第50話 武器に付与魔法を付けてみた。
付与魔法について、ここのところ勉強してます。
何に付与をするかっていうと、やっぱり武器。
サザランディア大陸一のダンジョン――メルクーア大迷宮のすぐ近く。
冒険者用の武器防具っていうのは、売買価格が安定している需要のあるアイテムだ。
以前、メルツちゃんに付与のついた武器防具作ってほしいなんて、商業ギルドの新人が言ってきたことがあったじゃない? ハンザさんもランスさんもわたしも、ギルドに物申すってやった件。
後日、ドワーフのお爺様方が森の家にやってきて何回めかのバーベキュー開催してるときに、
「あの時は、ああ言ったが、メルツの作る武器とか防具はすぐにでも売れる」と
武器職人ドワーフのランスさんが語りだして、そこからまたドワーフのお爺様方がメルツちゃんの作った武器を実際に触れてわいわいと評価したりして……まとめると、「商品として申し分ないのに売れないのはもったいない」っていうことに。
で、言っちゃったのよ。
「わたしが付与魔法を武器にかければ、わたしの作品として売ることはできるのかな?」
不具合においても責任はわたしにある状態ならば、どうだろうか? って思ったんだよね。
恋のアミュレットで不具合回収っていう痛い目を見たのに、なんでそれをやるんだよと、ルイスさんがいたら言うかもしれないけどさー。
お爺様方のお話を聞いてるとね。
確かにそれはそうだとか思っちゃったんだもん。
メルツちゃんも炉とか窯とかあればさ~作りたくなっちゃうらしいのよね。
最初は早朝のお散歩(という名目の狩猟)の時に携帯する矢の方を作っていたんだけど、だんだん物足りなくなって、短剣とか打ち始めて、最近は長剣がメルツちゃんの中でマイブームらしい。
「ケイトリンさんに、練習用木剣を作ったら、同じ形の剣を作ってみたいから」
という理由なの。
ハンザさんと一緒に来たケイトリンさん(もちろん彼氏のエドアルさんも一緒だよ)は、嬉しいのと恐縮なのとがないまぜになった感じ。
はは、そんなに恐縮しないでいいよ。
実験だから。そして不具合が出ても、恨みっこなしよ。
ケイトリンさんは遊撃なんだよね。持ち前の俊敏さを活かして細くて軽量な剣を武器として使用してる。
「そういった場合は切るより、突くっていう感じの剣ですよね?」
「はい、雑魚モンスターなら、急所一突きで仕留められる感じですね」
やっぱり女性だし軽量化された剣の方がいいよね。
剣のサイズやら柄のサイズやら、あとは持ちやすさ、グリップの感じとかも、メルツちゃんは確認して、ランスさんを交えて、使用者であるケイトリンさんと話し合う。
「ケイトリンおねーさんに、使ってもらうから、メルツ、気合入れるよ!」
今までメルツちゃんが作ったのは小刀とか短剣とか弓矢……あとは包丁だったりする。
「なんとな~く、自分が使いやすいものを~こんな感じ~」そんな感覚で作ったものが多かった。
今回のケイトリンさんの剣は、ケイトリンさんの手のサイズ、握力や、振り切る速度とか、綿密な計算の上で作製するそうで。
「それってまるで、オーダーメイドじゃないですか!」
測定中に何度もそんな叫び声をあげていた。
ケイトリンさんは別に新人冒険者ってわけでもないけど、オーダーメイドなんてもっとベテランになってから……そう思ってもおかしくない。
「何、あと二年、三年すれば、今お前さんが使ってるのは物足りなくなるだろうよ」
ランスさんはそう言う。
「それはそうかもしれませんが、え~!」
「いいの、作るのはメルツだから」
メルツちゃんもそう言って黙々と材料の重さを測る。
ケイトリンさんはわたしを見る。
「そして付与がのるかどうかは神のみぞ知るだから」
今回の剣作製はそこが目的だから。
わたしが一から作らなくても、付与魔法がかけられるか――の実験だからね。
「でも、なんか悪いですよ!」
「悪くないよ。ダンジョンは危険なんだから、エドアルさんも、ケイトリンさんには無事に戻ってほしいでしょ?」
「それは、もちろんっす」
「これでしばらくは、わたしも、この剣の代金の代わりに、ケイトリンさんにサンクレルにお買い物に行ってもらうという口実ができるわけですよ」
「おかしいでしょ? そんなお遣いのお駄賃にあげるよ~の感覚ですか⁉ 全然価値が違いますからね⁉」
そうは言うけどさ~わたし自身が作らなくても付与魔法がつけられたら、もうそれだけでお商売になるのよ。
例えばランスさんが作った武器に付与魔法を付けられるよってなったらすごい、収入になる。
もう武器といえばサンクレルで三本の指に入るぐらいの匠ですよ?
その人の武器にバフを掛けてさらに強化できるとなったら、ダンジョン攻略する冒険者の人にとってはいいことだよね?
そうなるためにいろいろと試さないといけないっていうのが、今の現状だから。
ケイトリンさんがそんなあわわする必要ないと思うんだけどな。
「子供が作った武器にへっぽこプリーストが付与かけたと思ってください」
そして武器が出来上がりました。
「いいのかしら……ほんとうに」
「無事に使えるかどうかはケイトリンさんの実戦次第なので」
剣の飾り房がわたしの自作で、その飾り房を付けることで剣にバフを掛けた状態に……一応鑑定では、付与効果、刺突力2倍。俊敏性2倍、になってる。
「それにほら、今までの剣のほうが相性がいいってこともありますし」
「それはあるな」
ランスさんもうんうんと頷く。
「えっと、じゃ、じゃあ、次回のダンジョン引率の時にでも使ってみますね」
「そうだな、いきなり本格的な攻略での使用はしない方がいいだろうな」
「ケイトリンおねーさん、がんばってー!」
メルツちゃんも無邪気に声をかける。
その無邪気さにケイトリンさんも気を取り直して、数日後、ダンジョン引率クエストを引き受けてメルクーア大迷宮に向かった。
数週間後、ケイトリンさんの第一声は。
「いい剣でした……刺突も問題ないです。ただ……」
「ただ?」
「アンデッドがやっぱりでてきませんでした」
「そっか……」
後日、この話を聞いた『蒼狼の風』のみなさんがやってきて。
「ぜひ武器を作ってくれ、俺達は中層階のアンデッドエリアで常に苦戦する」
とメルツちゃんとわたしに依頼してきたのでした。
もちろんメルツちゃんはうっきうきでランスお爺さんと工房に籠ってしまって、わたしは「学校行かないとだめだからね!」とメルツちゃんを珍しく窘めることになったのだった。
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