良しのお友達と色違いお揃いって、気分上がらない? わたしはあがるね! 「え~ペアルック~? だっさ~!」っていうのはさあ、デザインがダサいからそういうだけであってデザインよければ全てよし!
わたしはメルツちゃんのランドセルのデザイン図でサイズを確認すると、リュックのデザインを起こし始めた。
可愛いの作るぞ~。
子供用にちっちゃくね~ランドセルより一回り小さく。
サイドに水筒ボトル用のポケットもつけてさ。
アイテム容量は大にしよ~。軽くて、なんでも入るように~。
るんるんるーん。
らんらんらーん。
気が付けば、いつものように鼻歌交じりで作り始めていた。
そんなこんなで二、三日で可愛いリュックを色違いで二つ作ったよ。
ぱぱーん
時空神の贖罪を受けし元聖女が作った子供用リュック。
防汚☆☆☆
軽量化☆☆☆
防御☆☆☆
魅了☆☆
アイテムバッグ容量(大)
※防御は強いモンスターが放つ致命傷の攻撃から一回だけ身代わりになってくれる。
うん?
なんかいろいろついちゃった?
そして最後の魅了よ……魅了スキルさんよ……。なぜついてしまうのか。可愛いリュックだからついてしまったのかしら? ま、まあね、可愛いは正義だからね。ついててもいいよね?
とりあえずデザイン図は商業ギルドに買いとってもらお。
こんな付与もりもりの子供用リュックなんて量産しても単価高いだけで売れないからね。
デザイン料だけもらって、量産は他所に回すんだ~。
そして週末、ジャック君が遊びにきてくれた。
「こんにちは」
「わ~ジャック君いらっしゃーい!」
ジャック君のおうちのワンちゃんボスも一緒。
うちのベビ犬ちゃん達も嬉しそう。
ジャック君の周りをキャンキャンいいながらしっぽを振ってくるくる回ってる。
……テイマー……。
いいえ、うちのベビ犬ちゃん達がお客さん大好きっていう性質もあるよね。
メルツちゃんと身長もそんなに変わらないし……。
「今日はメルツちゃんにお呼ばれしました」
「そうそう、聞いてるわ!」
ぱちんとわたしは手を合わせる。
「これ、おばあちゃんからです」
ジャック君が持ってきてくれたのは、最近サンクレルで流行ってる「ステラおばあちゃんのチーズケーキ」だった!
なんでも、ジャック君のお姉さんの一人がチェリーベリー・カフェにお勤めしていたことがあって、おばあちゃんの作ったチーズケーキを差し入れしたら、ぜひ商品化したいって懇願されたんだって。
ジャック君のおうちの牧場で出荷してるミルクは、今サンクレルやメルクーア大迷宮都市でも大人気の『プレミアムミルク』で、それで作ってるから美味しいのよね。
「あら~いいのに~でも嬉しい~食べてみたかったの~! せっかくだからいただきます! メルツちゃんは作業小屋にいるから、食堂にくるように呼んできてもらえるかな? お茶にしましょ?」
「はい」
ジャック君が素直に返事する。
可愛い~。
「あの……アリスさん」
「はい?」
「アリスさんって、その、このあいだの、お米とかおいしかったの」
「ほんと? またそのうち開催するからね。前は毎週のようにやってたけど、メルツちゃんが学校に行くことになったから、ご隠居様も遠慮してるんだ」
「ご隠居……」
「ドワーフのおじいさんたちね」
「あ、はい」
「精米機も作ってもらっちゃったんだ~。イースト・アインランド地方の食料品が輸入されてくるサンクレル港街サイコーよね? この大陸にきて大正解! わたし、別の大陸にいたの。あと一応ね、わたし、プリーストだから。そういうお話があれば、イリーナさんに伝えてね?」
「そういうお話って……?」
わたしが両手をお化けのようにフリフリすると、ジャック君がちっちゃくピョンって跳ねるように後ずさる。
可愛い~。
「そんなのがいて、困ってたら、このアリスさんがなんとかするからね」
わたしがそういうと、メルツちゃんが作業小屋の扉を開けて、庭にいるわたしとジャック君を見て声をあげる。
「ベビ犬ちゃん達以外の声が聞こえると思った! ボスも一緒に、遊びにきてくれたんだね、ジャック君!」
「メルツちゃん。遊びにきたの、大丈夫?」
「もちろん大丈夫だよ! わーい! 今日はメルツ、ここの森を案内するね~!」
「おやつ食べてからよ、メルツちゃん。今ルイスさんも呼んでくるね。メルツちゃんも手を洗ってらっしゃい」
「はーい」
わたしは食堂に戻って、コーヒーと紅茶を用意。
あといただいたチーズケーキを人数分に取り分けて、カウンターに並べる。
チーズケーキ登場に足取り軽く、ルイスさんのお部屋のドアをノックする。
「はい?」
「ルイスさーん、ジャック君が遊びにきてくれたの。お土産のチーズケーキでお茶しませんか?」
「うん。今人気のお菓子でしょ? この間、メルツちゃんがジャック君のところにお邪魔した時にね、今度持ってくってジャック君が言ってた」
いや~さすが二都市間の食を支えるヴァイデドルフ地域の出身だわ~。
でもジャック君お米を気に入ってる感じだったよね?
「ルイスさん、ヴァイデドルフって、米は作ってないの?」
「聞いたことないね」
ですよねー。
だからサンクレルの多国籍食料品店に頼っちゃうんだよなあ。
おやつをいただいたあと、メルツちゃんがジャック君に森を案内するらしい。
わたしは二人に早速作った子供用リュックを渡す。
「アリスおねーさん、本当に作ったの……」
「可愛いでしょ~」
このリュックの生地、もっと可愛いパステル系のピンクとブルーがあったらよかったんだけどさあ。
ベージュとグレーなんだよね。
まあね、これはこれでいいか。
わたしは二人にリュックを身に着けさせる。
「怪我しないようにね、ママちゃんよろしくね」
メルツちゃんとジャック君は、ママちゃんとボスを連れて森の方へ走っていった。




