第58話 最終絶対防御アンダーシャツ
別にいつもバーベキューってわけではないのですよ?
ルイスさんが帰宅してからはちょっと自重してましたとも。だからドワーフのお爺様方はまってましたー! な感じで週末にやってきました。
『シー・ファング』や『蒼狼の風』のメンバーもやってきました。
イリーナさんは後から参加予定。ケイトリンさんはおデートなので不参加です。
「ランス、メルツちゃんが作った武器のメンテナンスだって?」
「メルクーア大迷宮の中層階を抜けたんだって?」
「やったなあ、おい! お前ら頑張ってたもんなー」
「これでAランク入りになったな!」
ご持参したエールの樽を開けて、シャムさん達を労う。
メルツちゃんもわたしが漬けたベリージュースを手ににっこにこしてる。
「ルイスせんせーがね、メルツのこと、頑張ったねってほめてくれたの!」
前回のメルツちゃんブチギレ事件を知る冒険者組は生温い視線をルイスさんに向ける。いや、それぐらいで勘弁してあげてください。ルイスさんは頑張りましたから。
自分の武器を作ってもらうことになったから。
魔法使いの武器ってワンドとかロッドとかスタッフだよねえ。
「メルツね、今度はルイスせんせーの武器をつくるんだよ!」
それを聞いた『シー・ファング』のパーティーメンバーと、ドワーフのお爺様……とくにランスさんが目をむいた。
「ルイスの武器を……作る……だと?」
「ルイスの魔力に耐えられる素材探すところから難しくねえか?」
「それな」
ランスさんを囲んで、ドワーフのお爺様達がざわめく。もちろんそこにはルイスさんを除く『シー・ファング』のみなさんもいる。
「メルツ」
「はい」
ランスさんの呼びかけに、メルツちゃんはもきゅもきゅと串肉をほおばりながら返事をする。
「ルイスの前に、とりあえず『蒼狼の風』のメンバーの武器装備のメンテナンスからだ」
「あい!」
メルツちゃんはシュタッと手を挙げて返事をする。
「とりあえず、腹八分目になったら作業小屋にいくぞ」
「あい!」
いつも「はい」なんだけど、口の中にお肉が入ってるから「あい」って返事になってるのがかわいい。
網に乗せる食材を用意したり、飲み物を用意したりしているので、シャムさん達はメンテナンスする武器や装備を作業小屋にもっていってもらった。
メルツちゃん……そのあとをてとてとついてくの。
わたしも手がすいたらブーツのメンテナンスとかもするよ。
とはいえ、ブーツは表面磨いて、中敷きを取り替えたり、スパイク部分をチェックしたりするだけ。あとわたしが作ったのは装備の下のアンダーシャツぐらいなんだ、これは新品を用意しましたよ。洗い替えで何枚も持っていてもいいじゃん?
なので、とりあえず、この場にいる人達にお給仕を。
そうやってたら、メルツちゃんがとことことやってきて、私のエプロンを引っ張る。
「アリスおねーさん」
「どうしたのメルツちゃん」
「作業小屋きて」
「え~」
「いいよいいよ、俺がやるから、行ってきてアリスさん」
「そ、そう? すみません、シュルツさん。お願いします」
Aランク冒険者にお任せしてもいいのだろうか……なんて若干思ったんだけど、お言葉に甘えてお任せして、とりあえずメルツちゃんと一緒に、作業小屋に行ってみた。
作業小屋には『蒼狼の風』のメンバーとランスさん、そしてメルツちゃんのお父さん、もとい、ルイスさんがいた。
「何があったんです? あ、アンダーシャツ? 破れてないですよね、一応洗い替え用に用意はしてありますよ」
中央の作業用テーブルに広がってるのはアンダーシャツだ。
ルイスさんが腕組みしてそのアンダーシャツに視線を落としている。
「アリスさん」
「はい」
「鑑定してみた? これ」
「……いえ、だって普通に下着の着替えと思って作ったんですよ?」
「うん……アリスさんならそう思って作ったよね」
え、何? わたしまた何かやらかしてます?
アンダーシャツを鑑定してみる。
時空神の贖罪を受けし元聖女が作った冒険者用アンダーシャツ
防汚☆☆
保温☆☆
通気性☆☆
速乾性☆☆
最終絶対防御☆☆☆☆☆
時空神の贖罪を受けし元聖女が知り合いの冒険者の無事を祈って作られた冒険者用のアンダーシャツ。
防具が破損しても、このアンダーシャツを傷つけることはできない。
……防具よりも防御力ガチガチのアンダーシャツ……って何?
効果がバグってるにもほどがあるんだけど?
ちなみにこのアンダーシャツはボイルさん用です。
重戦士だから、防具の胸当てなんかは、モンスターの攻撃を受けた感じで、結構ボロボロだったんだけど、アンダーシャツだけは、無事なんですよ。
「ボイルさんが言うには、中層階の最後の最後で、ダークネス・スコーピオンにエンカウントしたらしいんだよね」
中層階でも、かなりの強さのモンスターだそうな。4つの大ばさみを持っていて、伸縮変幻自在の猛毒を持つ尻尾が特徴。
そして甲殻がまた硬いらしい。この外殻は冒険者の装備素材にもなってるんだって。
戦闘中、開かれたハサミがボイルさんの屈強な身体を挟み込もうとしたんだけど、ボイルさんの防具も硬かったらしくて、モンスターの方が逆に驚いたらしい
そこで、ボイルさんは怯むことなく、メルツちゃんお手製トマホークで脳天を勝ち割って、倒したんだとか。
もちろん、ダークネス・スコーピオンの甲殻は、冒険者の防具にも使えるほどだから、普通のトマホークでそんなことは無理。
これはボイルさんの力がすごいんだろうとは思うけど……。
「本当に、助かったよ、アリスさん!」
「すごいよね! アリスおねーさんすごいよね!?」
ボイルさんとメルツちゃんはそう言うけど。
いやいや、倒したのはボイルさんの力だし、メルツちゃんの武器でしょ?
「いやーもー挟まれた時はこれで死ぬかと思ったけど。光ったからね」
「光ったね、火花バチバチみたいな感じで」
「その光であのサソリ、怯んだから!」
ボイルさんとダグラスさんとシャムさんが、当時の状況を思い出したのか興奮している。
「そ、そうですか……よくご無事で」
「ほんとそれな! 防具はサクッとハサミが入ったのに、最後の最後まで挟み切れなかったから、サソリの奴も驚いていたみたいだぞ!」
一見普通の綿素材のシャツなんだが……。
なんだよ、その付与効果……。
最終絶対防御……。
ドワーフのランスさんも、防具の裂傷具合で、何故このアンダーシャツが無事なのか首をかしげていて、わたしとルイスさんを見てる。
「ルイスさん、アリスさん、あんたら、コレがなんなのかわかってるのか? アリスさん、あんたこれ、なんか付与ついてるのか?」
ランスさんの言葉にどう答えていいのやら。
とりあえず、ダンジョン攻略最前線組パーティ・リーダーに話しかける。
「あの、ルイスさん」
「うん」
「わたし、普通に、冒険者用のアンダーシャツを作っただけです」
「……うん……、まあダンジョンアタックを無事に終えられるにこしたことはないから……たださ。鎧よりも防御力高いアンダーシャツとか聞いたことないし」
「ですよね」
「だけどこれは、まあ、本当にすごいよ、僕も欲しいし」
「え、作りますよ! そんなの!」
「よろしくお願いします」
ルイスさんからよろしくお願いしますとか言われたよ!
「そのアンダーシャツ、アリスさんの祈りを込めた付与がついてる」
ルイスさんの言葉に武器作製ドワーフのランスさんは頷く。
「効果は――最終絶対防御――」
ルイスさんの言葉に一瞬、作業小屋のみんなは沈黙した。




