第72話 さあお買い物するよ!
「だいたいケイトリンさんから聞いてると思うけど、サンクレルもメルクーア大迷宮都市もパニックですよ。パレードは三日後、その日は両方の店舗が一切の営業禁止令が出てます。屋台のエリアは営業されるようです。屋台は抽選で選出された店が出店予定。飲食系を全部クローズすると問題がおきますし、だから今、一般家庭の人達は買いだめしてます」
「アリスおねーさん、おかいものしないと!」
「そうね、メルツちゃん!」
「冒険者ギルドは治安警備隊と連携して、街道の整備を受けてます」
イリーナさんはバッグからサンクレルの観光ガイドの地図を取り出して、赤いペンでツーっとイリーナさんは印をつける。
サンクレルはサザランディア大陸の中でも一、二、を誇る港町。
移住だけではなく観光や貿易なんかでも人の出入りが激しいから、こんなものも作られている。
初めて見たわ。
ここにきた当初ほしかった。
これがあれば、市場以外にも遊興施設とかも行けたかもしれない。メルツちゃん連れて。
これもらっちゃっていい? いい?
「街を囲むようになってる大廻り外環ストリートを一周したあとに、中央ストリートを通っていく予定です」
「イリーナさんは当日ギルドにいるの?」
「いえ、わたしは外勤になります。多分この地域で今後ないだろう盛大なイベント。しかも冒険者が主役のイベントですし、各地点で、警備隊との連携役に回ります。その打合せが前日になってとか、段取り悪すぎ! ダンジョン踏破なんていうのは突発的なことで、めでたいことだからいいんですけど」
「メルクーア大迷宮の最深層ラスボスってなんだったんですか?」
冒険者っぽく、気になる質問をしたのはケイトリンさん。
「エンシェントドラゴンだったらしいですよ」
……えんしぇんとどらごん……ドラゴン屠ったんだ……こわー。すごーい。
メンバー鑑定したら、ドラゴンバスターとか竜殺しの称号ついてるんじゃないの? まあもれなくダンジョンマスターもついてるんだろうけどさ。
なんかバーベキュー大会でいつも盛り上がってるメンバーだけに、そんな偉業を達成したとかピンとこないわ。
とはいえ、ここでなんの打ち上げもしないではいられませんけど?
わいわいお祝いしたいですけど?
「よっしゃ、それじゃあ、これからわたしとメルツちゃんは市場に行って、食料品生活雑貨の買いだめをしてきます!」
すくっとわたしが立ち上がるとメルツちゃんは、「ごちそうさまなの」といいながら食器とカトラリーをキッチンに持っていく。
「あ、わたしも行く!」
ケイトリンさんも立ち上がる。
「イリーナさんのもついでに買い物にいってきますね!」
みんなでいただいた食器やカトラリーをちゃっちゃと洗いながらそういうと、イリーナさんは両手で顔を覆う。
「ありがとお~アリスさーん~」
おう、泣き声交じりだ。
これは来てよかった。
「イリーナおねーさんは、おしごとでおつかれなの、ねんねするの!」
メルツちゃんの言葉にわたしは頷く。
「とにかく、わたしたちが、買い出しして呼び鈴鳴らすまで寝てください。あと、いいわね? 家主が休めない状態だったら、このキッチンにいる奥さん、あんた、浄化しちゃうぞ?」
最後の一言を聞いた、ケイトリンさんとメルツちゃんがぎょっとする。
二人とも何それとか思ったんだろう。
イリーナさんは寝室に行ってしまって、聞いてないけど。
おっかしいと思ったんだよ。
仕事できるお姉さんのお部屋があまりにも荒れな件。
いるよ、この部屋。
「あ、あ、ありすさんっ?」
「い、いるの?」
ケイトリンさんとメルツちゃんが身を寄せ合って手をつないでる。
「いますわ。だからここが荒れてるんですわ。多分格安でギルドから借りてるんでしょ?
まったくもう、言ってくれたら浄化したのに。魂が留まったって、明るい未来はつかめないっつーの!」
お皿を洗い終わって、エプロンを外して、キッとキッチンの隅をにらみつけると、あ、消えた。祓っちゃった? 浄化魔法使ってないけど。イリーナさんに聞いときたかったけどまあいいか。静かな方がイリーナさん休めるもんね。
さ、行くわよ! 市場に‼
サンクレルの街はいつもより人がごった返していた。
市場に付くと、もう、お祝い大特価セールだ。
まるで野球のシリーズ優勝セール? いやいや、それよりも歳末大バーゲンか。
ケイトリンさんもわたしも、食料品やら日常雑貨なんかを買い込む。
こんなに人がいて、魅了スキルは大丈夫なのかって?
隠蔽アミュレット、忘れずにつけてますよ!
あとはどこの店も今、この瞬間が売り時とばかりにディスプレイも掛け声もすごい。
なんでもパレードの翌日も第二弾を開催されるっぽい。商魂たくましいわあ。
「メルツちゃん! 迷子にならないようにちゃんとくっついててね!」
「うん!」
買い物の荷物を持った人達の間をわたし達は手ぶら同然で通っていく。
ふっ、それもこれもアイテムバッグのおかげで身軽な感じなんですけど。
メルツちゃんはこんなに人が行きかうなんてと、目をキラキラさせてる。
まあ大人のテンションの高さにつられちゃうよね。
「アリス?」
市場でばったりライオネル叔父さんに会う。
「叔父さん!」
「お前、こんなところまで来て平気なのかよ!?」
「だってお店、しまっちゃうし、この間バーベキュー大会で食料大放出したから、買い物よ! これも身に着けてると、大丈夫」
「大丈夫じゃねえだろ! ごめんな、ケイトリンさん、俺の姪っ子が」
どういうこと?
わたしはケイトリンさんを見る。
「へんな輩が声をかけてこないようにケイトリンさんとメルツちゃんが、威嚇してくれてるんだよ、お前わかってないだろ!?」
は? そうなの?
わたしはケイトリンさんを見ると、ケイトリンさんは苦笑してる。
「そのアミュレットつけてたって、普通にちらちら視線集まってるのわかってねーのか!」
「だけど魅了スキル駄々洩れよりは抑えられてるの!」
ライオネル叔父さんは、はーっと溜息をつく。
そりゃ、ちょっとは見られてるなって感じはするけども、気にしたら負けなんですよ!
それに、ここんところずっと森の家に籠ってたから、やっぱり普通に解放感が違う!
でもやっぱり、そうだったんだ……。
以前イリーナさんとケイトリンさんと一緒に女子友お買い物会をした時も、わたしをセンターに両サイドお二人ががっちりガードしてくれていたんだね。
……ルイスさんの場合は、うん、魔法だろうな。
「ライオネル叔父さんこそ、どうしてここに!?」
「そりゃー下宿先の家主の代わりに買い物だよ」
ライオネル叔父さん、下宿してんだ……宿屋は高いもんね。
下宿先はイリーナさんの紹介らしい。
なんでも元冒険者で、やっぱり怪我で引退して、奥さんと一緒に宿屋をやろうと思ったらしいけど、元手が足りなくて、下宿をやってるお家らしい。
イリーナさん……そういうところを紹介するなら、なぜ一緒に暮らしませんかとか言わないのよ。
ねえ、どう思う? ケイトリンさん。
わたしはケイトリンさんを見ると、ケイトリンさんはわたしの言わんとするところを把握したように首を横に振る。
そうね、普通は、一緒に暮らしませんかとはならないね。
わたしみたいに、やらかした上に、緊急避難先を提示って感じと違うもんね。
ましてやちょっといいなと思ってる人と、いきなりがっつり距離つめるのはしない。
ごめんね、ざまあヒロインやっていた経験で、異性との距離感バグってるのはわたしの方ですよ。ええ。
でも、幽霊と一緒に暮らすぐらいなら、ちょっといいなと思ってる男と暮らせよと思うの。
「はっ! こうしてられないわ! 食品は買い込んだから、生活雑貨の買い込みに行かないと!」
「アリスさん買ったわね」
「イリーナさんの分も買わないと」
「イリーナさんがどうかしたのか?」
「この騒ぎでずっとギルドに缶詰で、今ようやく自宅に戻ったのよ」
「そうなのか……どこも仕事はハードだな」
叔父さんはしみじみ頷いたのだった。




