第14話 メルクーア大迷宮都市でお買い物
サンクレルの冒険者ギルドに最初にきた時、薬草採取の依頼がなくてがっくりした思い出。
それもこれも、この街道にモンスターが出るからだ。
わたしがあの森のおうちを浄化して、鼻歌交じりでサンクレルに戻った時に、あの道も浄化されてたってルイスさんがいってた。
今じゃ森のおうちからサンクレルに行く際は、スライムだってあんまりお目にかからない。
じゃあ森のおうちから、メルクーア大迷宮都市まで続くこの冒険者街道の浄化しちゃえば薬草採取し放題じゃん。
よっしゃ! 力いれて浄化しちゃうぞ!
メルツちゃんと一緒になって、鼻歌交じりに、魔力ポーションの素材の薬草を採取しながらメルクーア大迷宮都市に到着する。
薬草も結構採取できた! よしよし。
「わたしもポーション作りたいわー」
「え、じゃあ、メルツと一緒に、ジャック君のおうちにあそびにいく? マリアおねーさんに教えてもらう?」
「教えてもらいたい!」
独力でやるとへんなのができそうな予感……。
「ポーション作成か……なら、せっかくメルクーア大迷宮都市にきたことだし、ポーション作成の道具とか購入する?」
ルイスさんの提案にわたしは頷く。
「メルツちゃんも、何か欲しいものがあったら言ってね」
「あれ欲しい」
秒でメルツちゃんが発言して指さしたのは、屋台のモンスター肉の串焼き。
メルツちゃん……。
あなた間違っていないわ。正解!
「おいしそうなにおいなの」
「煙とタレの香りのたまらんことよ」
「ギルドに依頼完了の報告に行くから、とりあえず一本だけね」
三人でメルクーア大迷宮都市の屋台街からビッグヤエル……ヤギのモンスターらしい肉の串焼きを食す。
タレがジンギスカンのタレっぽい!
でもモンスター肉なのに臭みがそんなに感じないわ。
そしてこのタレで美味しくいただけました!
串焼き肉に思いっきりかぶりついたメルツちゃん。バーベキュー大会を開催してても、ぜったいにお口の周りにタレをくっつけちゃうのよね。わたしはメルツちゃんの口元をハンカチでふきふきする。
この間はリッチなレストランでお食事を奢ってもらっちゃったけど、こういう屋台のB級グルメ的なのもいいわね!
「おいしかったの!」
「メルツちゃん、迷子になっちゃうから、ちゃんとアリスか僕の手をつないでね」
「はーい!」
「アリス、この屋台街を抜けたら、魔道具街になるよ」
わたし達は冒険者ギルドに街道の浄化報告してから、再び屋台街を抜けて魔道具街に足を踏み入れた。
「サンクレルとおなじぐらいお店いっぱい!」
メルツちゃんもテンション高め。
とりあえずビーカーとか試験管とかを購入。薬研とか乳鉢とか乳棒とかも買っちゃった。
攪拌するステアとかポーションを入れる小瓶とかも。あと包丁とまな板を薬調合用に新たに購入しておこう。料理用と一緒にはしたくない。
きっと薬草を刻んだりするし。
ポーション作りって、料理の器具に近いな。
ポーションとかって、液体なんだよね。
錠剤やカプセルなんかは存在しないんだろうか。
錠剤はな~
とりあえず最低限の調薬キットを購入して、素材を売ってるエリアに足を運ぶ。
鉱石のインゴットとかメルツちゃんはしゃがみこんでじーと見てる。
お店の人はドワーフでメルツちゃんを見て、ちょっと眉をしかめた。
「買わないなら、そこにいないでくれ」
む。感じ悪いな。接客業らしくないわね。
「エルフがなんでインゴットとか見てるんだか」
と苦々しく呟く。
「メルツ、1/4ドワーフだよ」
メルツちゃんがそういうと、ドワーフの人がちょっと息を飲んだ。
「アニスおばあちゃんドワーフだったよ」
「……アニスって、森の家のアニスか? お前さん、アニスの孫娘なのか?」
「うん」
「そりゃ悪かったな……。ちょっとつい最近、エルフに嫌な思いをしたもんだから……」
わたしはルイスさんを見る。
ルイスさんなら何か知ってるのかな……。
イリーナさんが言ってた都市封鎖とか20年前のダークエルフ弾圧とか、このサザランディア大陸のエルフって、印象悪い。
わたしはドワーフの店主をじっと見つめる。
そういう気持ちはわかるけど、メルツちゃんみたいに小さい子にそういう態度、よくないでしょ。
店主はわたしの視線の圧に耐えられず零した。
「ノースサーティーの廃ダンジョンで、エルフに監禁されたんだよ」
非常に危ないところで監禁されてた⁉
「店主さん、例のノースサーティーの廃ダンジョンで起きてた行方不明の事件に関わりがあるのかしら?」
わたしが尋ねると、店主さんは頷く。
なんでも、珍しいインゴットを見てもらいたいって言われて、ノースサーティーの廃ダンジョンに呼び出されたと思ったら、背後からいきなり殴りつけられて、気を失って、気づいたら牢屋みたいな場所に監禁されたとか。
でもこのドワーフの店主は鉱物系素材を操作できるスキル持ちだったらしく、檻は手で変形させて脱出してきたんだって。
店主が逃げる時に、なんか絶叫が聞こえてきて、この廃ダンジョンはやばいと思ったらしくて、その件をメルクーア大迷宮都市の冒険者ギルドに申告したのだそうな。
あんまりの叫び声に助けに行きたい気持ちもあったらしいけど……。
「あの廃ダンジョンの奥には禍々しい空気もあって、これは一人では太刀打ちできないと思ってな……」
そのころ、メルクーア大迷宮都市も行方不明者の数が増えていたから、怪我を負いつつも街に戻ってきたこの店主の言葉から、冒険者を派遣。
それで冒険者も戻ってこなかったらしい。
廃ダンジョンなんてそんな深くもないし冒険者にしてみれば、初級の実習場みたいなのにおかしい、そして何か禍々しい気配……ってことでわたしが依頼を受けたってわけか……。




