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元聖女のざまあヒロイン、強制力から逃亡しスローライフをおくりたい!  作者: 翠川稜
 

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第40話 恋のアミュレット



「無意識に発動する魅了スキルは、人を寄せ付ける。まだゴーストの方がましよ、怖いのはゴーストより人間だって言いたくもなるんだからね! 隙を見せたらうっかりどこかに連れこまれてヤられるかもしれない恐怖とか、ケイトリンさんには想像つかないわよね?」


 ケイトリンさんはギョっとしてわたしを見る。

 これは事実だ。

 そうならないために、魅了スキルはさらに力を発揮し、相手を軽い洗脳状態にまで持っていく――わたしの言葉を絶対にさせて、相手をわたしの言いなりにさせる。


「これでもこのサザランディア大陸にやってきて、なんとか制御できるようになってきてるけど――……影響がでるようならちょっとハンザさんに相談しておく、エドアルさんの恋人に誤解されたからなるべく近づかせないでって」

「ちょ! こ、こ、恋人じゃな……い」

「付き合ってるからここまで来たんでしょ?」


 ケイトリンさんはもじもじしてる。


「ケイトリンさんとエドアルさんってお付き合いしてるんじゃないの?」

「お、幼馴染みで……」


 幼馴染み……。

 彼女じゃないのかーい!?


「エドが最近浮かれちゃって、あとなんか最近モテちゃって……だけど、エドはその、自分がモテ期がきてるのわかってないみたいで、あたしともいつもみたいに接してはくれてるんだけど、なんかちょいちょいアリスって人のことを話題にしてるし……あたしは、ずっとその……」


 片想いってやつですか……。

 でもこうやってわたしのところに突撃してくる行動力……。

 いつも思うんだけど、こうなる思考の人ってよくわからない。

 まずは相手に気持ちを伝えて、そこからでしょうよ。


「なんで告白しないの?」


「だ、だって、エドから『ごめん、ただの幼馴染みだと思ってた。オレには好きな人がいるんだ』って言葉聞きたくないのよ!」


 うーん……恋する乙女のそういう思考か……。

 わたしの魅了スキルの影響があるなら、ケイトリンさんが予想する言葉も言いそうな気はするんだよねえ。

 これはわたしの自惚れとかじゃなくて、純粋に魅了スキルさんならやりかねないなという経験上からの予測なんだけど。


「運よく、この森の家に引っ込んでいたから、そういう恋愛系のお話、遠ざかってくれてると思ったんだけどな――」


 わたしは額に手をあてて溜息をつく。

 魅了スキルさん、やっぱりアナタ最強で最凶ですわ。

 魅了スキルと鑑定スキル(パラメーター)の表示音も抑えられて、頭痛もしなかったから、これ幸いとメルツちゃんの送り迎えついでに気軽に街に出かけていたけど、これは暫く控えないとダメだな。

 別にこの森の家で引きこもりすること自体は、苦でもないんだけど。


「ケイトリンさんのお話はわかりました。なるべくこの家から出ないようにわたしも気を付けます」

「え?」

「買い出しとか商売とかそういうのがちょっと不便になるけど、冒険者ギルドから商業ギルドの方にも連絡しておくし、やっぱりハンザさんにも伝えておくわ。それでいい?」

「え、で、でも」

「冒険者ギルドからの依頼があっても断るから」

「そしたら、アリスさんが生活が苦しくなるんじゃない⁉」

「言ったでしょ、この魅了スキル『モテモテで困っちゃう~』のレベルじゃないから。わたし自身の安全の為でもあるし、こればっかりは仕方ないのよ。むしろケイトリンさんがこうして直談判してくれなければ、気がつかないで、もっとひどいことになる可能性もあったし、逆にありがとうございます。徹夜までしてくれて」


 幼馴染に近づく性悪女を糾弾する為に、徹夜するとかガッツあるわ。

 片想いの恋の力か。

 恋か……。

 はっ! 閃いた!!


「ケイトリンさん!」

「はい?」

「徹夜だったし、疲れてるでしょ? ここの窓ぎわのソファで休んでいって!」

「帰る時には声かけてくれればいいから!!」

「え?」

「はいはいはい、体力回復して!」

「ちょ、ちょっといいわよ」

「いやいやいや、わたし、ケイトリンさんに渡しておきたいものができた! だからその間は休んでいて! ね! お願い!」

「で、でも」

「これからまた引きこもり生活になるんだから、外の人に頼んでおきたいことがあるから!」


 わたしがそういうと、ケイトリンさんは「まあ、そう言うなら……」ってことで、うちの常連さんがお気に入りの窓際の大きなソファに移動してくれた。

 膝かけを渡して、わたしは急いで仕事部屋に戻る。


 自作のチェストにしまってる綺麗に輝くガラスや石なんかを漁ってちょうどいい大きさの石を手にする。

 ほんのりピンクの石。

 これだあ!

 ケイトリンさんは冒険者だから、ブローチタイプの方がいいかな。

 付与魔法をかけて~前々前世のご機嫌なラブソングのフレーズを鼻歌交じりでアミュレットを製作中。

 ちょっとカワイイ花のモチーフの台座に石を嵌め込む。

 で作れました!


 ぱぱーん


 時空神の贖罪を受けし元聖女が作った恋愛成就のアミュレット。

 元聖女の魅了スキル解除の補助。

 身に着けて片想いの相手に告白すると高確率で恋が叶う。


 魅了☆☆

 勇気☆☆

 恋愛スキル上昇☆☆


 魅了スキルが解除の補助か……完全解除まで道のりは遠い。

 わたしの魅了スキルが強力すぎるからな……。

 解除の補助っていうのは、告白を真剣にきいてくれるという効果。

 もしこれが上手くいけば……。

 確実に恋のアミュレットが人気商品になりそうじゃない?

 女子はこういうの好きだと思うの。

 アミュレット自体に魅了スキルが付与してるから、告白する人の魅了は増量。

 告白を受ける人は、ちゃんと告白を聞いてくれる。

 見た目も可愛い!

 これをケイトリンさんに渡して、告白してもらおう。

 ただ惜しいのは高確率で恋が叶うっていうところよね。

 はっきりした数字が出てればよかったんだけど……。

 わたしはるんるん気分で足取り軽く階段を下りて、店舗スペースの窓ぎわの大きなソファで眠ってるケイトリンさんの目が覚めるのを待った。

 そして目が覚めたケイトリンさんにアミュレットを渡す。


「これを身に着けて、エドアルさんに告ってきなさい」


 わたしがそう言うと、ケイトリンさんはあわあわとしている。


「告ってきなさい。朝食の代金の代わりに」

「な、そんなの払うわよ!」

「幼馴染みで長いこと拗らせてるんだから、ケリをつけてきなさい。「でも」とか「だって」とかなしよ? 結界張られたこの森の家に入れなかったぐらいにはわたしに敵意ばりばりだったんだからできるでしょ」

「う……それを言われると」

「恋が叶ったら、絶対わたしに報告してね」

「……う、うん」


 お代はサンクレルのへの連絡や商品のトラフィックを数回お願いして、それでチャラってことにしよう。


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