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聖剣の担い手探し  作者: かざむき
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89.アズラの日常

 多くの人で賑わう冒険者ギルド。

 人の出入りが激しいロビーを進み、階段を上がったところの正面には大きな扉が取り付けられていた。その奥には多種多様な武具で飾られた部屋があり、そここそこのギルドを仕切る執務室であった。多くの人員で働けるようにと用意された机と椅子はガランとしており、使われているのは最奥にあるギルドマスターの机だけ。


「ああ、剣を打ちてえ!!」


 ギルドマスターであるアズラはその部屋でそんなことをボヤキながら、今日も今日とて書類仕事をしていた。順調に進む冒険者制度の浸透と共に爆発的にアズラの仕事は増加していき、今では睡眠時間等の生存に必須な作業を以外の時間は仕事に没頭するという生活を送っていた。

 仕事の補佐をしてくれる人間を募集しているのだが、なかなかこの仕事を手伝えるだけの能力のある人材が集まらず、アズラが頑張っているのが現状であった。


「人員不足をなんとかしねえと俺が死ぬな。」


 そんなことを言いながらも彼の手は一切止まっておらず、その処理速度はこの作業に慣れた常人の数倍はあるだろう。


「ギルドマスター、近郊の森に推定ランク5レベルの魔獣が発生したようです。」


 報告係の男がかなり焦った様子で、この執務室に入ってきた。


「ランク5! マジで言ってんのかよ。」


 アズラは大声で聞き返すのも無理はない。

 冒険者ギルドでは相手の脅威度によって0~9の数字を定めているのだが、一般的に一人前の強さとされる冒険者が討伐できる相手をランク3定められている。そして、ランク5辺りの強さで言うならば、迷宮で修行を終えたあとのカノン程度の実力を必要とされる相手であり、不用意に冒険者を派遣した場合、大量に死者が出るのは目に見えていた。


「今フリーのランク5の冒険者はいるのか?」


「今は出払っており、ランク4の冒険者もおりません。」


「わかった。対応を決め次第すぐに動く。もとの業務に戻っておいてくれ。」


 男の報告にアズラは頭を抱える。アズラ自身の実力はランク4相当であるため、自分で行って討伐するというのも難しい話であった。しかし、その心配も杞憂に終わる。


「ランク5の魔獣は通りすがりの皇帝によって討伐されたとのことです。また、本人の希望により報酬はいらないとのことです。」


 すぐに報告係の男は戻ってきて、討伐の報告を行う。


「そうか。ありがとう。業務に戻ってくれ。」


 書類仕事以外に日常的に起こるトラブルの対応。これが一番アズラの胃を痛めていた。今日のように通りすがりの皇帝や法王によって処理されたりすることもあるのだが、大抵はそうもいかない。そうなったときの処理、軍隊への報告や人員の派遣などそれを決めることもアズラが今は一人でやっていることであり、アズラが倒れるのも時間の問題となって来ていた。


「今日の業務は昼から採用面接か。不出来な奴を採用するのは効率が返って悪くなるから、気を付けないとな。」


 今日もアズラは大きなため息を吐く。


「えーっと、希望役職は事務仕事の短期バイト、名前はペテテル、種族は悪魔。動機はお嬢様からの依頼か。備考欄には、えーっと何々? しばらく手伝うからさっさと人員確保に専念しろ、か。採用だな。」


 面接をする間もなく、アズラは採用印を押す。

 採用面接は始まる前にその意味を失くした。



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