第73話 パレード! パレード‼
ライオネル叔父さんはサンクレルのパレードの警備に駆り出される予定らしい。
元軍人だから、サンクレルの警備隊とのやりとりとかは慣れたもので、警備隊の方もモンスター狩ってるだけの冒険者より、組織運営のノウハウがある人間が助っ人に入るのは大歓迎だったみたいでメインストリート警備でも指揮系統を一つ任されたそうな。
こういう人だから、イリーナさんがまた惚れちゃうんだろうね。
「お前、こういう人込みでもその魅了が効いちゃうから、俺の警備エリアにいなさい!」
はーい。
ケイトリンさんとは住居エリアでお別れ。
ライオネル叔父さんに送ってもらうことに。
叔父さんも買い出しの荷物を下宿先においてから、イリーナさんの家に立ち寄って、イリーナさん分の食品や雑貨を渡すため、呼び鈴を押す。
イリーナさん大丈夫かな……ゆっくり眠れたかしら?
「はい……アリスさん、ありが……とう……? え?」
イリーナさん絶賛片想い中の叔父さん付きでやってきましたアリスでーす。
「はい、買い出し班アリスです! 助っ人も一緒です!」
「はわあああ」
「イリーナおねーさんは、ねんねできたの?」
メルツちゃんがイリーナさんを見上げてそう尋ねる。
「は、はひ」
おっふ、言語中枢がまだまだ覚醒してないご様子ですな?
「叔父さん、こっち食品、雑貨の方はわたしが片づけちゃうんで、よろしくお願いします」
「あわわわ、だ、大丈夫! や、やるから!」
ここは甘えなさいなー。
「アリスから聞いたよ。三日もギルドに缶詰だったんだろ? いいよいいよ、いつもお世話になってるし。生鮮食料品は魔道冷蔵庫でいいんだよな?」
「はい、すみません」
「謝らなくても」
「あ、ありがとうございます」
わたしとメルツちゃんは、そんな二人の様子をちらちら見ながら、雑貨を片づけていく。
叔父さんも、まんざらじゃないのか?
イリーナさんは美人だもんね~。
ここで、じゃ、あとは若いお二人で~ってなりそうだけど、叔父さんは「アリス、日が暮れる前に森の家に戻らないと!」とかわたしを急かす。
メルツちゃんもわたしも仕方ないなと思いつつ、帰る用意をする。
「じゃあ、イリーナさん、またね!」
「ありがとう、アリスさん」
「イリーナおねーさん、ばいばい」
「ばいばい、メルツちゃん。あとライオネルさん、どうもありがとうございました」
「なんの、ついでだから」
そんな挨拶を交わして、わたしとメルツちゃんは森の家まで、叔父さんに送ってもらった。
女子トークの時にはメルツちゃんはいなかったけど、イリーナさんが叔父さんのこと好きっぽいのはわかったみたいだ。
「イリーナおねーさんは、ライオネルおじさんのこと好き?」
「好きっぽいのよ」
「やっぱり、メルツ、見ててわかったよ!」
「わかったかー。いやーやっぱり、いいよね~恋」
「……」
「ケイトリンさんも結婚間近だっていうし~、恋愛はしなくてもいいかなって思ってたけど、ああいうの見たり聞いたりするとウキウキしちゃうよね!?」
「……」
あら?
なんでメルツちゃんはそんな「やれやれ」みたいな顔をするかな?
「パレードが楽しみだからウキウキしちゃうのかもしれないけどね!」
わたしがそういうとメルツちゃんもうんうんと頷く。
「パレードは今日の市場みたいに人がごった返してるから、メルツちゃん、迷子にならないように気を付けないとね」
「うん。ルイスせんせー見えるかな」
「大丈夫。わたしがメルツちゃんを抱っこするからね!」
「メルツ重いよ?」
「どれどれ」
わたしはメルツちゃんを抱っこしてみる。
「あら~やっぱりちょっと大きくなったのかなー?」
重いとは言わない。
一番最初にメルツちゃんに会った時に比べたら、やっぱりすこし体重は増えたとは思うけど、このぐらいの年齢の子の標準よ、いや、標準よりもまだ軽い方かも。
最初のメルツちゃんは、もっとガリガリだったもんね。まるで枯れ木の枝のような手足だったわ。
よくあんな体で、長い旅をしてきたものよ。
「大丈夫、全然よ、ルイスさんが通るときに抱っこしてあげるから、ずっとくっついててね?」
「メルツ、アリスおねーさんといっしょ」
うふふ、可愛い~。
「ルイスせんせーのパレード、たのしみ!」
「うん! 楽しみ!」
そしてパレード当日。
サンクレルに行くと、もう、すごかった。
森の家からサンクレルへ向かう街道も、メルクーア大迷宮都市の人たちがパレードを追うようにぱらぱらといつもよりも人が行きかっている。
メルツちゃんの通学時なんか若い冒険者が薬草採取にやってくるぐらいなのに。
あーこれもしかしたら、迷宮都市のお店を持ってる人じゃないの?
営業停止にしてるから、パレードを見にサンクレルまで行こうかって感じ? 多分そうようね。
サンクレルに行くと、ハンザさんやランスさん、ドワーフのお爺様方とハンザ工務店さんの職人さん達が「こっちじゃこっち」と手招きしてる。
「叔父さんが警備してるのがメインストリートなのよ、近くにいけば、叔父さんが場所を作ってくれるって言ってました!」
「おおそうか!」
「警備隊の助っ人なんじゃな」
「え、それってすごくね? サンクレルの治安いいの警備隊が優秀だからってはなしだよ? アリスさんの叔父さん、そこの助っ人でメインストリート警備任されちゃうの?」
「もともと、軍人さんだから~そういう場所というか職種に理解があるからって、大抜擢されたみたいです」
わたしがそういうと、みんな「おお~」とか「なるほどな~」とか声をあげて、わいわい雑談しながらメインストリートに向かう。
普通なら人込みでごった返して、前に進めないところ。
そこはわたし、法衣服と錫杖を手にした恰好なので、みんなわりと道を譲ってくれるのだ。
ダンジョン踏破者への祝福をするプリーストに見てもらえる。
実際祝福もしたプリーストですから。
あと魅了ね、これでわりと道ができて、想像よりもすんなりメインストリートを警備してる叔父さんと合流できたのだ。
サンクレルの外壁の方で祝砲があがる。
ルイスさん達がサンクレルへ入ってきた知らせらしい。
ここから外環通りを一周して、メインストリートへ入るのだ。
まさに、あれよ、野球かオリンピック選手かの優勝とか凱旋パレードよ。
歓声や拍手が波を打つように、そして遠くに舞う紙吹雪も移動してる。
わあ! 本当にお祭りみたい!
気分あがる~‼
メインストリートに入ってくるのは一番最後だから、その間、ハンザ工務店のお弟子さん達が屋台でなんか軽食とか買ってきてくれちゃったりして、それに舌鼓をうちつつ、わくわくとパレードを待っていたら、祝砲が三回打ちあがる。
メインストリートにパレードが入ってくる!
歓声が一段と大きくなった。
「ルイスせんせー!!」
メルツちゃんが大きな声でルイスさんを呼ぶ。
それでも、周囲の歓声にかき消されて、メルツちゃんの声は届いてない。
パレードの車を引くのは馬ではなくテイマーの人が持ってるジャイアントリザードっていうモンスターなんだって。
そこはやっぱりダンジョンとモンスターと冒険者のサザランディア大陸らしいなって思った。
『シー・ファング』のメンバーは手を振ってる。
あれ何気に疲れるのよねえ。
絶対笑顔って厳命されるしさあ。
転生前のざまあヒロインの経験上、成婚パレードだってやったことあるからわかるよ。
わたしはよいしょとメルツちゃんを抱っこしてパレードの方を見る。
「ルイスせんせ~~~!!」
メルツちゃんの声、歓声でかき消されてとどいてないと思うのに、こわ! ルイスさんメルツちゃん探してるっぽい。
手を振り笑顔だけど、視線が、ぜったいメルツちゃん探してる!
メルツちゃんは、わたしの錫杖を持ってシャラシャラ鳴らす。
ルイスさんは、メルツちゃんとわたしを見つけて手を振ってくれた。
「わー! ルイスせんせー‼ アリスおねーさん! ルイスせんせーはメルツ達をみつけてくれたよ! アリスおねーさんが抱っこしてくれたからだよ! すごーい! 目が合ったよー!」
メルツちゃんはテンション高くそう言った。
でも、抱っこしなくても、ルイスさん、多分メルツちゃんを見つけたと思う。
そんな気がするんだ。




