第61話 ルイスさんとサンクレルでお買い物
メルツちゃんの「こーでねーと」は可愛いっちゃ可愛いし、わたしも悪くはないとは思うよ? けどね、このサンクレルに来るなら、法衣服一択だったんじゃないかと思うわけよ。
ていうのも、ルイスさんの所属するクランハウスに出向いた時にそう感じたわ。
「あのルイスがめっちゃ可愛い女の子連れてる!!」
ってそりゃもう、大騒ぎよ。
ルイスさんモテるけど、女の子連れでクランハウス内を闊歩するなんてことしなかったそうで、パーティーメンバーのギブソンさん曰く。
「だいたいが鈴なりか、仕事の通達の為の職員がクランハウス内で呼び止めてって感じだからな~」
「へ~さすが~。わたしの魅了スキルさんとそうそう変わらないじゃないですかヤダー」
わたしがそう相槌打つとギブソンさんは大笑いですよ。
「わたしもね、この感じじゃ、法衣服着てくればよかったなって、思っちゃいました。メルツちゃんが張り切ってなんかお出かけ服を選んでくれたんで着てきちゃったけど。はい、サイズ計測これでみなさん終了です」
そんな雑談を交わしながら『シー・ファング』のみなさんのサイズを計測し終えたところだ。
三人のサイズを確認して、メモをアイテムバッグにしまう。
「でもいいの? 俺達の服も作ってもらうのって」
「料金後払いですけどちゃーんといただきますよ?」
「アリスさん、そいうところしっかりしてるよね」
「大丈夫大丈夫、これもわたしの裁縫スキルと付与魔法がどのぐらいかを計測する指針になるのでお知り合いお試し価格にしておきますから」
わたしがそう明るく伝えるが、ルイスさんが溜息をつく。
「まあ、とんでもない金額になりそうな予感するから、みんな覚悟しておいた方がいいと思うよ?」
例のアンダーシャツだけでも、とんでもないだろうとかぶつぶつ言ってる。
「それと、例のアリスさんの叔父さんの件、調べておいたぜ。そのライオネルさんって人は、現在メルクーア大迷宮に向かったそうだ。ダンジョンアタックをソロで開始するんだって」
あらやだ、おじさんボッチでダンジョン攻略ですか?
サンクレル周辺のモンスター討伐とかも偉い数こなして、なんでもあっという間にダンジョンアタックのランクまで上がったそうだ。
わたしがダンジョン攻略してると思ってるのかしら?
そんな危ないことしませんよ。
「ていうのも例のアリスさんの森の家の不審者をかなりの数、警備隊に突き出したのがいい報酬というか、盗賊とかも捕まえたらしくて、それでちょいちょいランクが上がったみたい。しばらくは静かになるんじゃね?」
「そうですね……でも結界魔法は続けますよ」
わたしがそう言うと、ルイスさんは何も言わないけど「油断しないことはいいこと」って感じで頷いてる。
もうやだーお父さんったら心配症なんだからー。
って言ったら絶対、うめぼしの刑か頬っぺたを指で挟まれて「お父さん言うな!」とか絶対やりそうだから言いませんけども!
そんなこんなでクランハウスを出て、商業エリアやってきました。
ルイスさん達御用達の洋品店さんにまずは突撃。
やっぱりルイスさんは有名人で、お店の店主が手揉み状態でご挨拶にやってきた。
まさか商売敵の針子随伴とは思うまい。
お得意四名様、わたしがいただきまあす。とか言ったらきっと店主にフルボッコされるに違いないよね。
四人の普段のダンジョンアタックする時の衣装を組み合わせて、頭の中で生地やカラー、デザインなんかを考える。
改めてやっぱトップランカーの人はお洒落だと思った。一応、四人分の衣装を買う。
見本にするの。
わたしがお財布を出そうとしたら、ルイスさんが払ってくれた。
店主はほくほくしてたけど、ごめんね~これがこの人達の買うものは最後かもしれないよ~普段着買いでくるかもしれないけれど~。
そして今度は商業エリアの布物問屋街に足を運び、製作分の布を入手!
ここでも、ルイスさんがお支払い。
「ルイスさん、そんな、わたし出します!」
「武器防具系の必要経費だからいいの。『蒼狼の風』だって、武器防具系は素材持ち込みだったでしょ?」
「で、でも! アンダーシャツはわたしの持ってた布で作ったし!」
「持ち前の綿でアレをつくるとか……とにかく今日は僕が払うよ。どこかの下町の奥さん方みたいに『いいの』『いいのよ、わたしが』とかやりたくないからね」
おう……。そうですか……。じゃあ、まあ、その、お言葉に甘えちゃおっかな。
はっ!
イケメンに奢ってもらったからって、強制力働かないよね!? 大丈夫だよね!?
ほら、一応ざまあされるヒロインだからさ~。攻略対象者からいろいろ買い物を奢ってもらう。なんてシチュエーションは過去に何度もあったからちょっぴり不安よ。
問屋街を出て今度は青空マーケットに!
新鮮な食材をゲットだぜ。
ミルクや卵、お肉も、モンスター肉じゃないやつも入手。お野菜も、うちの庭の家庭菜園でとれる以外の葉物や根菜類なんかは買っておかないとね!
「あ、ルイスさん、ちょっと、行きましょう!」
「どこへ?」
「ルイスさんが好きなの売ってるお店ですよ!」
「イースト・アイランドエリアの食材店?」
「そうです! コメみそ醤油、そしてルイスさんが財布を買ってでてくれたならば、ちょっとお高めのお酒とかも買えそうじゃないですか~」
「そういうことを口に出しちゃうのがアリスさんだよね、いいよ」
「やったあ!」
「しかし、そんな食材店、よく見つけたね」
「いや~さすがサンクレル商業エリアだと感心しましたよ。わたしの前いた大陸ではお目にかかったことはありませんでしたから!」
「僕もアリスさんが作るまでは、二度と食べることはないだろうと思ってた」
「……え?」
「イースト・アイランドエリア出身だったんだよ。僕」
「そうなの!?」
「そう、あんまりいい記憶はないけどね。ただ、空腹で食べたごはんが、ひたすらおいしかった思い出だ」
あ~。
イーストアイランドエリアって多分この世界だと日本みたいな感じだと思うんだわ。
肌の色も髪の色もだいたい同色じゃない?
そこにこの青銀髪と赤い瞳の人がいたら、そりゃ……倦厭されるだろうし、異端だわ。
鬼、悪魔、忌み子とか言われて迫害対象だったに違いない。
メルツちゃんみたいな感じだ。
エルフ至上主義の地域にいるドワーフの血を引く子だし、ルイスさんがメルツちゃんに甘いのは、かつての自分を守ってる感じなのかもしれないなあ……。
「それは苦労したでしょ」
わたしがそう言うと、ルイスさんは「なんでそんなにあの地方の造詣深いの?」みたいな顔をしている。
「神様の贖罪関連で、わたしは別の世界のそういうエリアに詳しいというか?」
「……だからか……」
「なので、作れちゃったりするんですよ、向こうのごはんを、材料さえあれば。じゃあ、あれだ! 新鮮魚介を買って刺身作りますか⁉ アジ刺しならいけますよ? アニサキス心配だけど、そこは浄化魔法でやっちゃいますから! 鯛も鱗めんどくさいけど、頑張れば下せますよ? ワサビ! ワサビ買いません?」
「……マジで詳しいんだね」
「刺身食べたあい! 刺身刺身~!! ルイスさん、こっちこっち~!」
ここじゃ魚は焼くか煮るか蒸す。火を通すのが定石で生食なんてしない。
だから、いっちょ冒険しましょう?
「ワサビはねえ……あれは取った瞬間から鮮度が落ちるからなあ……輸入してるかな」
「あ~それか~」
あちゃーとわたしは手のひらでおでこを抑える。
「じゃあ、じゃあ、お酒! いいお酒買いましょ!」
「アリスさん飲めないでしょ?」
「失礼な! これでも、一応成人してるんですよ、飲めますって!!」
わたしはルイスさんの腕をローブごと引っ張って、行きつけの多国籍食材店に向かって歩き出した。




