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元聖女のざまあヒロイン、強制力から逃亡しスローライフをおくりたい!  作者: 翠川稜
2部かもしれない

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第5話 焼きおにぎりなのですよ!


 ジャック君を取り囲んで、男性陣のほとんどがわいわいやってるので、わたしはバーベキューに追加を用意した。

 そしてバーベキューから少し離れたところで小さな飯盒の様子を見る。

 炊けたわ。白米。

 火から下ろして、蒸らしてる間に、先日ジャック君のおうちから頂いたウインナーを焼く。

 これがまた美味しいのよねえ。

 イリーナさんが手伝ってくれて、頭を合わせてジャック君の武器についてあーだこーだ論議している団体に渡してもらってくる。

 そしてそっと飯盒の様子を覗く。

 いい感じではないですかな?

 ふふ。

 ジャック君、君がもしも転生した元日本人ならば、この白米の味を懐かしく思うに違いない。


 白米はサンクレルの多国籍食料品店で購入できます。

 サンクレルの多国籍食品店、特に東方のイースト・アイランド地方の食品を取り扱うお店の人には顔を覚えられてしまっている。

 月に一度足を運ぶ程度なのに、名前と顔を覚えられるというのは、多分、魅了スキルさんのせいですよね、これ。

 でも月一で訪れて、結構な買い物をするわたし。

 そのお店は、最初は玄米売りだったのよ。

 でも、なんか偶然白米を購入した時にわたしが来店して、運よくゲットできたんだ。

 でもある日、玄米に戻ってしまった。

 なんでも玄米の方が仕入れ値が安いから。

 でも、これが売れなかったんだよな。

 玄米から白米そしてまた玄米。

 この過程で売り上げの波が顕著に出たらしい。

 白米売れるって。

 みんなわかってるな~。


 ある日、お店の人がちょっとしょんぼりしてて、そんないきさつを話してくれた。

 その時わたしが玄米を買い込んだんだわ。

 お店の人は「玄米でいいの⁉」と何度も尋ねるから「精米すればいいんじゃないの?」って言ってみたら、つかまれた。


「精米⁉ 何それ⁉」

「糠をとるんですよ」

「やり方わからないですう」

「わたしも原始的なやり方しか知らないけど~」


 ボトルに玄米入れて棒で糠取る方法しか知らんけど、って言ったら、それだと時間かかって少量しかできないと、がっくりうなだれてしまったのね。

 ですがね、このサンクレルにはいるんですよ。

 こういうのを機械化しちゃう人達が……。

 そう、今バーベキューと酒をかっくらってるドワーフのご隠居様方ですよ。

 わたしが玄米をコツコツ精米してたら、お茶のみにきた(遠いのにわざわざ)ハンザさんとそのお友達の人がそれを見て「要は撹拌機の応用版だろ? 機械化できるんじゃね?」って言ってくれてね。

 そこから撹拌だと、コメが削れたり割れたりするから、どうする? ゆるく攪拌して圧力加えてみたら糠は軽いから、とれるんじゃね? 糠と白米に分けるにはその方が形いいよね? とか非常に専門的な研究が始まっちゃったわけで、できたんですよ。


 ぱぱーん

 魔導精米機~。


 この魔導精米機。

 お米を輸入してる多国籍食料品店の人が、めちゃくちゃ欲しがっちゃって、購入したらしい。

 いや~白米が手に入りやすくなった!

 わたしがここで白米炊いて、バーベキューとか冬場の鍋パーティーで出してるので、まじで助かる~。

 ルイスさんがたくさん食べるから。

 米購入はルイスさん持ちだよ。業務用大袋で購入しようとか言い出したもんね、あの人。

 背は高いけど細身なのに……ルイスさんのどこに納まるんだって思ったけど、ルイスさんのパーティーメンバーが言うには、全部魔力に持ってかれるらしい。

 だからサンクレルやメルクーア大迷宮都市の美味しいお店はかなり詳しいらしいよ。

 ルイスさんは、お店以外でこうやって白米を出されたの、すごく驚いたらしいんだよねえ。

 なので、ジャック君も喜んでくれるかな~?


 まずは普通におにぎりよ。

 塩結び。

 梅干しがないから、具は鮭で。サンクレルは鮭はあるのよ。

 ということは? いくらもね!

 明太子はないんだけどさ、あと昆布、これは味付けしてみていい感じになってる。

 多国籍食料品店さん……いつか梅と赤しそを輸入してきてください。

 そしたら梅干し作るよ~。

 あとね、海苔も輸入してください!

 転生転生また転生を繰り返してたわたしに、懐かしの味を提供してください!

 武器の作成とかデザインとかで、わいわいやってるところにそっと置くと、ジャック君が叫ぶ。


「おにぎり⁉」


 小さく握ったからね、みなさんもつまみやすいでしょ。

 そしてジャック君、やっぱり、おにぎりを知っている……。


「ジャック君、おにぎり知ってるの⁉ メルツのところはね、アリスおねーさんがね、メルツがみたことないお料理つくってくれるの! おにぎりもそうなの! おいしいよね!」

「えと、えと、本で見たの」


 そうね、前世で食べたとか言えないよね。


「はじめてなの⁉ おいしいよ!」

「う、うん、は、はじめて」


 この世界ではね、初めてかもね。

 そんなジャック君に、もういっちょやるか。

 わたしはバーベキューの網に、何も味のついてない白米のおにぎりを置いてじっくり焼き始める。そしていい感じにやけたところに、お醤油を刷毛でちょいちょいと塗ってく。

 刷毛から滴るお醤油が炭にあたって、ジュワアツって音と一緒に芳ばしい香りをお届けだ!

 トウモロコシにも塗っちゃえ~。

 郊外の自然豊かな森のおうちで、焼きもろこし+醤油、夏はこれでしょ~。


「すっげーいい匂いするんですけど」


 ルイスさんのパーティーメンバーのザイルさんが寄ってくる。


「はーい、ガブっていっちゃって~」

「またエールが進みそうなものを」

「アリス嬢ちゃん、それくれ」

「トウモロコシですか~どうぞ~、はーいジャック君、焼きおにぎりもできたよ~」


 ジャック君は焼きおにぎりをほおばる。


「お醤油……」

「サンクレルの多国籍食料品店で売ってるのよ~」

「ぼくもこのあいだ買いました」

「おお~買ったの?」

「ちょっと高かった」


 わかる~。何気に高いのよ~。


「ジャックは大根おろしにかけたんだよな」

「焼き魚に、つけてみました」


 うは~やってんなあ。ジャック君!


「じゃあ、焼きみそ握りもつくりますかあ?」


 わたしがそう言うと、ジャック君はぱあっと目を見開いていた。



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