87.冒険者ギルド
テスト前なのに勉強が進んでない!!!
ヤバいです!!
トルクス達がタノラに来て数週間が経った。やたらと大物に出くわす初日から、トルクスとカナ、アズラは城に行ったり、空き地を買ったり、教会に行ったり、冒険者ギルド支部を建てたりと大忙しの日々を送っていた。
「剣の手入れをして欲しいってか?」
そして、現在買った空き地は冒険者ギルドとして黒騎士によって建設が進んでいるのだが、空き地の端の方にちょっとした列が出来上がっていた。
「ああ、いいぜ。その台座に置いてくれ。すぐ見る。そこにプランがあるからどれにするか決めてくれ。まあ、一番高ランクなやつだろ?」
列の行きつく場所は小さな鍛冶場。会話と言うにはアズラの声しか聞こえず、依頼人は一切声を出していない。
「剣は明日取りに来てくれ。あ、そうそう、冒険者登録してくれたら割引するぜ。―なんだそれって顔だな。まあちょっと聞いてってくれや。」
アズラの語りは止まらない。
「今まで、狩人やら戦士やら採集者やら職業(自称)があっただろ? で、それだと只の自営業とかに括られて冷粥を食わされたこともあっただろ? なんで、これからはそれらを一括して冒険者っていう新しい括りにしようっていう取り組みが起こってるわけ。少なくともタノラではそれが身分の証明になる。兼業とかもできるし、登録だけしてってくれや。」
完全なアズラのペース。依頼人はこの後、得するならと、隣の仮設テントに行き、冒険者登録をした。
◇ ◇ ◇
「アズラお前凄いな。」
トルクスは今週の冒険者に登録した人数を見ながら驚いていた。
「だろ? 俺はなんやかんや知名度や信頼があるからな。その俺の武器が割引になるなら飛びついてくるやからは結構いるんだよ。」
アズラはギルドマスターの席にふんぞり返りながら自慢げにそう言った。
トルクス達が必死に広報した数週間の登録数はアズラの数日に完膚なきまでに敗北しており、トルクスは一周回って清々しい気分になっていた。
「まあ、こっからが正念場だ。冒険者ギルドの売りはその利便性だ。依頼者と引受人の円滑な取引、ランク制の導入による事故の抑止。そして、正式な職業としての立場の安定化。」
今まで個人でやっていた役所とかでやっていた面倒な依頼手続きなどを冒険者ギルドで引き受ける。では、その事務仕事は一体誰がいるのだろうか。
雇うか? それには教育時間が必要だ。いずれはそうするにしても初動が遅い。
役所の人を引き抜くか? それでは今までと何ら変わりない。名前が変わるだけだ。人手もきっと足りないだろう。何より、両者ともにいざこざが起こったときに止めることができない。
読み書き計算ができて、体力が無尽蔵にある、戦いにも強い集団。そんな都合の良い人達なんてそうそういる訳が、・・・いたわ。
「アズラ。大体の建築は終わった。細かい内装について、俺はセンスねえから、しばらく休憩しておくぞ。」
トンカチ片手にぞろぞろと黒騎士が部屋に入ってくる。無限の労働力がそこにはあった。
「よく考えたら異質ですね。一国の王が分身して下働きって。」
「まあ、起こしたばっかりの国なんだ。王が頑張らず誰が頑張るんだ。」
カナの呟きに黒騎士の一人が反応した。
「確かに。でもこのままだとロット王だけに頼っている国になるくない?」
「それは問題ない。俺やトルクス、アルマスのような特異な存在を生み出すための土壌だ。一人の怪物は数千数万の凡人を凌駕する。俺が凡人に霞むぐらいの天才が現れたら勝ちよ。」
「それって無理じゃない?ちなみにロット王が霞む怪物ってどれくらい?」
「そうだな。お前らが知ってる人型って意味でいうなら、ヘーテス辺りだろうな。あいつには俺レベルの数の暴力は意味がない。カトやペテテルなら話は別だがな。あいつはおかしい。特に本業をしているときは最強だろう。いや、最強の一角だろう。あとはそうだな。邪竜バーバルム。あれが完全体としてあったのであれば俺は間違いなく敗北するだろう。カナお前には期待しているぞ。」
ロットがなぜ言い直したのかは疑問が残るが、大した理由ではないのだろう。そう言って、ロットは黒騎士の大群の中に戻っていった。
「何か私期待されてる?」
「当たり前だろ。あとちゃっかりロット王と同格判定くらった俺は喜んでいいのか?」
「ロットレベルでも戦力にならない可能性がある仮想敵に悲しむべきだと思うぜ。」
「そうね。」
アズラの警告も含めた言葉にトルクスとカナは将来が憂鬱になってきた。




