~12~(side殿下)
「行方不明って?男爵が?」
意味わからないんだけど。
魔術師団長によると、ここへ来る前にドルスコイ男爵に指示を仰ぎに行ったらしい。
ところが、他の職員によると、男爵は定刻を前に夫人からの伝言を受けるなり、
「緊急事態だ」
と帰ってしまったと。
まず図書館の一職員に魔術師団長が指示を仰ぐってどうなんだろうね。
まあ結果私も頼ろうとしてるけど。
「行方不明不明というか、所在不明なんです。城下町にいるのは確かなんですが、高速で移動しているみたいで、伝令も追い付けず」
何かあったのだろうか。
しかし、ドルスコイ男爵を当てにできないのはわかった。
「仕方ない。私が出るよ」
「っしかし!」
思わずため息が出てしまう。
「現状それ意外に案があるのかな?」
魔術師団の梃入れが必要だな。
皇帝陛下と協議しなければ。
弛めていた第一ボタンを止め直す。
「魔術師団と騎士団の半数は私と共に。残りは周辺の安全確保と確認及び、近衛に早急に連絡し皇帝陛下並びに皇后陛下の安全確保を徹底するように要請。避難が必要であれば誘導もだ。防御壁の展開も忘れるな」
「御意」
矢継ぎ早に指示を出し東の森に向かう。
目の前に現れた揺らぎに息を飲む。
狭間から今、正に、魔物が出現しようとしていた。




