第18話 4人で探せとおばあちゃんが言った
わたしは日が暮れるまで消えたマリアさんとメルツちゃんを探し回った。
泣き出したかったけど、小さなジャック君が泣かずに、二人を探してるので堪えていたんだけど、日が暮れるまで戻らないわたし達をルイスさんが迎えに来てくれた時、涙腺は決壊した。
「メルツちゃんが……マリアさんが消えたの……みんなで薬草採取をしてたの……夢中になって……ルイスさん、二人はおうちに戻ってる? すれ違わなかった?」
言葉が……声が……うまくでてこない。
二人が、森のおうちにもどっているといい。
今ここで、森のおうちに戻ったら、メルツちゃんが「マリアお姉さんが、日が暮れる前に帰ろっていうから、メルツたち早く帰ってきちゃった」とかいつもの笑顔でわたしの前にいるって……そういうことないだろうか?
マリアさんに贈った帽子をこの道端に落としたままの状態で、そんなことはないはずだけど、そうであればどんなにいいかと思ってしまう。
そんなわたしを見て、ジャック君がルイスさんを見る。
「薬草採取だから、ある程度等間隔の距離はできます。ここは最近ようやく薬草採取が解禁になって新人の冒険者の薬草採取依頼が出されるようになったと聞いてました。マリアねえさんは、そのことを承知だったので、一か所でみんなではやめましょうって言って……」
普段はたどたどしい子供らしいジャック君がキリッとしてルイスさんに状況を説明する。
「なのでちょっと離れ気味になったところでした。ボスが吠え始め、ママちゃんも吠えました、ちょっと異常な吠え方だった」
スタスタとジャック君は歩いて、マリアさんに贈った帽子が落ちていた場所に立つ。
「ボスもママちゃんも、ここから離れませんでした」
ルイスさんは頷く。
「転移魔法だな……魔力の残滓から見てそうだ。いくらボスやママちゃんの鼻が利いても追えないだろう。わかった。このことは冒険者ギルドに報告するよ。ジャック君もヴァイドルフに送る。アリス、僕は二人を探しに行く」
「わたしも行く!」
「ボクも行く!」
「ヴァイドルフにとりあえずジャック君とボスを送ってこの件をウィルさんとお婆さんにしらせなければね。ママちゃん、家に戻って留守を頼むよアインもツヴァイも留守番はできるよね?」
ママちゃんは私がついていながら面目ないというように、くーんと鼻で鳴いた。
「大丈夫、ちゃんと二人を連れ戻す。家に戻ってくれ」
ママちゃんはルイスさんのいうことを聞いて、森のおうちに戻っていく。
ルイスさんは転移魔法でわたし達を連れて、メルツちゃんとマリアさんがかどわかされた旨を報告し、二人の行方の捜査を依頼した。
そしてそのまま、また転移魔法でヴァイドルフのジャック君のおうちに戻る。
本当なら顔向けできないところだ。
この時点でも泣きそうだったのに、ジャック君のおばあちゃんはわたしの手をとって「アリスちゃんとジャックが無事でよかった」と言ってくれた時は、号泣してた。
「全員行方不明になっていたら、探す時間も遅れただろう。泣かんでもええ」
「ステラおばあちゃん……わたし、わたし、マリアさんを絶対に探し出すから!」
ステラおばあちゃんは皺皺の両手でわたしの手を包む。
「今回はご迷惑をかけて申し訳ありません。僕が必ず二人を探し出します」
ルイスさんの言葉におばあちゃんは頷く。
「転移魔法を使える者はこの二都市間だと限られている。ギルドからの情報が上がり次第、そいつを追う」
「ルイスさん……二人の捜索に、俺も行きます」
そう言ったのはジャック君のおうちの長男であるウィルさんだった。
「ルイスさんのパーティーほどではないけど、俺もそれなりの腕はある。魔法でかどわかされたにしろ、二人を救出するなら、物理的な力も必要だろうし、俺の家族だ」
ウィルさんの言葉にルイスさんは少し考え込んでいたいたけれど、頷く。
「ぼくもいく!」
ジャック君が叫ぶように言う。
「ボスなら、においでおいかけられるもん、近くにいたらどんなに隠されててもマリアねえさんとメルツちゃんを見つける。ぼくも行く!」
アーサーさんとルイスさんは眉間に皺を寄せて目を伏せる。
気持ちはわかるけど……って、思ってるんだろうな。
「わたしも行く!」
二人が嫌だとか言ったら魅了スキルさん、お願いしますよ?
「アリスおねーさん……」
「わたしたちのすぐそばだったのよ? 一緒に薬草採取して、ちょっとばらけた隙をつかれたのよ?」
そんなの、目の前にしてやられた感じ、二人を連れ攫われたの、こうモヤっとするというかムカっとするというか。
腹立ちが収まらないのよ!
確かに、神聖魔法……特に浄化魔法がまあまあ使えるようになってから、ゴーストよりも生きた人間のほうが怖いって思うよ?
だけどね、怖いけど連れ攫われた二人はきっともっと怖いはずなの!
「アーサー、ルイスさん、連れて行っておあげ」
わたしがジャック君の目線でしゃがんでジャック君の肩を抱いて、まじで魅了スキルさん出動五秒前ってところでおばあちゃんの声がした。
「そうのほうがいい気がする」
「はあ⁉ ばーちゃん何言ってんだよ!」
「二人を置いてく方が、よくないよ。置いていったら、この二人はこの街から飛び出して、二人で探し回る。ちゃんと4人で探しに行きなさい」
ステラおばあちゃんの言葉にアーサーさんは、腕を組んで眉間に皺を寄せて考えている。
ルイスさんは、はっとしたようにステラおばあちゃんの前に進み出る。
「ステラさん」
「うん?」
「もしかして……」
「着替えはね、ちょっと生地が厚めのを用意したほうが、いいだろうねえ」
ステラおばあちゃんは一瞬ルイスさんと視線を合わせて、うんうんと頷く。
「4人で行けば、きっと大丈夫」
おばあちゃんはそう呟いた。
「わかった。準備をするため、一度家に帰ろうアリス」
「はい!」
「アーサーさん」
「はい」
「うちのクランとサンクレルとメルクーア大迷宮都市の冒険者ギルドから今情報を集めてもらっているから、明日にでも出発できるようにしておいてほしい」
「わかった」
ルイスさんはもう一度、ステラおばあちゃんに視線を向ける。
「4人で行った方がいいんですね?」
念を押すようにルイスさんがステラおばあちゃんに尋ねると、おばあちゃんはうんと頷いた。




