第22話 心配してくれた皆様が全員集合!?
シャムさんとわたしは、わんわん親子のお世話をしつつ、翌日の朝を迎えた。
朝はパンと、コーヒーと、ハムエッグという、実にシンプル・イズ・ベストな朝食メニューなんですが、一応、パンは手作りですよー。
というのもね、この物件リノベーションの時、サンクレルの街に行ったり来たりする際で、以前バイトしてたパン屋さんに基本的なパンの焼き方を教えてもらったから、ちょっと試しに作ってみたの。
お料理に自信はありませんが、何度かやってるとね、味がよくなってきて、ふんわりふかふかベーカリーのパンに近づいていくのが楽しくて、ここ最近は自作してる。
今回シャムさんにお出ししても、美味しい~って言ってもらえた!
ママ犬(?)にも朝ごはん、昨日と同じだけでいいよね?
お肉を出来る限りで細かく切ったものを出すと、ぱくぱく食べてくれて、二匹のべビちゃん達もママの傍にいてミルクのお時間。
べビちゃん達はずっと見ていたくなるほど可愛いけど、まあ、いろいろやることやらないとね。
食器を洗ったりお掃除したりしていたら、玄関のカウベルの音が!
ダグラスさんかボイルさんかな? そう思って、ドアを開けると、イリーナさんとダグラスさんとボイルさんとあと、ハンザさんとルイスさんが来てくれた。
おお、皆様勢ぞろい。
「おはようございます。みなさんお揃いで!」
わたしが挨拶すると、みなさんほっとした顔をしていた。
「あの? なんかありました?」
「犬型モンスターのテリトリー争いがあったと報告を受けて、みんな心配してやってきたのに、本人は結構のんきなものだ」
ハンザさんが呟くようにそう言った。
そんなのんきだなんて! 一晩、ママ犬とべビ犬達のお世話してたんですよ!
ママ犬なんてぐったりしてたから、怖いけど、柔らかお肉を口開けさせてたべさせてたんですからね!
ちょっぴり元気になってるからいいんですけども!
ママ犬がむくっと起き上がって、わたしは慌ててママ犬の方へ行く。
「どうしたの? ママちゃん」
ママ犬はトントンと鼻先をウッドデッキにつながるガラス扉を押してる。
「トイレだって」
ダグラスさんがそう言うので、扉を開けるとフラフラとお庭へと歩いて行く。うん。どうもダグラスさんの言う通りみたい。
ママちゃんはすぐ戻るからねと、小さいモフモフちゃんをわたしとシャムさんで抱っこする。
まだまだ手の平サイズで可愛い。
イリーナさんも可愛い~って呟いてるので、イリーナさんにわたしが抱っこしてるべビちゃんを預かってもらってみなさんにお茶をお出しする。
「それで、犬のモンスターのテリトリー争いって、どうなってるんですか?」
「治まったみたいだ。気配がしない。ただ……あれは行動範囲は結構広いからな」
ダグラスさんが応えてくれた。
ふむふむ、やっぱり犬型獣人のダグラスさんはわかるのか。
「ルイスさん、この建物、鑑定してくれました? わたしも鑑定はできますけど、どのぐらいの防御レベルなのかは、ちょっとサンクレルに来て二月ぐらいなので、見当がつかないんです」
ルイスさんは苦笑する。
「サンクレルの外壁並だよ。かなり強力だ。下手なモンスターは近づけない」
「……木製フェンスなんですけど……?」
「聖域化の効果があるから」
「聖域化ってそんなに効果あるんですか?」
「うーん……アリスさんには……神の領域化に近いって言ったらわかりやすいかな?」
あ、はい……そりゃ強力かもしれない。
「ママ犬ちゃんが元気ないのはそのせいですか⁉」
「いや……うーん……ここで鑑定全部ぶっちゃけてもいいの?」
ルイスさんは躊躇いながら尋ねる。
「あー……でも、イリーナさんもいるし……いいですよ。サンクレルに来てよくしてくれた方々ばかりですし」
「この建物は、時空神の贖罪を受けし元聖女の住まいに上書きされてる。時空神だけじゃなくて、全能神の贖罪と創造神の加護なんかもかかってる」
あわわわ。なんかとんでもないワード出てきたよ⁉
そんな、神様達が一斉にごめんなさいテヘペロってこと⁉
それとも、一番偉い神様が何度もわたしを転生させた神様のことを知って、上司からお詫びってことでいろいろつけてくれたのかしら?
え~それってさ~つまりいろいろつけるから、この繰り返し転生はなかったことに……ついでに今世はこの力で乗り切って頂戴ねって……そういうことかしら?
「あ~だからステンドグラス作りたいって言ったのか……神の加護とかとんでもないな」
「アリスちゃん元聖女なの⁉ プリースト見習いじゃないの⁉」
ハンザさんが呟くと、シャムさんが驚いたような声を上げる。
「元聖女の称号がついたのは、この大陸にきてから判明したんです。魅了スキルと鑑定の連動が強まったのも……ここに来てからなんです。前の大陸にいた時は、魅了スキルだけでした! 神聖魔法もあるって言われたけど、使う必要なかったんですよ~」
「使う必要がなかったって、どういうことです?」
そりゃ冒険者ギルドのイリーナさんからすると、持ってる能力使わないのは何故? ってなるよねえ。
「コーディラインズ大陸某国にわたしは生まれて、親は5歳の時に亡くなって、叔父に育てられて、でも叔父も遠方に仕事に行くことになって、わたしのお世話ができなくて、サリダス教会に10歳の時に預けられたんです。で、そこから4年は教会にいたんですけど、養女としてやんごとないおうちに引き取られることになりました。それが二年前の話です。引き取られる理由は、魅了スキルのせいです。魅了スキルを持ったわたしを次世代の国王の花嫁に相応しい令嬢に仕込んで、婚約させようという腹積もりでした」
「あー……多分、それっぽい感じはあったけどなー」
「まじもんのお姫様だったか」
ダグラスさんとボイルさんはそう呟くけど、マジもんのお姫様なんかじゃないよー!
そりゃ何回もざまあヒロインやってきましたけど、出自は平民で張りぼてお姫様、即席インスタント令嬢なんだよー!
「そこからよく逃げることができたね」
ルイスさんが驚いたように呟く。
「次期国王である現王太子殿下と、婚約者であるご令嬢に協力してもらいました。わたしを引き取ったそのお家は、わたしと王太子殿下との婚約を推し進めてましたが、前々から婚約が内定してたご令嬢と殿下にはわたしの魅了スキルが入り込むことができないほどの絆がありましたからね。お邪魔虫は退散するから、旅費くださいって言ったらくれたんですよ」
わたしははあ~とため息をつく。
「問題は、この大陸にきてからの魅了スキルと神聖魔法の強化です。魅了スキルと鑑定が連動してるから、これを上手くコントロールできないし、人が多いと、勝手に鑑定が始まって止まらないし、疲れちゃうんです」
「だからサンクレルへの避難を渋ったのか……」
「ねえ、ルイスさーん、アリスちゃんのこの鑑定と魅了スキルとかどうにかならないの? グランド・カーラントの中でもルイスさんはメルクーア大迷宮攻略組トップの魔法使いじゃんよ?」
シャムさんはルイスさんとイリーナさんに尋ねる。
「イリーナさん、冒険者ギルドから、魔法の講習とか講義とかしてくれる人材とかをアリスちゃんに紹介できないもんなの?」
いやいやいや、やることいっぱいあるからいいですよ! そんな忙しい人達の時間を割くなんてとんでもない!
わたしはスローライフできれば無問題なんですって!




