第19話 魔法使いルイスさんにスキルの相談をしてみた。
お昼が終わると、ハンザ工務店さんは作業小屋の修理と、わたしが中途半端にしてしまった草刈をしてくれるそうで「さ~続きやったるか~」って、お仕事モードでドアを開け、カウベルをカランコロンって鳴らして出て行った。
「イリーナさんからのお手紙を渡すついでに、この間、アリスさんが言っていた魅了スキルと鑑定スキルの連動について話を聞きたいなって」
「わたしも、ルイスさんにはいろいろご相談したかったんですよ」
とは言いつつも、膝詰めでお話ってわけではなく、食器を洗いながら、ルイスさんに伝える。
けどな~これは魔法じゃなくてスキルだからな……。
食器を洗い終わって、自分用のお茶と、ルイスさんにお茶のお代わりを用意した。
「えっと……スキル云々の前に……ルイスさんは魔法使いだし、多分この世界のこともよくよく知ってると思うので、ご相談させてください。えっと、ルイスさんは、わたしの称号を見てますよね?」
「あ、うん。『時空神の贖罪を受けし元聖女』ってやつだよね」
うわ~やっぱりそこは見えてたか~。鑑定されてるから多分このフレーズはわかってるんじゃないかなって思ってたけどさ……。
「信じられないかもしれないけれど、わたしの魂は、異世界の住人の魂なんです」
引くかな……。と思ったけど、ルイスさんはどうぞ続けてって雰囲気で、話を聞いてくれる体勢だ。
「異世界に住んでいた記憶は朧気なんですが、転生を繰り返してるってのは、わかってます。ただ……その、転生する世界って、元居た世界ではきまって物語とか創作物の世界なんです。この世界も多分そうだと思います」
「うん」
「わたしは転生するたびに、必ず魅了スキルがついてきている状態です。魅了スキルって男の人がちやほやしてくれるじゃないですか。もれなくわたしも魅了スキルに乗っかっちゃってわがまま放題に振る舞って、最終的には国にとって災厄としかならない人物に位置づけられます。もちろん、正当な形で断罪されて死ぬんですよね、わりと短命です。これを何度も繰り返してきました。今回の転生も、コーデラインズ大陸にある某国の政争に関わりそうになり、過去の転生と同様に死ぬかもと思って、立場を捨てて、この大陸にやってきた次第です」
悪役令嬢系の物語って、結局は高位貴族と王家に関わってるから政争といっても問題ないよね?
恋愛シミュレーションゲームとか恋愛ストーリー、創作物の転生ですっていうと混乱するだろうし、省けるところは省いて、こう言った方が理解はされるんじゃないかな……。
「異世界からの転生を繰り返してきたから『時空神の贖罪を受けし元聖女』なわけか……」
ルイスさんは肘をカウンターについて考え込むように呟いた。
「それで必ず魅了スキルがついてるというわけなんだね?」
「はい、鑑定のフォーマット仕様は、転生するその時々で違います。わたしが感じる鑑定は、主に、好感度なんです」
「好感度だから魅了スキルと連動ってことか……」
おお……ルイスさんさすが理解が早い。
「はい。ただ今回というか……このサザランディア大陸にやってきてから、好感度の鑑定がかなり詳細に感じるようになって、おまけに……目に映る人、ふと視線を向けただけで、好感度の表示やそれ以外の表示もいろいろ把握できるようになってしまったんです」
「時間でいうとどのくらい?」
「相手を見たら10秒ですぐに表示されます」
「……それ、やばくない?」
「やばいっていうより、きついですね……。視線を合わせないようちょっとずらしたりとかメチャクチャ工夫してますよ。だから、今回のここの管理を冒険者ギルドから依頼されたのは渡りに船っていうか、都合よかったんですよ。サンクレルの港町って人口多いから……さすがに疲れちゃって」
「それは疲れるでしょ」
わたしはこくんと頷いて、深々とため息をついた。
「ルイスさん」
「はい?」
「この魅了スキルをなんとかする方法はないですかね」
「それって、やっぱり時空神の加護っぽいから、なんともできなさそうだよね」
くっそ、自力でなんとかしなさいねってことかあああああ!!
「最悪顔に傷をつけたら、魅了スキルなくならないかなって、かなり過激なことも考えたんですけど」
「それは止めなさい。加護だから、無理」
「やりませんけど、やった場合どうなります?」
「多分、元に戻っちゃうだけ、その傷をつけた時に痛いだけだから」
「そうなんですねええええええ!!!」
バターンとわたしは上半身をカウンターに突っ伏して叫んだ。
痛いのはやだから、やろうとは思わなかったけど、最悪の場合はやってみてもいいんじゃないかと思ってた手段は無駄と判明。
うん、これはやらなくてよかった……。
「この大陸にきて鑑定の詳細が判明ってどういうことなのか説明してもらってもいい?」
「あ、はい、えーとまず、コーデラインズ大陸にいた時は、純粋に一定の人間の好感度だけが鑑定できる状態でした」
「……それも珍しくない?」
「何度転生を繰り返しても、魅了スキルだけは必ず持ってましたから。ああいつもと同じなんだなって……」
「神聖魔法はどうだったの? 元聖女っていう称号がついてるでしょ?」
「オマケっぽい感じです。あんまり使いませんでした」
だって転生するのは恋愛物語ベースの世界だったもの!
神聖魔法が使えるからドリアス公爵家に養女になったけど、あの国でそれが必要かって言われればあんまり必要じゃないっていうか……。
魅了ありきでドリアス家が引き取った感が強いんだよね……。
王太子を誑かすハニトラ要員としてさ。
「この物件って、結構広いよね、あとここからサンクレルに向かうまでの道のりも歩いて一時間半。その距離を浄化してるんだよ、以前は使わなかったの?」
今世、生まれてからの記憶をずーっとさぐってみるけど……ないなあ。
あ、使わなかったけど、ユリシア様にコンタクト取る為に頑張った階段落ちの時は、怪我の治りとか痛みの引きは早かったなと……今なら思う。
これまで繰り返した転生だと、とにかく魅了スキルが仕事してて、他に付随してる魔法とかスキル能力とかはしょぼい感じだったもんね。
「このサザランディア大陸にきて、本格的に神聖魔法を使い始めたってことか……」
まあ、今世ではそういうことになるかな……。
わたしはこくんと頷く。
「もともと、魅了スキルを凌ぐ魔力持ちだったか、もしくは、時空神の加護か」
ルイスさんはじーとわたしを見るけど……目線があってもパラメーター表示されない。
「ルイスさん、わたしの魅了スキル、レジストしてます?」
「うん。状態異常になるからね。アリスさんはそうやってじっと見るだけで魅了スキルと鑑定ができちゃうのか……」
「制御したいんですけどね……」
「あ~うん」
「「無理だな(ですね)」」
魅了スキルは例の時空神の贖罪に含まれる加護――。
ルイスさんとの解釈は一致。
わたしはがっくりと肩を落とす。
「使わなかっただけで、神聖魔法もきっと強力だと思う。実際、アリスさんが作るバッグとか服とか、付与がたくさんついてるし……」
「……ソウデスネ」
「対策について、何もできなくて申し訳ない。神の加護についての文献を漁ってみるよ」
ルイスさんはそう言ったけど、話を聞いてくれただけで、幾分すっきりした感じはする。
「いえ、とんでもないです。ありがとうございます」
でも、ルイスさんは気にしてくれて、「お詫びに」と言って、家に設置した水の魔石と火の魔石に魔力を補充してくれた。
魔法と神様の加護とは別ものだから仕方ないのに、いい人だなぁ。




