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第2話 地上最凶最悪との戦いはここに完結する

ドォン!


ドォン!!


ドォン!!!


ドォン!!!!


腹に響く重低音が連続し、吐き出された魔法弾が標的(ターゲット)の四肢に直撃する。


古代遺跡で発掘した十二連装銃(ヴォルヴァ・ボギー)は弾頭にあらかじめ魔法式を刻んだ弾丸を発射し、詠唱や魔力の消費なしに任意の術式を発動させた。


撃ち放った四発には、巨大な魔物でも刹那的に動きを止める重力(グラビティ)の術式が刻まれている。


ドォン!


動きを止めた奴の眉間を狙って次弾を発射した。


パァン!


瞬時に展開された相手の魔力による障壁に弾かれるが、その瞬間に甲高い破裂音が鳴り響き、同時に閃光が迸った。


今度は、相手の視界と聴力を一時的に奪う麻痺閃光(スタンフラッシュ)の術式だ。


ガァァァァァ!?


動きを封じられ、視界と聴覚を奪われたドライアスが咆哮をあげる。


身体能力強化(ブースト)を使い、一気に間合いを詰めた俺は、こちらも古代の魔法具である空間収納の宝具(アンドヴァラナウト)から極細の双剣を顕現させた。


ドライアスの口内が光り、口からブレスが放たれる。


だが、先ほどの十二連装銃(ヴォルヴァ・ボギー)の五発がこちらの位置を掴ませず、さらに回避もできない状態に陥らせていた。


ブレスが地を割る前に腹の下をくぐった俺は、双剣を後ろ足の付け根にそれぞれ突き刺し、そこからすぐに離脱した。


双剣の柄頭から伸びたワイヤーを媒介にして魔力を走らせる。魔力が体内に突き刺さった剣先まで至ったタイミングで術式を展開。


極滅の紅炎(バニシングレッド)!」


ズドォーン!


耳をつんざく爆音が鳴り響く。


グアァァァァァー!


ドライアスの両足が付け根から吹き飛び、一瞬浮き上がった腹部が地面に叩きつけられる。


両手首につながったワイヤーを解除した俺は、跳躍して奴の背中に飛び乗った。


鱗の隙間に再び顕現させた極際の剣を差し込み離脱。先ほどと同様に、すぐにワイヤーを通じて魔力を注ぎ込む。


再び術式展開させた極滅の紅炎(バニシングレッド)が、一定範囲の鱗と体の一部を吹き飛ばした。


グォォァァァァァ!?


想定外の攻撃とダメージに暴れ回る相手から距離を置き、再び十二連装銃(ヴォルヴァ・ボギー)を手にした俺は、引き金を連続してしぼって残弾のすべてを吹き飛ばした背中の傷に向けて発射した。




「終わったぞ、ディゴエル。」


俺の目の前には、地竜ドライアスの凄惨な屍があった。


あれから12年。随分と時間がかかってしまったが、ようやく目的を果たすことができたのだ。


ドライアスは三国の国境にまたがる休火山地帯を根城とする気性の荒い竜種だ。200年に一度の割合で地上を徘徊し、多くの町や村を壊滅させる生きた死神と呼ばれている。史実や古い文献を参考とすると、残り三年ほどでその大厄災は訪れるとされていた。


冒険者ギルドに名を連ねる者にとって、ドライアスは最凶最悪のモンスターである。


厄災の年ともなれば、この地域に隣接する国の軍や騎士、そして冒険者ギルドに名を連ねる者たちは各国の王命の下に招集されてドライアスと戦う責務を負う。中には、今の時期から遠く離れた国へと逃亡する者すらいるくらいだ。


しかし、その大厄災の心配は去った。


12年前に俺がクビになったパーティーが挑戦して討伐に失敗した。メンバーは全滅し、ほとんどが即死だったと聞いている。


随分と時間がかかったが、ようやく彼らの仇を討つことができたのだ。


今回のドライアスへの挑戦は単独(ソロ)で担うことになった。だが、それは俺自身の意向でもある。


犠牲者を出さないための配慮ではない。


共に戦う者たちが邪魔だったからだ。


今の俺はかつての仲間たちの失敗を分析し、入念な下準備をしてきた。


その戦略は他の者が入り込む余地のないものだ。考えられる限りの魔道具を収集し、ドライアスの数少ない弱点を踏まえて出した必勝法。そこに他の人間が介入するとなると、巻き添えをくって死ぬことになっただろう。


薄氷を渡るような戦い。


それがドライアスを倒せる可能性を持った唯一の方法だったのだ。


戦いの最中に時限式の巻物(スクロール)宝珠(オーブ)を数箇所に設置し、自身を囮にしてドライアスの機動力と魔力を削るために足場を崩したり、魔力を削るのに二日以上の時間を費やした。


スクロールや宝珠は魔力と魔法を封印するための器だ。スクロールは術式のみが刻まれ、魔力は自前のものを利用する。一方、宝珠には魔石が内包されているため、そこに魔力を貯める事が可能だ。どちらも一長一短はあるが、任意で起動させるにはスクロール、時限式なら宝珠が使いやすいといえた。


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