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元聖女のざまあヒロイン、強制力から逃亡しスローライフをおくりたい!  作者: 翠川稜
 

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第34話 元聖女の魅了スキルは最強です?



 屋台で軽くお食事したあと、最近メルツちゃんが行き来してる職人街の方へ足を延ばした。

 とりあえず、ハンザ工務店さんに顔を出す。

 何人かのグループで職人さんのほとんどが出払っていて、残ってるのは打ち合わせ担当の人とか、ハンザさんだった。

 工務店に入ると、メルツちゃんは両手をあげてハンザさんに声をかける。


「ハンザおじーちゃん!」

「おお~メルツ~どうした~アリスさんも一緒か、珍しいな、サンクレルまで顔を出すなんて」


 すっかり呼び捨て、孫を迎えるじいじそのものだ。


「メルツちゃんを学校に通わせようと思ってその手続きに」


 わたしがそう言うと、ハンザさんはうんうんと頷く。


「若い子らしくふわふわしてるかと思えば、アリスさんはそういうところ、意外としっかりしとるからな――だがそのふわふわは、スキルのせいだと思うし、アンタじゃなくて、アンタを見る周囲がふわふわってところか」


 褒めてるのか客観的ご意見なのか……そんなハンザさんのお言葉。


「メルツの学校はどこだ?」

「サンクレル第三初級学校です」

「冒険者ギルドからも近いな。メルクーア大迷宮都市行きの街道の近くだし、いいところじゃないか? 職人街に近い第二学校によこせと、他の爺共が騒ぎそうだが」


「ドワーフのおじさま方には、メルツちゃんがおうちにいる週末にでも、遊びに来ていただければと思います」

「ふむふむ、そうだな、メルツが学校に通うようになったことを伝えておこう」

「はい、そうすれば、週末はメルツちゃんも、いろいろなものづくりに集中できそうですし」


 生活のメリハリ大事。

 辛い長い旅を終えて、ようやくたどり着いた祖母の家はすでに冒険者ギルドの管理下に置かれていて、へんな若い管理人わたしがいるけど、メルツちゃんは元家主の家族だし、ゆくゆくはね、あの物件の権利をメルツちゃんに戻してあげたいのよ。

 それまでは、一緒に暮らしてもいいかな~ぐらいでさ。

 メルツちゃんが残った職人さんと、木工をしている間、そんなことをハンザさんに相談してみた。


「あと、メルツちゃんに付与武器を作ってくれないかって相談をもちかけた商業ギルドの人もいるみたいで」

「なんだと!?」

「ランスのおじーちゃんと一緒にいたら、そう言われたの」


 メルツちゃんの言う『ランスのおじーちゃん』とは、このサンクレル職人街で武器作製をしてる職人さんのお名前です。

 あの森の家にも足を運んで、わたしにもいろいろ試しにやってみるか~? なんて声をかけてくれて、それで作製したのがイリーナさんに売ったモンスター解体用ナイフ三点なんだけど、ランスさん自身はハンザさん同様、メルツちゃんをいたくお気に入りらしい。


「ランスのおじーちゃんがおトイレいってるときに、メルツ、声かけられたの」


 わたしとハンザさんは顔を見合わせる。

 その話を聞き耳たてていた職人さんも、顔色を変える。


「オレ、ランスさんのところにひとっ走りしてきます!」


 職人さんが脱兎のごとく工務店から飛び出していく、その背中にハンザさんが声をかける。


「頼むぞ! 商業ギルドに文句言ってやる。メルツは確かに腕はいいが、アリスさんみたいに付与効果マシマシの武器なんて作れないだろ!」

「メルツちゃんに付与魔法はつけられませんからね」

「しかもそれをメルツ一人の時に言うなんて、ふざけんな!」


 激おこのハンザさんとわたしとメルツちゃんは商業ギルドに乗り込むと、わたしの商品の取り扱いをしてくれてるタリスさんがいたので、この件を伝えると、タリスさんも寝耳に水だったようで、ギルドの受付ではなく別室に通されて事の経緯を聞くと、深々と頭を下げる。

 タリスさんもその場で慌ててメルツちゃんに接触して依頼をしたと思われる人物を探し出し、部屋に連れてきた。

 どうやら彼は研修中の新人で、高価アイテムを取り扱いたいと思って、わたしと一緒に暮らしててドワーフのおじさま達に人気のメルツちゃんにそういうことを言ったらしい。

 こちらとしては、メルツちゃんはいろいろモノづくりをするけど、商品に効果付与はできないこと。メルツちゃん作を商品として取り扱いたい場合は保護者ポジションのわたしがいる場合に限ることを担当のタリスさんと彼に伝えた。


「だいたい普通ならドワーフの子供が作った商品を取り扱いたいとか、商業ギルドは言わないだろうが!」


 ハンザさんだけではなく、武器作り職人のランスさんも乗り込んできて怒ってる。

 メルツちゃんが、ドワーフの職人さん達にめっちゃ可愛がられてるのがよくわかる。

 みんなメルツちゃんの保護者枠に入りたいのかも。

 わたしはやらかした新人さんをじっと見つめる。

 わたしの制作物を取り扱うタリスさんと新人さんの視線がわたしに集中してる気がした。

 魅了スキルさん? もしかして、お仕事しちゃってます?

 じゃあ魅了スキルさんのお力を借りて、釘さしておく? うん、そうしよう。


「お仕事に一生懸命なのはとても素敵なことです。ですが、まだこの子は幼いのです。これからいろんなことを学び経験していく、その後に、こちらの商業ギルドさんにお世話になるならば問題はありませんが、今はまだ学びの期間なのです。ご理解いただけますか?」


 着てる服が法衣服だしねー。

 敬虔なプリーストのガワ決まってるよね? 幼子の未来を案じてる態で商業ギルドのお二人に諭すように語り掛けると。

 お二人とも、魅了スキルにがっつりかかったなっていう感じだ。


「も、申し訳、ありませんでした……」


 やらかした新人さんがそう言うと、わたしは両指を祈るように組み合わせて、にっこりと微笑む。

 メルツちゃんを誘った商業ギルドの人が前のめりで、しかもわたしの手を掴みかからんばかりの勢い。

 ハンザさんの方から「お前の魅了スキル、やりすぎなんだよ」的な視線が……。

 はっはっは。

 ハンザさんこの魅了スキルに引っかからないようにランスさんと一緒に頭に上げていたゴーグルをスチャっと被る。

 別にスキルって光らないと思いますけど、まるで「その飛行石はわしには眩しいんじゃあ」みたいな感じになっているの何よ?

 ねえ、そのゴーグル、魅了スキルのレジストできるの? 気になるんですけど。

 まあいいや。

 ここらへんで一度、魅了スキルさんにもね、お仕事を選ぶってことを知ってもらわないとね!


「神は案じてます。この幼子の未来を。ですから皆様もその一助となって頂きたいのです」


「「はい!!」」 


 こんなもんでいいでしょうかね?

 魅了スキルさん。こういう使い方は初めてですが、やっぱりアナタ最強ですわ。


 商業ギルドから出てきたハンザさんとランスさんはメルツちゃんに別れを惜しむと同時に、わたしの方を見る。

「アリスさん……一言言っていいかな?」

「はい」


「「アンタ、やりすぎなんじゃ!!」」


 ドルビーサラウンドでそう言われても~これが有効活用っていうもんじゃないんですかねえ。

「そう言われましても、この幼子を守るために、わたしのできることでしたら全力を尽くしたいのです」

 お祈りポーズで言ってみる。

「それには同意だが、今、発動するな!! いいか? するなよ!? ルイス氏が講義してなかったら、制御も何もあったもんじゃない!! 想像すると恐ろしいわい!!」

「確かに……噂には聞いていたが、高齢ドワーフで枯れてなければわしらもどうなっていたか……」

「ワシの予想だと、ここで発動されたら商業ギルド建物内にいた職員がこの娘に視線を向けた瞬間に、信者が湧いてくるだろうよ。恐ろしいわい」


 ご老人二人がガクブルしてる……。

 そこまで魅了スキルさんお仕事できちゃうのかなー? いや、やりませんけどね。



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