第19話 ステラおばあちゃんのスキル?
「アリス、ステラさんが言うように、着替えは少し厚めの生地のものを用意しておいて……ていうかね、多分、北に行くことになる。今の時期はまだ暑いけど」
家に戻ると、ルイスさんにそう言われた。
「ステラさんは多分、先見のスキルを持ってる人だ」
「え、予知できるの⁉」
「わからない」
なんでよ、ルイスさんがわからないってどういうことよ?
その疑問がありありと表情に出てたんだと思う。
家に戻って、軽くつまめる夕食をとって、明日の準備をする為に階段を上ってる時にそうルイスさんが言った。
わたしは、ルイスさんの腕をつかんで話の続きを促すと、階段を上った二階のプチリビングのソファに座る。
「先見ができる人って、あまり長生きしないんだよね。ステラさんだいたい七十代でしょ、あの年齢で先見できる人を、僕はこの大陸では見たことがない」
「……はい?」
「……イーストアイランド地方でも、先見ができる人がいたけど、そういう人は……貴族のような……」
「あ、はい、権威があるのね」
前々前世でもそういうお話はみたことあるわ。
貴族の偉い人が更に頭を下げて金を積んで未来を予知とかね。
現代日本のドラマでもあるじゃん?
政治家がお金積んで占い師に占ってもらったりさー。
でもこのサザランディア大陸は特殊能力者というか、冒険者ってだけで、通常の人とはやっぱり一線を画すもんね。モンスターを倒せる方が偉いというか、ルイスさんなんてその最たる人だけど。
でも。
「先見の人が長生きしないって……なんで?」
「精神的にも脳にも負荷がすごいから。ステラさんは高齢だから本当に珍しいんだよね」
まじか。
「物理的な僕の千里眼と違う。未来をどこまで見れるかわからないし、先見の人は冒険者にならないんだよ。ダンジョン探索で強いモンスター回避のたびにそんな能力使ったら、あっという間に廃人コースになる」
こわっ。
おまけに見たくない未来も見えるとか。
先見の人が「自分、先見のスキル持ってます」って言わないのは、自分の望まない未来も見えるのに、他人にせがまれて、ありのままを言ったら、未来を変える方法を尋ねられて、何度もその能力を使われることになるから。
ただでさえ心身共にストレス溜まるスキルなのに、周囲から求められる。
それゆえ、先見の人はそのスキルを秘匿しがちだっていう。
メルクーア大迷宮がスタンピードまったなしという近年も、先見の人は、メルクーア大迷宮攻略がわかっていたはずなんだって。
でも、スタンピード阻止の成功――ルイスさん達が攻略できるって、先見でわかってても口を閉じていた人がほとんどだろうと、ルイスさんは言った。
「ジャック君とアリスを連れていけって言っただろ?」
「うん」
「アリスが魅了スキル使って、やらかすところ見えたんじゃないかな」
「やらかす……って何を?」
「サンクレルとメルクーアの冒険者ギルドの前で、涙を浮かべて『妹同然のメルツちゃんとここにいるジャック君のお姉さんが転移魔法で連れ攫われたの』なんて言ってみるだけで、
その魅了スキルが発動して、転移魔法持ちを知ってる冒険者が罪もない転移魔法持ちの魔法使いを手あたり次第につるし上げる。先見のスキルがない僕も、それは簡単に予想はできたから……随行するのを承知したんだよね」
魔女狩りみたいな転移魔法使い狩り待ったなし……。
でもまあそれは考えてました。
魅了スキルさん威力MAXまでお願いしたら可能だし。
それをやったら、魅了スキルにかかった人が大量になって、あとあとがめんどくさいけど、メルツちゃん発見の為なら、そのリスクを知ってもやるわね。
ルイスさん以外の罪のない転移魔法持ち狩りをしてでも捜すわ。
「やらなくてよかった……のよね?」
ルイスさんはうんと頷く。
「ステラさんが長生きなのは、多分先見の能力をそんなに使用しなかったからかもしれない。それを持ってるよと家族にも伝えてない可能性がある。危うく僕は尋ねそうになったけど、飲み込んだよ。それでね。ステラさんは多分使う時は使ってる。大事な養い子の安否だから使うだろう。それで何か見えたんだと思う」
「ステラおばあちゃん……すごい」
「でも、他言無用だよ、アリス、ジャック君をはじめ、家族のみんなにこのことを言ってはいけない」
わたしはお口チャックのジェスチャーをすると、ルイスさんは頷いた。
大事な養い子の安否か……。
「じゃあ、魔導ボードに情報集まってると思うから、アリスは明日の準備ね」
「了解です」
ルイスさん……いつもどおりな感じに見せてるけど、絶対今、はらわた煮えくり返ってると思うわ。




