第63話 ルイスさん再びメルクーア大迷宮へ
学校以外はメルツちゃんは武器作成の為に作業小屋に入りっぱなし。
わたしも庭の門にクローズの札をおいて、お洋服を作成中。
もし、メルツちゃんがいなければ寝食忘れてミシンちゃんを動かしていたに違いない。
メルツちゃんはわたしよりも集中力がすごい、作業小屋で寝落ちとかやらかすのだ。
そんなこと、わたしがさせませんよ。
凝った料理はちょっとこの際なくなりますけども、そんな時はアイテムバッグに入ってる作り置きとか出したりしてね、なんとかごはんと睡眠と、お風呂は入ってもらうのよ!
そんなメルツちゃんのお世話をすることで、生活サイクルの乱れを防ぐ。
「そんなはりきってる二人に言いにくいけど、僕たち、再度メルクーア大迷宮に潜ることになったから」
ルイスさんの一言でぼとりとメルツちゃんはパンをカウンターに落とす。
メルツちゃん、別にダンジョンで使ってもらわなくてもいいから武器を作りたいとか言ってたのに……。
やっぱり子供だからなのか、自分の作った武器を持って行ってほしいとか思ったんだろうな。
「迷宮下層で帰還できないでいるパーティーの救出なんで、アタックではないから」
そういうことも依頼されるのね……。
なんでも帰還できないでいるのは別のクランのパーティーらしいけど、約一名だけが、上層階に戻ってきて、救援を頼んだらしいのだ。
とはいっても、中層を抜けて下層だし、手間はかかるかなということで、各クラン合同でパーティーが選出されて救助に向かうんだって。
そういう説明を受けてもしおしおとメルツちゃんはカウンターにつっぷす。
「じゃあ、ルイスさん、アンダーシャツなら人数分できてるので、持っていってください」
「うん。それは助かる」
その会話を聞いたメルツちゃんは足をバタバタさせた。
「メルツの作ったのも~、迷宮に持って行ってほしいの~」
……メルツちゃん、やっぱりそうだよね。
「別に近場の案件での装備でいいって、メルツちゃん最初言ってたでしょ?」
そう、メルツちゃんはそう最初言ってたけど――……。
「だってええええ、そざいがあ、あだまんたいととか! ひひいろかねなんだよ! メルツ作ったらさいきょうのぶきだよ!」
そうね、『シー・ファング』のみなさん、遠慮なく高級素材をポーンとメルツちゃんに差し出したもんね。
試しに差し出すにはちょっとどうかなってお値段の素材ですよ?
そりゃーメルツちゃん寝食忘れてしまうでしょうよ。ランスさんも週の半分は泊まり込んじゃうでしょうよ。
そんな二人だから、「生活サイクル乱すようなら、作業小屋に結界かけるよ?」とかわたしも言うわけで。
「メルツちゃん、やっつけで作った武器を持たせるわけにいかないでしょ!」
わたしがメッって言うと、メルツちゃんはカウンターに突っ伏して泣き出す。
「わあああん」
そこへカウベルのドアを鳴らしてはいってきたのは、ランスさんだった。
「メルツ!」
「ランスおじーちゃん」
「アリスさんの言う通りじゃ! 半端なモンを持たせてメルクーア大迷宮に潜らせるな!」
「う……」
「お前はまだ修行中なんじゃ!」
「おじーちゃん」
「アダマンタイトにヒヒイロカネじゃと!? わしでもここ二年は拝んでない素材だ!
ルイス、お前もそんな高級素材をこの子にポーンと渡すんもんじゃねえ!」
「大丈夫、今回の救助のついでにまた持ってくるから」
ランスさんはぱかーんと口を開けた。
うん。やっぱ大魔法使い、チートなんですね。
ファンタジーでも高級素材なのはまあわかるけど、それを救助のついでに拾ってくるとか普通はしないんだろう。
そんなちょっとそこらへん散歩してくるよ。みたいなノリでメルクーア大迷宮下層へ救助行くとかさ、ないからね。
「ランスさんと一緒に、メルツちゃんは頑張って作ってて。すぐに戻ってくるから」
「……あい」
しぶしぶ~な感じでメルツちゃんは返事する。
「ルイスよ救助は下層なんじゃろ?」
「大丈夫、一度行ったところですから」
ルイスさんはそういって、メルツちゃんの頭をぽんぽんと軽く手のひらで包む。
「ランスさんとアリスさんのいうことをちゃんと聞くんだよ?」
「あい……」
「終わったら、こんどはみんなでサンクレルの商業エリアに行こうね」
「ほんと!?」
「ほんと」
ルイスさんがそういうと、メルツちゃんのご機嫌は治ったようだ。
さすがパパ……。
「それとアリスさん」
「はい!」
「メルクーア大迷宮都市でちょっと気になる素材があるのを思い出した」
「素材?」
「スケルトンスパイダーの糸」
「え? 初耳素材」
「メルクーア大迷宮のお膝元だからね、モンスター素材は豊富なんだ。その加工も」
「ふぉおおおお」
「手に入れてくるから、縫製はしばらく待ってほしい」
そうよね、わたしの付与とそういう素材なら、いいもの作れそうよね!
「わかりました! デザイン画を起こすにとどめておきます!」
進めても型紙起こして裁断までにしておきますとも!
絶対それ手に入れて帰ってきて!
「メルツちゃんの健康、生活管理はお任せを! お父様!」
わたしがそういうと、ルイスさんが右手の親指と人差し指でわたしのほっぺたを掴む。
「だから、誰がお父さんだっていうのかな?」
わーん、ちょっとしたお茶目発言じゃないですかー!
そんなこんなで、数日後、サンクレルにいた『シー・ファング』のメンバーが、この森の家にやってきた。
ここでルイスさんと合流してメルクーア大迷宮に行くのだ。
「いってらっしゃい、ルイスせんせー……」
メルツちゃんはわたしに寄りかかりながら、心配そうにルイスさんを見上げてそう言う。
よっしゃ、ここはわたしの本領発揮で。
「パーティーの皆さまのご無事をお祈りしております」
指を組み合わせて祈りのポーズ。
わたしの様子を見て、メルツちゃんもまねっこをする。
4人はハッとする感じでわたしを見る。
みなさん、忘れてらっしゃるけど、わたし、一応プリーストなんですよ。
「神のご加護が皆様にありますように」
わたしは祈りのポーズを終えると皆さんをみる。
「すげえ、一瞬忘れてたわ」
「アリスさんプリーストぽかったわ」
「いつものエプロン姿なのに!」
「……元聖女の加護とか……それ、最下層アタックの時にやってほしかった……」
お祈りなんていつでもやりますよ!
「どうか皆さま、ご安全に! 行ってらっしゃい!」
わたしとメルツちゃんは手を振って、『シー・ファング』のみなさんを見送ったのだった。




