第48話 今日のお昼は具沢山おにぎり!
「あ、あの、アリスさん……その、もう、そこらへんで」
タリスさんがガクガク震えている。
タリスさん、今日は状態異常防止の指輪してるけど、その指輪に嵌められている魔石がピシピシ音を立ててひび割れ始めている。
そうよね、わたしの魅了スキルの被害が及ばない様に、そういったの身に着けるようアドバイスでも貰ったのかな?
自己防衛はまあ必須よね。
女性冒険者の方は攻撃的な雰囲気はもうなくなっていて、しくしく泣き始める。
「こちらの方のアミュレットを差し上げましょう。あなたのゆくその道を守るように(物理)祈りを込めました」
わたしは交通安全のアミュレットを女性冒険者にそっと渡す。
彼女は手渡されたアミュレットを大事そうに受け取る。
魅了スキルさんが効いてなければ「ちょ、何渡してくれてんのよ⁉ ふざけんなこのクソアマ!!」と交通安全のアミュレットをぶん投げられて罵倒されているところだろう。
がっつり魅了スキルさんの効果がかかっているこの状態、これでしばらくはわたしに対して攻撃性が落ちるハズ。
「慈愛と誇りをもって、冒険者として邁進してください。わたしもお祈りしております。あなたのゆく道に祝福を――……」
「ありがとう……ありがとうございます……」
彼女がむせび泣き始めた。よし、完了!
「タリスさん、彼女を送ってさしあげてください。お仕事のお話はまた後日」
「はいいぃい」
あ、タリスさん指輪必死で抑えてるわ。でもその指輪もう、半壊というか全壊まであとちょっとだからわたしの近くから早めの撤収をお勧めするよ。
タリスさんに宥めすかされながらこの森を去っていく女性冒険者の後ろ姿を見送って、わたしは呟く。
「ふう~いい仕事したあ~」
まあね、転生人生で必ずわたしと一緒について回ってきた魅了スキルさん。
ここらへんで一発、本領発揮してほしかったわけよ。
「やりすぎでしょう」
背後から声がしてぎょっとする。
あわわ、もういいですよ、魅了スキルさん。
あわてて背後に振り返ると、ルイスさんが立っていた。
やっぱあの人の声が響いてたか! あと、べビ犬ちゃん達ね……遊んでもらいたいってハイテンションではしゃいでたから。
お? イイ感じに引っ込んでるね魅了スキルさん。
これはやっぱりルイスさんのレジストのせいかも! さっすがあ大魔法使い様!
にしてもどこの場面からわたしの背後に?
悪戯した子供を窘める前のような溜息をついてらっしゃる。
「でもありがとうございます」
瞳を眇めて微笑むルイスさん。
「はは、やっちゃいました。いやーしかし、恋する乙女の暴走はすごいですよねえ……本当にご迷惑おかけしました」
「頭痛はする?」
「いえ、大丈夫です」
え~ルイスさん、魅了スキルと鑑定スキル連動中の頭痛のこと、覚えてたんだ。
やっぱり魔法使いの人って記憶力いいんだな。
「そろそろお昼を用意しますね」
今日はメルツちゃんのお弁当に入れたおにぎりをたくさん作ったので、それなのです。
香の物の代わりにきゅうりのピクルスを用意して、あとは野菜もりもりのイワシのつみれ汁。
つみれは一度にたくさん作って、食料用アイテムバッグに保管してるのだ。
アイテムバッグは冷蔵庫いらず。付与した時間停止がいい仕事するわ。
「ちょっとうるさかったでしょ、ルイスさんのお仕事は捗りました?」
ルイスさんは前回ダンジョンに潜った時に回収したアイテムのリストや、階層ごとの状態の報告書なんかを作成してる。
アイテムの数が大量なので、リスト作成とかアイテムの現物整理に時間がかかるらしい。
お疲れ様です。
大きなクランの最前線攻略組だから、情報なんかもお金になるので、かなり詳しい報告書を作成しなければならないらしい。
後続の冒険者の人の安全も兼ねてるからって。
「冒険者って、ただ潜ってアイテム回収して冒険者ギルドに売りに出せばいいと思ってたんですけど……」
「うーん……第一層から第五層あたりまで潜る冒険者は、アリスさんのいうそういう状態かな」
「どのくらいのアイテムを今整理されてるんですか?」
「今回は645」
「え?」
「645アイテムの整理、僕達のパーティー4で割った数。ザイルもシュルツもギブソンも今頃同じ作業してるよ」
ちょっとまて、645×4のアイテムをルイスさん達のパーティーが回収したってことなの⁉
何この人、最前線攻略でそんな数のアイテム回収できるもんなの?
なんか、さっき、魅了スキルさんでヒャッハーな全能感だったけど、世界は広い……。
大迷宮最前線攻略組って、伊達じゃないんだわ……。
わたしの魅了スキルさんが大人しくなるはずですわ。
「ところで、さっき、わたしてたアミュレットは?」
「あーあれ、交通安全のお護りです」
「こうつうあんぜん?」
「うーんと、メルツちゃんの通学の時に危険が及ばないようにするために作ったヤツですよ」
「ああ……メルツちゃんが、他所の子の保護者が欲しいって言ってた……」
「うちからサンクレルまで、モンスターとか出くわさないようにとか、そんな感じの軽いやつです」
「浄化付きではあるのか……」
「軽いやつです! ほんとうです!!」
「わかったわかった。今日のお昼はなあに?」
なのにこうやって、お昼の献立をきいてくるルイスさんが、なんか小さい子みたいだ。
まるでメルツちゃんみたいに。
まあ、メルツちゃんもいろいろと、年齢の割にはなんでもできる子なんだけど。
容姿的には似てないのに、雰囲気が似てる不思議。
屋根のある例のお昼寝ベッドでルイスさんがたまーにお昼寝してる時に、横にメルツちゃんもお昼寝してたことがあって「何だこの二人は、親子か」と思ったものよ。
「お昼は、具だくさんおにぎりと、具だくさんつみれのお味噌汁です! おにぎりはなんていうか~メルツちゃんのお弁当と一緒に作っちゃったので! はは、ルイスさんがきた当初より手抜きになっちゃってすみません~」
「ううん、全然。イースト・アイランドの料理自体が珍しいから楽しみだな……」
「よかった! じゃ、支度しますね!!」
べビ犬ちゃん達もはしゃぎながらわたしの後にくっついてくる。
わかってますよ~キミ達の分も用意しますよ~。
活動報告まで見てない方にお知らせ。
作者の「転生令嬢は悪名高い子爵家当主」こちらのコミカライズ、昨日配信されました。
ぜひ、よろしくお願いしますm(__)m
そしてPC壊れました……更新遅れます……頑張るけど……。




