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聖剣の担い手探し  作者: かざむき
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91.神の生誕祭

 真っ暗闇の空の下、帝都は明るく賑やかであった。


「神の生誕祭とは、凄いものだな。」


 トルクスは帝都を見下ろせる丘に立ち、そう呟いた。貴族も王族も関係なく、みんな平等に騒ぐ無礼講。ハガンも平民と仲良く、いや、そこは相変わらずと言った方が良いだろう。

 今日は生誕祭。教会の崇める神が生誕したことを祝う年に一度の祭日だ。屋台は無料であり、後日売れた分だけ教会が補填する。このせいで教会の財政は結構大変らしいが、現在においてこの宗教がタノラの国教足りえるのはこの生誕祭のおかげであると言っても過言であるためやめるわけにもいかないのだ。


「最近はみんな信仰とか関係なく、楽しく騒いでるだけなんだよね。」


 トルクスのつぶやきに反応を返す男が一人。

 この国の最高権力者の一人、法王ハルディーであった。流石に先程までの豪勢な法服ではなく、平民と何ら変わらないお忍びの姿であった。


「やあ、今日も調査お疲れ。」


 トルクスは先ほどまで魔骸陣営が何か仕掛けていないかを調査しており、今帰ってきたところであった。


「ちわっす。お前も開幕お疲れ様。」


 二人は本音で話し合えるほどの仲である。魔骸の案件で冒険者ギルドにハルディーはよく顔を出しており、同じぐらいの年頃ということもあってか馬が合ったのだ。


「主役がこんなとこにいて良いのか?」


「主役は神だぞ。俺の役割は開会の合図だけだ。第一、大抵の公務はノクスがやってくれてるし、俺は飾りやってるニートだよ。」


 ハルディーは前に出なければいけない場合を除いて、あまり公務をこなしていない。勿論サボりではないし、本人も努力している。しかし、単純に知識と能力が足りないのだ。腐りきった教会を一から作り直す音頭を取ることはできても事務作業ができるとは限らない。ノクステリアがいなければ容易く崩壊している体制である。


「そうは言っても、裏ではいろいろやってんだろ? 平民から法王に成り上がった男だ。お嬢様がバックについてますからだけで上がれるような甘い世界でもないだろ。」


「ははは、そう言われると照れるな。でも事務作業はからっきしなんだよ。ノクスがいたから目指したし、ノクスがいなければ手も届かなかった訳だしね。良い相棒を持ったよ。」


「なるほど、法王様はロリコンと。」


「俺とノクスはそこまで歳は離れて無くない? と言うか恋愛的な面では見ないようにしてるし。」


「私は問題ございません。この身は既に法王様の物にございます。」


 いつの間にか、ハルディーの後ろにはノクステリアが立っていた。ハルディーはビックリしてフリーズしている。どうやら、生誕祭での一通りの仕事が終わったらしく、仕事が終わるや否や、ハルディーの下に一瞬で駆けつけてきたようだ。


「よっ、お勤めお疲れ様。ノクステリアさん。」


「いつも法王様がお世話になっております。トルクス様。」


 ハルディーとトルクスの間で交流があるなら、勿論トルクスとノクステリアも結構な頻度で会っている。ノクステリアとしてもトルクスは能力、性格、そして何より性別的にも警戒すべき相手ではないため友好的な関係が続いている。


「ハルディーとノクステリアさんってどういう関係なんだ? 生まれの立場も随分違うし、ハルディーはタノラの生まれってわけでもないんだろ。接点がわからなくてさ。」


 トルクスは薄々気になっていたことを聞く。


「そうだね。きっかけは俺が首切り役人のバイトをしたことかな。」


「はい?」


 唐突な情報にトルクスはポカンとする。


「ご存じかもしれないが、俺は結構辺境の国の出でさ。俺も明日を生きるためにいろいろしてたんだよ。」


 ハルディーは自身の過去を語り始める。


「その一環で首切り役人もしてたわけ。俺って力強いじゃん? だから、子供の頃から技術がなくても人の首を剣一本で簡単に跳ばせたんだ。」


 簡単に言うが、それはいくつもの命を奪ってきたことを意味する。まあ、それを重荷と感じるか感じないかは本人次第であるが。この時代においては戦いが日常的な世界であるため後者が圧倒的に多いのは言うまでもない。


「で、俺が処刑したうちの一人にスターズリー家の当主、ノクスの叔父にあたる人がいたんだ。教会の奴らとしては辺境の地で一人寂しく消し去ることが彼の名誉を一番踏みつぶす手だと思ってたんだろうかね。」


「そんな教会って色々ヤバかったのか?」


「組織というのは大抵そういうものです。政敵を排斥し、自分の派閥を増やす。程度の差はありますが、健全不健全関わらずどこでも行われていることです。」


 トルクスの質問に答えたのはノクステリア。ハルディーは当時の教会の事情を知っている上に戦っているが、直接彼らの日常的な業務を見ていたわけではない。対するノクステリアは少ないながらもその光景を実際に見ている。そのためハルディーとノクステリアの抱く過去の教会に対しての認識には多少のずれがあり、ノクステリアが教会の内政に力を注いでいるのはその過去をよく知っていることが一つの要因となっている。


「まあ、そんな感じらしい。で、ノクスの叔父さんとちょっと話せたんだけど、その過程でスターズリーの屋敷に一人残されている姪の世話をしてほしいってね。報酬はスターズリーの持つ屋敷を自由に一つと一生遊べる大金。」


「その結果私は法王様と出会いました。」


 取り潰し寸前とは言え、貴族の中でも名家。そんなところに怪しい少年が突然訪ねてきた。本来なら門前払いされるところではあるが、偶然が重なり二人は出会った。


「そして、いろいろあって法王になりました。最近成人したにしては濃すぎる密度だよね。」


 ダッハッハッハと気楽に笑うが、トルクスはアハハと愛想笑いを浮かべる。


「そのいろいろが聞きてえよ。」


「それはまた今度ということで。一夜で話すには勿体ないだろう?」


 一夜で話すには時間も足りないし、気楽な気分で話せることでもない。それに何より―――

 

「キリがいいしね。」


 ハルディーはトルクスの背後に視線を送る。そこにはトルクスが戻ってこないと探しているカナやアズラの姿がある。


「こんな日に遊ばないなんて嘘だ! この国、いや、俺の自慢のお祭りだ! 盛大に楽しんで行ってくれ!」


 ハルディーはトルクスの背を押すが、そんなハルディーの手をトルクスは掴んだ。


「そうだな。一緒に行こうぜ!」


「そこは旅人三人水入らずじゃねえの?」


 ハルディーの言葉にトルクスはニッと笑ってこう反論する。


「友達を連れて行かないのは嘘だろ。ノクステリアさんも来るよね?」


 トルクスはノクステリアにも声を掛ける。

 ノクステリアは少し考えてから、何を思いついたかにやっと笑った。


「法王様、いえ、ハルディー。今日は以前のように行きましょう。今日は無礼講です。肩書は不要でしょう?」


 年相応ないたずらっ子。彼女の頭にはハルディーをからかい倒すための策がいくつ浮かんでいるのだろうか。


「そう言われると弱いな。じゃあ、一青年として俺も楽しむか。」


 ハルディーは参ったと言わんばかりに手を上げ、トルクスはそんなハルディーとノクステリアを連れて、カナとアズラのもとへ向かう。

 役を忘れて年相応の只人に戻る。役目を負わされた彼らにはこのような時間も必要だろう。




 

一年ぶりの更新。

勇者日記(毎日投稿してる作品)は気が付けば五百日目をゆうに越えていた。

こっちの話の世界観を固めるために書き始めたのに、勇者日記の方がメインになりつつ、いやメインになった現状にあります。

どうしてこうなった?(自業自得)

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