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元聖女のざまあヒロイン、強制力から逃亡しスローライフをおくりたい!  作者: 翠川稜
 

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第51話 実は最近、不審者が多いんですよ。


 ここのところ、深夜から早朝にかけて訪問者が多い。

 特に男性。

 朝になると屍累々じゃないけどさ、聖域結界を突破できずに力尽きて行き倒れてる。

 初心者冒険者の迷い込みじゃない。盗賊なのかなとも思ったけど、遠目に見ても身なりはいいんだよね。

 どういうことなのか。

 朝の散歩(狩猟)でメルツちゃんもちょいちょい見かけたっていうの。


「たしかにいるけど、メルツがおいはらったよ」


 メルツちゃんと一緒に森に行くママちゃんが追い払ったらしい。


「ルイスせんせーはやく戻ってこないかなー」


 カウンターに座って足をぶらぶらさせながらメルツちゃんはつぶやく。

 上層階アンデッドエリア聖域化の検証っていうからさほど危険はないでしょうけれど、謎を究明するのに時間はかかりそうだよね。検証とかって。


「昼間はべビちゃんとアリスおねーさんしかいないから、メルツ心配。ルイスせんせーがいると安心なんだけどなー」


 え? まって、わたしが心配されちゃってるの? 

 そりゃメルツちゃんの戦闘力と比較したらゴミかもしれませんけど。

 こう見えても防御力ならそれなりなのよ?

 その証拠に聖域結界を突破された形跡はないでしょ?


「でも、メルツちゃん、わたしの聖域結界って、かなり強力なんですけどー」

「うん……でも、心配、アリスおねーさん、メルツ、学校のかえりに、ハンザおじーちゃんのところと冒険者ギルドに寄ってくるから、帰り遅くなるね!」

「ええ⁉」


 初級学校で学校帰りに立ち寄りっていいの? 大丈夫? 交通安全のアミュレットをしてるけど、逆にわたしが心配よ!

 ちょ、ちょ、メルツちゃーん!

 メルツちゃんは、よいしょと学校用のカバンを背負って、「行ってきまーす」と声を上げて出ていった。

 武器づくりに夢中になっちゃって学校のことをスポーンと忘れちゃう件といい、今回みたいな寄り道宣言といい、どうしよう、メルツちゃん反抗期なのかしら⁉ 結構自分のご意見を通すことがちょいちょいでてきた。

 学校の先生に連絡ノートで相談したけど、メルツちゃん学校生活は、楽しんでいるとか。

 年上の人達とよく一緒にいるから、メルツちゃんと同じ年齢から一歳二歳年齢が上の子相手だと、学習面では物足りなさを感じている様子。ディスカッションや実践授業においては、もっと年上の生徒と意欲的に取り組んでるらしい。

 そういった面での心配はしなくてもいいんだけどさ。

 ドワーフのお爺様方曰く「メルツは安心して生活できる状態だから、一緒にいるアリスさんに気を許してる証拠。別に反抗期ってほどでもなかろうよ、『こうするよああするよ』ってちゃんと意見を述べてやってるだろ、理由もある。心配することじゃない」って言ってたんだけど。そういうもんなのかしら……。

 とにかく家の周辺で不審人物をちょいちょい見かけるので、結界魔法について、復習しつつ実践でちょっとこの敷地周辺で魔法をかけてみよう。


 そしてメルツちゃん学校のお休みの日に、ハンザさん達ドワーフのお爺様方と、『シー・ファング』のシュルツさんとギブソンさん、武器作製を依頼してきた『蒼狼の風』のみなさんとイリーナさんがやってきた。

 これはまたまたバーベキューの日だな。

 いつものようにイリーナさんとバーベキューの準備をし始める。

 いつも、黙々と準備を手伝ってくれそうな『蒼狼の風』所属の猿獣人ボイルさんは、メルツちゃんとランスさんに引っ張られて、ただいま武器作製のため測定中なので、自由気ままで普段はべビ犬ちゃん達と戯れているシャムさんが率先して手伝ってくれた。


「聞きましたよ、メルツちゃんから。最近この近辺に不審者が出てるって」


 イリーナさんがそう言うとシャムさんとダグラスさんシュルツさんとギブソンさんは、「え⁉」っという表情でわたしの方を見る。


「ちょ、不審者って何?」

「最近出るんですよ。多分深夜にこの家に侵入しようと試みてると思います。でも盗賊にしては身なりがいいんですよね」

「そのことを、実はメルツちゃんから先日聞いたので、冒険者ギルドも管理してる物件なんで、一応、サンクレルの治安警備隊には連絡して見回りを強化するようお願いしておきました」


 シャムさんの慌てた感じの問いに、わたしとイリーナさんがそう答えた。


「あ~だからか~メルツちゃんが学校行くとき、警備隊の制服を着た人が門扉の前にいるのは」

「ねえ、ちょっと、アリスちゃん、のんき過ぎない? だってその不審者とかって、どうしてるの?」

「だいたい朝になると、この森の家を囲っているウッドフェンスの近くで行き倒れてて、いつの間にか姿を消してるから、多分逃げて行ったと思うのよね」

「……」

「……」

「この森の家は郊外だから、盗賊の心配もあるので、聖域結界を最初から強化してます」

「え~そうは言っても、ちょっと心配よ~! ねえ、『シー・ファング』さんも、リーダーのルイスさんはまだ、メルクーア大迷宮にいるの?」

「検証はそろそろ終わったって連絡が入ったからもうじき報告に戻ってくるはずなんだ」

 シュルツさんがそういうと。シャムさんは尻尾をゆらしながらため息をつく。

「ねえダグラス、心配だから、あたし、しばらくアリスちゃんのところにお泊りしたいわ」


 そうすると、わたし以外の冒険者の方とイリーナさんまでうんうんと頷く。


「あたしたちは今、メルツちゃんに武器作製のオーダーを入れてるからしばらくサンクレルにいるし。ルイスさんってまた戻ったらダンジョンアタック開始するんでしょ?」

「うーん、アイテムリストの報告が終わってから、クランマスターから指示があると思うんだけどね」

「なによも~そりゃアリスちゃんのアミュレットでやらかしちゃったけど、ルイスさんがここにいてくれれば防犯は強化されるのに~!」


 え……まって、そういう意味でルイスさん、この家にくることOKしたの?

 良い人すぎない⁉

 ていうかここにいる皆さん、もしかして、「いくら聖域結界が使えても、こんな郊外に女子二人、そのうち一人はまだまだ幼い子だし、何かあったら冒険者ギルドや、知ってて放置してた自分たちの責任」とか思われて、みなさん協力してくれたってことなのかな⁉

 だからあのやらかしたアミュレット騒動にかこつけて、ルイスさんがここに転がり込んできた⁉

 あら……考えれば考えるほど、腑に落ちてしまう。

 こうしてみんなが集まってくれるのも……ドワーフのお爺様方も……そういう心配をしてくれてたってこと?

 別にルイス師匠……じゃなくてルイスさんは……きっともう魔力は取り戻してるから……ここにいなくても、本当ならサンクレルのクランハウスに戻っても問題ない。

 そういや、今回のメルクーア大迷宮の上層階アンデッドエリアの検証なんて、別にルイスさんじゃなくてもクランの別パーティーが検証しても問題ないぐらいだってイリーナさんも言ってたことある。

 ルイスさん、孤高の魔法使いっぽいところもあるから、この森の家での生活が面倒くさかったのかも……。

 わたしもメルツちゃんも、慣れ慣れしかったのかな……。

 なんかそう考えると、へこむわ。


「いや、その、別にそこまでみなさん、気を遣っていただかなくても大丈夫ですよ。わたしの結界はかなり強力ですし、その証拠に不審者も結局はこの家まで入り込めてないじゃないですかーははは」


 ルイスさんが戻ってきたら、クランハウスに戻るように言おう。

 あのアミュレットのせいで、ルイスさんの周辺をひっかきまわしちゃって、それまでの平穏な生活をなくしてしまったのかもしれない。

 もう、アミュレットは全部回収されたし、クランハウス内もきっと落ち着いてるはずだし。


 そう思うと、目を眇めて困ったようにやさしく笑うルイスさんを思い出して、メルツちゃんじゃないけど、素直に寂しい気持ちになってしまったのだった。



子爵家当主の人気すげえ……。この話も応援してくださるとうれしいm(__)m

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