第41話 クレーム入りました。
ケイトリンさんに渡した『恋のアミュレット』これは無事に効果発動して、ケイトリンさんとエドアルさんはめでたくお付き合いすることになったそうです。
よかったね。
まったく長く拗らせた幼馴染み関係とかどうなのよ、はよ告白しろと声を大にして言いたかった……。
別にアミュレットなしでもケイトリンさんが真剣に告白すれば丸く収まった気がしないでもない。
でも、エドアルさんがわたしの魅了スキルにかかってる不安要素があったから、あの『恋のアミュレット』を作ってみたんだけどさ。
そして何点か同じのを作って、ケイトリンさんに商業ギルドへ持って行ってもらった。
「アリスさん効果各種の『アミュレット』の増産お願いします」
商業ギルドのタリスさんが直々にこの森の家までやってきた。
なんでも、冒険者ギルドの売店に卸してたアミュレットが密かに売れ始めていて、需要と供給が間に合わず、けっこうなお値段になって金額みたら……ふぁ!? と声をあげていた。
「タリスさん…これ金額一桁違わない?」
「違いません。アリスさんの製作物は少数生産なので、かなり希少価値あがってきて、高額設定となりました。この値段で問題ありません」
「増産っていっても手工業ですよ、いきなり量産できませんよ、付与効果が」
「ですよねえ……でも、他の商品よりも、こちらをメインに進めてもらいたいんですよ」
「はあ……値上がりしたのに、売れるんですか……」
「メルクーア大迷宮の上層階のアンデットエリアが聖域化してるんで」
「は?」
「グランド・カーラント所属のパーティーが検証中ですが、そういう結果出てます」
「ええええええ⁉」
「ハイポーション並みの回復効果のアミュレットのようで……」
「え、で、でも、そんなお値段高くしちゃったら、うちで売れなくなっちゃう」
ここは新人冒険者が気軽に立ち寄る休憩所及び、なんか売ってるよ~なお店形態だから、あんまり高額商品置きたくないんですよ。
お茶だけ出すんじゃ淋しいので、お土産物屋みたいに、自分の製作物を展示販売する形態に落ち着いて、大きさも値段も気軽に購入できるアミュレットは場所もとらないし見栄えもいいし、推したい商品なんだけど。
そんな単価高くなったら、新人冒険者のお財布には大ダメージよ!
「売れますよ、いま口コミで広がってるんで、徐々にベテラン冒険者も立ち寄るようになります。あと、この巾着ポーチ、これも人気で」
『うさぎの足跡亭』にいた女将さんや、よくしてくれた冒険者のお姉さんに餞別したあの巾着袋。
小さいけどアイテムバッグ仕様だからタリスさんがちょい高めの値段設定にしてくれちゃったんだよね。
「主に女性に人気なんですよ、このサイズなのにかなりのメイク道具が入るって」
贅沢な使い方だな。いやまて、女子には必須?
このサンクレル、メイク商品豊富なんだよね~。
それだけじゃない。
食品、化粧品、雑貨、という消耗品から、工業品。
芸術文化……これはまあ今混沌としてる感じだけど、通信系なんかはハイテク。
アルバイトしていたパン屋さんや、今、目の前にいるタリスさんも、前世で見たタブレットみたいな魔導ボードを使いこなしてる。
サンクレルの識字率が高いのは、こういう環境だからなのよ。
「そっか……ミニ巾着カラーバリエーションを変えて展開してみようかな」
「それいいと思います。女性受けしますよ。あとアミュレットも、本当にお願いします」
「付与効果は今のところは回復と浄化ですけど、あと『恋のアミュレット』はどうします?」
「それ……『恋のアミュレット』これは……そんなに増やさなくていいです……」
「なんで?」
「それを装着して一定数のモテる人に告白するととんでもないことになる。被害者が今でていて……」
被害者!?
何それ!!
「多分、近いうちにアリスさんにクレーム入りますよ。本人がメチャクチャ怒ってました」
「え、あ、わ、わたしが作ったってわからないですよね⁉」
「わかる人はわかるんですよ。効果はいいし、破格の値段にしてもやっぱり冒険者でお金持ってる人は買っちゃうし……幸いなのは、男性が購入して身に着けても効果発動しないことでしょうか」
あああああああ。
わたしは頭を抱える。
商品として販売したら男性が購入すること考えてなかった。
でもわたし自身が魅了スキルさんがどう動くか知ってるので、無意識で男性には効果でないようになっていたのは不幸中の幸いか。
片想いの女の子があのアミュレットを身に着けて、ドキドキしながら告白するっていうイメージを強く持っていたから、男性に効果発動しなかったのか……ふう、セーフセーフ。
ほっとしていたら、店舗の玄関口に魔法陣が浮かび上がる。
タリスさんにもその魔法陣が見えてるらしい。
魔力による術は視覚化されやすい。使用者の魔力が多かったりすると特にね。
「あ、さっそくクレームの人が来た」
「えぇ!?」
「あの『恋のアミュレット』でかなりの人数から告白された人ですよ」
転移魔法を使用してクレームとか、こっわ!!
――……って思ってたら……あ、うん、納得した。
魔法使いが着用するローブも、めっちゃ仕立て良さそうな……銀髪に、赤い瞳の――見慣れたイケメン……。
「アリスさんっっ!! キミは一体、何を作ってくれちゃったの⁉」
開口一番のその声は紛れもなくルイス師匠でした。
「師匠、お帰りなさい……」
「キミを弟子にした覚えはないし、弟子だったとしても破門!!」
あーうん……そうだね、ルイス師匠なら何人にも告られるよね?
しかもわたしの作ったアミュレットは無効化できそうだよね……。
メルクーア大迷宮都市のダンジョン、最奥を攻略してたんじゃなかったのかな……。
「一昨日、サンクレルに戻ったんだよ! なんだよ、あのアミュレットふざけんな!」
激オコぷんぷん……ふざけてないもん……。
幼馴染みとの関係をなんとか進展させたがってる女の子の肩を押しただけだもん……。
「ねえちょっと、しおらし気にしても、あのアミュレットは凶悪だからね!」
「師匠なら無効化できるじゃん!」
「ダンジョンアタック直後で魔力が残りあとちょっとの状態で、よくレジストできたと自分を褒めたい気分ですが?」
「……おう……」
「あと二人でもアレつけて僕の前に現れてたら、食われてた!」
「……師匠……食われるって……食われちゃだめって……」
「何?」
「やっぱ、魔法使いって童貞がなる――」
巫女や聖女が処女みたいな――。
「ほう……魅了スキルの恐怖を自身でわかってるはずなのに、言う事それか! 試すか⁉ そうだな、それがいいな!」
両肩をがっしりその両手で掴まれて、赤い瞳がわたしの顔を映す。
魅了スキル持ちのわたし並に目力が強っ!!
師匠も実は魅了スキル持ってると違うの? だからモテモテと違うの?
「た、た、試すって……」
「一発ヤって、僕の魔力がどうなるか、ていうか、キミの聖女の力が消えるならそっちの方がいいのかもよ⁉」
紳士なはずの魔法使い様が!! なんかとんでもないこと言ってるよ!!
「嘘です! 冗談ですよ!! ぎゃー!! 師匠!!」
「他に言う事は⁉」
顔近い!! いや、イケメンだからいいけども、いや、よくない、よくないよ!
「わあああん! お帰りなさーい!! ごめんなさーい!!」




