第65話 叔父さんと再会
メルツちゃんの武器製作は順調のように見えた。
ザイルさんとかシュルツさんギブソンさんの武器はかなり頑張って形になってきてるけれど、ルイスさんのロッドだけが素材も決まらないで、メルツちゃんは森の家の自分の部屋とか、部屋を降りたホール兼リビングとか作業小屋とか、庭とかで、頭を抱えてころころ転がってる。
ベビ犬ちゃん達はその様子をみて「遊ぶ? 遊ぶの?」な感じで、メルツちゃんの周りをちょこちょこしてる。
わたしといえば、先日サンクレルに買い物に行った時に購入した見本の服をベースにして型紙を起こして布を裁断してあとは縫い付けるだけの状態。
ブーツは革を使用したいので、これはルイスさんがお土産に持ってくる素材待ちだ。
なので庭の雑草を処理したり、家庭菜園での野菜なんかを収穫したり。
ドワーフのお爺様達がメルツちゃんを訪ねてきて、行き詰ってるメルツちゃんに「学校にちゃんと行くように」「朝の狩猟をルーチンとしていたら、それは続けて」「アリスさんやルイスがいう生活サイクルを守るうえで、ひらめきもでてくるから」なんて声をかけてくれたり。
「アリスおねーさんは、いつもとかわらないんだ」
「まあね~できることしかしないからね~」
「よし、メルツ、気分転換に狩猟してくる! ママちゃん行くよ!」
最近、狩猟もしてなかったメルツちゃんが弓矢を装備してママ犬ちゃんを誘う。
ママ犬ちゃんも嬉しそうでしっぽぶんぶん振っている。
「とりにく狩ってくるからね!」
「はーい、日が沈む前には帰ってくるのよ~」
「わかった~!」
ここに来た頃……学校に行く前はいつも森で狩猟してたから、ママちゃんも狩猟仲間がいて楽しそうだったけど、ここのところ、メルツちゃんの生活は忙しいので、一人で森の狩猟及びパトロールをしてた。
やっぱりこういう一緒におでかけはママちゃんでも嬉しいのだろう。
メルツちゃんとママちゃんを見送って、わたしは洗濯物を干したり、料理の常備菜を作ったり、水回りの掃除とか、作業小屋の掃除とかをしてみたりと家の中をあちこち移動して家事をしていたのだが……。
「アリスおねーさん!」
ぱーんとカウベルを鳴らして、玄関のドアを開けるメルツちゃん。
えらい! ちゃんと日が暮れる前に帰ってきたね!
「帰ってきた!」
「え?」
「ルイスししょー帰ってきた!」
「お?」
「『シー・ファング』の人たちといっしょ! もうすぐここにくる!」
「あら! じゃあごはんの支度はじめておいたほうがいいか! みなさんも食べてくよね?」
「メルツがそうして欲しいって言った! お泊りもする! お泊りしてもらって、ししょー以外の人の武器をちぇっくしてもらいたいの! メルツ、おとまりのおへやのじゅんびする!」
「お願いね!」
「はあい!」
元気なメルツちゃんの後をベビ犬ちゃんたちがはしゃぐようについていく。わたしもみなさんを迎えるための準備を慌ただしく始めた。
カウンターじゃなく、テーブルを二つつなぐ形にして、テーブルクロスをかける。
みんなでわいわいお話するなら、カウンターよりもこっちだと思う。
料理も、やっぱりお肉よね~おさかなもいいけど、お肉~。
アイテムバッグの中を見て、お料理の食材を確認しつつ、お料理開始だ。
洋食と和食でごちゃごちゃしてても、いいよね?
和食はきっとルイスさんが片づけてくれるはずだし。
時間のかかるものから下ごしらえして、隙間にサラダとか作る~。
わたしとメルツちゃんが慌ただしく支度を始めて、いつきても大丈夫な状態になると、まるで時間をはかったようにルイスさんが帰ってきた。
『シー・ファング』のみなさんも、一緒に。
そしてそれ以外の人物が一人いた……。
「アリス……?」
「叔父さん……?」
イリーナさんが言っていた、わたしの叔父と同じ名前の新人(だけど年齢はいってる)冒険者、ライオネル・ロックハート氏。
ルイスさん達と一緒に、この森の家にやってきた。
そしてご対面となったんだけど……。
うん、やっぱり叔父さんだ。
久しく会ってなかったけど、記憶にはある。
「なんでおじさん、サザランディア大陸にまできてるの?」
「お前を探しにに決まってるだろ」
いや、探されてもこまるんですけど?
ルイスさんや『シー・ファング』のみなさんは叔父と姪の感動の再会かと見守っていた様子だったけど、わたしも叔父さんも、かなりあっさりとした言葉の応酬してて、ぎょっとしていた。
いやいや、お気遣い無用なのですよ。
それよりもお料理食べて~冷めちゃうから~。
あ、その心配ご無用でしたね、視線がテーブルに出してあるお料理に釘付けだもんね。
お食事中、今回のクエストについて、ルイスさんをはじめ『シー・ファング』の人が話してくれた。
下層に潜っていたパーティーは一人、まず救援を呼ぶために、中層に戻って、そこに叔父さんにあったそうだ。叔父さんは近くのパーティーを集めて、上層階に連絡をさせて、残り救援の必要な下層に潜ったそうだ。
……ダンジョン初体験で中層突破して下層まで潜るとかどんだけだよ。
チートなのかな?
いえ、実績と経験によるものらしいです。
叔父さんが辺境に送られた経緯は国境線のモンスター撃退の為だったらしい。
腕に覚えありと上官に認められて辺境行きになった。
その頃、可愛い姪っ子アリスちゃん(わたし)を連れていくか悩んだけど、しっかりしてる子だし安全第一だしと思って教会に預けることにしたらしい。
そんでまさか教会からわたしを引き取って養子にしたいという養子縁組の手紙が教会から来て、返事としてはNOだったんだけど、相手が貴族も貴族、大貴族のドリアス公爵家だったわけよ。
教会からも上官からも、姪っ子の為にはいいかもしれんよ? とか説得されて、結局ほら、カネと権力にずぶずぶの教会と軍上層部が勝手にOK出して、わたしの養子縁組が決まって、あとはドリアス家の思惑――王太子殿下のハニトラ要因としてわたしをお貴族様の学園に放りこんだ。
そこで普通ならざまあヒロイン人生始まるはずだったんだけどね。
「だからって、まさか一人で国を飛び出てこんな別大陸にまで逃げ出すとは思わなかった」
強制力がきいて、ざまあされて死んじゃうと思ったからです。ごめんね。
「……なんでわたしが、ここにいるのがわかったの?」
「ユリシア様と王太子殿下から手紙をもらったんだ」
「あら~結婚した?」
「多分した。挙式前に俺は船の上だった」
見届けてほしかったわー。
まあ、あの二人が結婚したからって、ざまあヒロインの死亡フラグが消えるわけじゃないとは思うけど……。
「まあ元気そうで何よりだ」
「でも叔父さん、王国軍はどうしたの?」
「辞めてきた」
わー思いきりいいわね。
「俺の親族を勝手に養子縁組しちまうような軍とか変だろ」
「まあ、そうですね」
強制力のせいですけどね。
「それにしても、メルクーア大迷宮にいきなりソロで中層行って、下層で怪我した人の救援ってどんだけなの?」
「国境付近の仕事となんら変わらない」
……やだ、叔父さんチートなの?
「なんかそういう場所があるんだよ、あの国の辺境に。任務だって俺はそこに放り込まれたんだ。生還率がめちゃくちゃ低いところにな」
え、ダンジョンがあるんだ、あの国。
「養子縁組に文句言ったら、そういう任務を押し付けられてそれっきりよ。平民とはいえ、軍所属の保護者から了解を得ずに被保護者取り上げて養子縁組したなんて外聞悪いと思ったんじゃねえの? 口封じだろ」
こっわ!
「よく生きてたね」
「ある程度同じように、口封じで放り込まれた奴らと一緒だったからな」
「その皆さんは……ご無事で?」
「うん。今頃王家に報告入って綱紀粛正が始まるだろう。戴冠する王太子が黙ってねえはずだ」
「王子様、仕事できそうだったもんねー」
「そう、おまけに俺の姪っ子にも見向きもしねえのはえらいよ」
叔父さん、わたしの魅了スキルはわかってるのかな。わかってるのね。
「お姫様から手紙を預かってる」
お姫様? 手紙?
わたしは叔父さんから手紙を受け取る。
あ、これはユリシア様からだわ。
どれどれ~。
ユリシア様は悪役令嬢ポジションの転生者だけど、王子様とハッピーエンドを迎えてると思うけど、一体わたしにどんな伝言があるのかな?




