第20話 シュティーア迷宮都市
サンクレルとメルクーアの冒険者ギルドから情報収集して向かった先は、メルクーア大迷宮都市よりも北にあるシュティーア迷宮都市。
メルクーア大迷宮都市からこのシュティーア迷宮都市までは、およそ馬車で二週間はかかる距離なんだけど、そこはね、ルイスさんが転移魔法で一瞬ですわ。
そしてステラおばあちゃんが言っていたように、サンクレルよりも涼しい。
肌寒いかもしれない。もちろんわたしは法衣服を着てるので、薄着がどうこうってわけじゃない。この法衣服、状態異常無効、物理攻撃無効、魔法攻撃無効っていう付与があるから、暑いところでも寒いところでも、どんとこい。
ただ服以外の肌に触れる気温が、いままでいた場所とは低いなと感じるのよ。
それにしても……なーんか活気がないわね。
サンクレルとメルクーア大迷宮都市がいかに大都会とはえ、ダンジョンを抱える街はそれなりに活気があってもいいはずなのに。
「シュティーア迷宮都市って、こんなに寂れてるの?」
「俺が以前来た時は、もっと活気があったぞ?」
メルクーア大迷宮都市からここまで一瞬の転移魔法に「うわーすげー」とさっきまで感嘆を漏らしていたウィルさんがそう言った。
その言葉にルイスさんも頷く。
街壁の通行する詰所を横切り、街の中に入ると、あ、うーん……なーんかなー。
「どうしたアリス」
「変な感じ」
サンクレルもメルクーア大迷宮都市も人口多いから、異様な雰囲気がね~……ノースサーティーダンジョンに行った時に近い印象があるのよ。
なんかいるってわけでもないんだけど。
とりあえず、拠点として宿屋に向かう。
一階は食堂として開放している、この世界ではまあ定番な宿屋なんだけど。
入った途端、ちょっと異様な雰囲気があった。
同じ服装をした人達がやたら目につく。
どうもどこかの宗教の巡礼服みたい。
珍しい~。
サンクレルなんてさ、人種の坩堝だから、あんまり宗教を信仰してる人ってみかけないというか……。歴史的にそういう人が大量に流れ込んだこともあるらしいんだけど、ダンジョンの中で切った張ったやってる冒険者って、結局自分の力でしか自分守れないっていう感じだし、そこは宗教家も熱心に布教勧誘するけど「神様の力とやらがスタンピードを止められるのか」の一言で信仰が浸透しないんだな。
でもここでは冒険者が使用する宿屋まで利用して巡礼するほど信仰する宗教があるのか……。
元々の土着信仰みたいなものなのかしらねえ。
わたし達はカウンターに進むと、女将さんが挨拶をしてくれる。
「いらっしゃい」
「どうも、部屋は空いてるかな?」
ウィルさんが物慣れた感じで女将さんに話しかける。
「空いてるよ」
「よかった、二部屋お願いしたい」
「あいよ」
女将さんはわたしの法衣服をじろじろ見てる。
巡礼服とは異なるから?
わたしは女将さんをじっと見る。
「あんた、オリジン教の人?」
「いいえ? わたし、別大陸からやってきた元サリザス教会の者です~破門されちゃって~サザランディアに流れ着いて~今、パーティー組んでるですけどお」
わたしがそういうと、女将さんはほっとしたような顔を浮かべる。
そして心配そうにわたしを見る。
え、何? えーと、つまり、宗教間の小競り合いがこの宿で行われるとか心配しちゃったのかな?
「その法衣服、やめたほうがいいよ」
女将さんがひそひそ声でわたしそう伝えた。その視線は巡礼服の団体とわたしを行き来している。
まあねえ、前々世でも同じ宗教だけど宗派違いで宗教戦争勃発したのは多々ありますし。
ましてやこの異世界じゃあね。
だけど、これ以上ない防御付与ばりばりの法衣服なんだよねこれ。
これ着てないと防御力が紙ですよペラペラですよ。
「アリス、行こう、女将さん、食事は部屋でとれるかな?」
ルイスさんがわたしの肩を抱いて、女将さんに尋ねると女将さんは頷く。
魔法使いのローブでわたしの服を隠すように、鍵札についてる部屋の一つにみんなで入る。
「……ウィルさん、ああいう巡礼服見たことありますか?」
ルイスさんがウィルさんに尋ねるとウィルさんは首を横に振る。
「ルイスさんは?」
「僕もないね」
「そうなの? てっきりここの土着信仰かなって思ったけどそうなの?」
「そんなものはない」
「サザランディア大陸は、ダンジョンとモンスターの大陸だからね。それらを宗教の力でどうこうはできない、サンクレルやメルクーア大迷宮都市だけじゃない」
「……でも、エルフ至上主義のベテルジュース迷宮都市なんて、エルフ=精霊でそういう信仰ありそうだと思ってたけど、そこもないの? ここ、ベテルジュース迷宮都市に近いんでしょ?」
「精霊信仰かあ……」
「メルツちゃんがいればわかったのにね……」
「でもメルツちゃんもそのころもっと幼いからわかってないかもだけどね」
わたし達四人は腕を組んでうーんと唸る。
「ノースサーティーダンジョン周辺でも、巡礼者っぽいのはみかけたらしいんだよね」
そうこうしてるとドアノックされて女将さんがお茶をもってきてくれた。
こういう宿で部屋にお茶もってきてくれるとか珍しいな。
「あんたたち、どこからきたの?」
「メルクーア大迷宮都市なんですけど」
「なんでここまできたの? 踏破されたけど、あっちの方がまだ稼げるでしょ」
ルイスさんとウィルさんは顔を見合わせる。
「ダンジョン探索ではなく、人を探しにきてるんですよ」
ウィルさんがそういうと女将さんは眉を寄せる。
「人探しか……じゃあ、仕方ないね、ダンジョンには潜れないよ?」
「なぜです?」
「さっきのオリジン教のやつらが入場制限してるから」
女将さんの言葉に、ルイスさんは眉間に皺を寄せたのだった。




