第23話 相談してたらお商売のお話に?
「あの……わたしの神聖魔法、防御結界がかなり強力で、ここが安全だってわかればそれでいいです。まったく人と関わらないわけではないし、現にこうして、心配して集まってくださる皆さんもいますし」
わたしの言葉にみなさんが「どう思う? それでいいのか?」的な視線を互い互いに合わせてるみたいだけど……。
そんな空気の中、ママ犬ちゃんが、シャムさんとイリーナさんがだっこしているべビ犬ちゃんをお迎えにきて、ふんふんと鼻を鳴らす。
シャムさんもイリーナさんもママ犬ちゃんにべビちゃん達を渡すと、べビちゃん達はよちよちしながらママ犬ちゃんに一直線。
その様子が可愛い。
「僕も考えてみたけど……魔法とは違うんだよね、アリスさんの魅了は神の贖罪に、加護もついてる。以前は加護はなかったのに。こういうのはギフテッドだから、魔力を保持して下地があるから習得するものとは違うんだよね」
「なるほど、魔法制御とは別なんですね……」
ルイスさんの言葉に、イリーナさんも腕を組んで考え込むように呟く。
「うん、魔法と違うんだよ。ただアリスさんは神聖魔法を使うから、制御は必要だし、そこをトレーニングすることで、スキルの制御にもつながる……かもしれない」
「え、じゃあ、やってみたらいいじゃん」
「そうですね、さっそくギルドで魔法制御について得意な人選をして、アリスさんに講義してもらうのはどうでしょう?」
「ルイスさんが教えてやればいいんじゃね?」
「アリスさんの魅了スキルって、かなりのものだ。下手な人ここに寄こしてアリスさんに何かあったら大変じゃろう」
「むしろ、相手が使い物にならなく可能性もあるよな」
「だけどルイスさんはメルクーア大迷宮攻略の件もあるんですよねえ」
『蒼狼の風』のメンバーとイリーナさんとハンザさんがわいわいと意見を交わす。
おーい、当人おいてけぼりなんですけどー?
でも、神聖魔法の制御っていうのは、ありがたいかも。
特に付与系。
いろいろモノを作って売るのはいいんだけど、なんか変な効果が出たら嫌だし、そこをコントロールできるのはありがたい。
あと、結界とか回復も!
回復は必要だと思う。
実際わたしの回復魔法はしょぼいからさあ。
新米冒険者がここへ逃げ込んできて怪我をしていた場合、回復魔法で治せたらって思う。
で、ルイスさんのいうとおり、この神聖魔法の制御ができたら、もしかして魅了スキルさんと連動している鑑定さんとも上手な付き合い方ができるようになるかもしれない……。
いや、でもまって!
授業料高いんじゃない⁉
だって、ルイスさんって、メルクーア大迷宮の攻略トップ組なんでしょ!?
めっちゃ凄腕魔法使い様じゃない⁉
絶対お高いんでしょ~? お高いよ!!
ただでさえ工務店さんへの支払いがあるのに!!
「わかった。僕が受けてる迷宮攻略の合間でよければ、アリスさんの魔法の講義を受け持とう」
いや~!! なんでそこで受け持とうとか言っちゃうのよ~。
でもハンザさんが言ったように、下手な人に講義してもらって、魅了スキルさんがお仕事しすぎて、講義にならない場合も無きにしも非ず……。
「アリスさん?」
「た、た、大変、あり、ありがたいのですが……じゅ、じゅ、授業料が……」
わたしがしどろもどろ話を切り出すと、みなさんはまた顔を見合わせる。
「お金のことを気にするのがアリスちゃん……なんかさあ、アリスちゃんみたいなふわっふわした女子って、『ありがとうございまーす♡』とか言って、料金についてはスルーしそうなのに」
「自ら料金について申告してくるとか」
「金で苦労したのかな……」
「見た目に反して堅実なところあるよな」
「いえ、でも大事なことですよ」
みなさんそう仰いますが、シャムさんの言うように「ありがとうございまーす♡」で済ませたら、どうなるのか……。
いままでざまあヒロイン人生を送って来たわたしが予想するに、魅了スキルLV100がリミッター解除でガンガンあがって、ついでに強制力に支配されて、感情コントロールなんかできなくなって、わたしらしくない言動を連発して死亡フラグが立ち上がる気がする。
本来料金が発生するところを善意によって無料とか……タダより高いものはないんだからね!
怖いよう!
「ちゃ、ちゃんとお支払いします!」
「うーん料金ねえ……じゃあ、講習の度にアリスさんの作るランチは無料でいいただくっていうのはどうかな? リクエストとして、三回に一回はイーストアイランド地方の料理でお願いします」
ルイスさん……和食をお気に召したのね……。
ルイスさんの隣で、ハンザさんは腕を組んでうんうんと頷く。
「アリスさんの飯は旨いからな」
「確かに、アリスちゃんはお料理上手だった。あたし昨日はハンバーグ作ってもらっちゃった。おいしかったんだ~いいでしょ~あたし魚料理大好きだけど、たまには肉料理もいいわあって思ったよ!」
シャムさんは腰に両手を当てて、ふふ~んって胸を反らせて、ダグラスさんとボイルさんに伝える。
そう、昨日の夜。弱ったママ犬ちゃんのごはんは柔らかい肉をって言われたので、固まり肉をミンチにしたついでに、わたしとシャムさんの晩御飯もそれを利用してハンバーグにしちゃいました。
それはいいんだけど昼食代だけで講義料金になるものなの?
ならないよね……。
わたしはイリーナさんをじっと見る。
イリーナさんは冒険者ギルドの職員だから、魔法使いからの魔法においての講習とか、その手の本来の料金は知ってるはず。
後で訊こう……適正料金をお支払いしないとダメ、絶対!
「料理上手だって褒めるけど、それ実力じゃないですし」
「え?」
「エプロンしないで作るとメシマズとはいいませんが、そんなに褒められるほど美味しいものを作れるような腕はないんですよ」
「エプロンだあ?」
「自分で作った料理用エプロンを着てお料理すると、割と美味しくできます」
「料理スキル上昇の付与がついてるんだろうね」
「です!」
「アリスさん、それ売れよ、儲かるぞ」
「え?」
ハンザさんが言うには、独身男性(多分ハンザさんのところの職人さん達)は自炊ってあんまりしなくて、外食がほとんどで、給料日前はけっこう厳しいらしい。
でも、真面目な人は自炊するけど、自分の作る料理が不味くて泣いてるみたいだとか。
奥さんがいる人が羨ましい~って何時も呟いてるんだって。
「よかったな、シャム、お前も作ってもらえ」
「なんであたしよ⁉ ダグラスかボイルがアリスちゃんが作ったエプロンつけて、あたしにごはんを作ってくれてもいいのよ⁉」
おう……冒険者の方も自炊には苦労してそう。
サンクレルは外食のお店けっこう多いもんね。要はそこで事足りちゃうのかも。
そんなんで売れるのかな……。
「サンクレルって定食屋さんというか外食のお店多いから、需要なさそうでは?」
「いやいや、うちの若いのは買うから」
「買います?」
「うちの連中はアリスさんの作品は買うだろうし、それこそ定食屋に制服として売り込んでもいいだろう」
むむむ。それは……。ありかも?
企業向けの売り込みができるなら収入面で助かるんだけど。
「商業ギルドに相談した方がいいだろうね。それこそ適正価格での販売にしてもらうように相談した方がいいよアリスさん」
そっか、これは商業ギルドへの相談案件ですよねー。




