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聖剣の担い手探し  作者: かざむき
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81.知性獲得

「魔獣が、人攫いを、ですか?」


 アズラにカナは信じられないような顔をしてそう聞き返した。

 アズラも若干信じ切れていない状態で頷く。


「あの殺すことしか脳のない奴らがか? どこの奴のホラだよ。」


 トルクスに関しては完全にそのことに否定的だ。


「知らねえよ。でも村の奴らは確かに小型の魔獣が村の女を攫って行ったってところを見たって言っているんだよ。」


 アズラ達は現在、ウォルフとタノラの国境付近に位置する小さな村に来ていた。

 そこでは少し前から闇夜に紛れて、何者かによって、人が殺されたり、攫われたりしている事件が発生していた。殺されていたのは例外なく男であり、女に関しては攫われていた。

 村人たちは人攫いの山賊の仕業と見て、夜になると見回りを強化していたのだが、つい先日、小型の猿みたいな魔獣が女を攫って行ったのを見たという。

 そして、アズラ達が問題視しているのは魔獣が人をわざわざ攫って行ったというところだ。

 魔獣に知性はなく、ただただ、殺すことだけを目的とした怪物。考えて動いていてもそれは己の命か、目の前の生物を殺すことだけであり、人を攫うという行為はどう考えてもその二つの条件には当てはまらなかった。

 邪竜バーバルムや魔骸となったシャルは知性を持っているが、バーバルムは魔に転じた者、シャルは魔を乗っ取った者であり、魔として生まれ出た者ではない。故に、自然発生した魔獣に知恵があるなど異常以外の何物でもなかった。


「取り敢えず、見回りをしますか。」


 トルクスの言葉で会話は終わり、三人は見回りの準備を始めた。


◇ ◇ ◇


 村のすぐ隣にある山。

 一部の山道を除き、ほとんどの部分に人の手は入っていない原生林であった。

 トルクス達は最近できた獣道を進み、山の奥へと進んで行く。

 村のほうにはもしものことを考えて、カナの魔緑騎士を数体置いて来てある。


「山賊のいた後があるな。」


 アズラは周囲を見渡し、木の上に残っていた痕跡を見つけた。


「もう出ていたって感じか?」


「いや、これは何かに襲撃して壊滅しているな。」


 トルクスの質問にアズラは木の上から答えた。彼の視線の先には崩壊した山賊の拠点があった。


「これは魔獣の仕業ね。」


 カナはその拠点に残った爪痕や魔の残滓を読み取る。こういう仕事はカナの得意分野であり、これが人の痕跡とかになるとアズラのほうが得意だったりする。


「それにしては、武器や道具が全くないな。」


 アズラは特にボロボロになっている箱やタンスを確認している。剣や槍、包丁に至ってまでこの拠点には一切が残っていない。魔獣に襲われたにしてはおかしすぎる。


「壊滅した後に盗賊でも来たんだろ。気にせず進もうぜ。」


 トルクスは軽く聖光で辺り一帯の魔の残滓を一掃して、先に進もうとする。


「最近あいつ、どんどんせっかちになっている。」


「一人で大抵の相手を相手できるからね。前は慎重に周囲を警戒していたのにね。」


「周囲の探索についてはしっかりしてると思うぜ。あいつの眼は良いからな。状況把握は一番できてるだろう。」


「でも、見えてるだけで読み取れてないと思う。だって昔からグラフとかの読み取りは嫌いだったらしいし。」


「うっせー!」


 カナとアズラが愚痴っているとトルクスの怒号が飛んでくる。

 二人はやれやれといった感じでトルクスの後を追った。


◇ ◇ ◇


 探索を始めて五時間。辺りは完全に暗くなり、魔獣が活発に行動を始めた頃、トルクス達はある洞窟を見つけた。


「これ、当たりじゃね。」


「ああ、当たりだ。ヒュドラには遠く及ばないが、魔の気配が強い。」


 洞窟からは魔の気配が溢れ出し、それは人間であるアズラにもはっきりと感じられる程であった。


「取り敢えずだな。」


 トルクスは剣を抜き、聖光を洞窟に放つ。物理的な効果は持ち合わせていないので、洞窟が崩落したりすることはない。


「じゃあ俺はここを見張っとくわ。」


 アズラはそう言うと、洞窟の前に鍛冶場を展開する。洞窟の中で何かあったとき、生身の自分はどうすることもできないと考えての判断だ。

 普通に考えるなら全員で挑んだ方がいいのかもしれないが、洞窟攻略に竜と聖なる力を振るう怪物がいればオーバーキルも良いところだろう。


「じゃあ、少し待っててね。」


 カナとトルクスもその判断は正しいと思い、二人で洞窟探索を始めた。


「昔、人でも住んでたのか。」


 洞窟はあまり入り組んでおらず、分かれ道も少ない。そして、松明を置くところが壁に設置されていることから、人がいたことが推測される。

 そして、防具や布切れが不自然に散らばっていた。


「まさかとは思いたいわね。」


「ああ、全くだ。」


 二人は防具をつけていた魔獣が聖光を浴びて、魔獣だけが消滅したと推測する。これが当たっていたとするならば、魔獣は自身を守り()()()()ために、防具を装備していたということ示す。

 

 二人は更に奥へと進む。

 壁や床には明らかに最近壊されたであろう道具が転がり血の跡も付いている。

 さらに進むと鉄の扉が現れる。


「嫌な予感がするな。」


「私もよ。」


 二人が感じたのはヒュドラや邪竜と相対したときのような本能からくる危険信号ではなく、嫌悪感という理性からくるものであった。


 トルクスは剣を抜き、勢いよく扉を開けた。


「ふざけてやがるな。」


 トルクスは眼の前に広がる光景に一言。カナは反射的に顔を背けて、その光景から目を逸らした。

 トルクスの眼に映るのは、腹が破裂した女性達の死体であった。損傷は腹だけでなく、体の至る所に見られ、明らかに殺すことだけが目的であるような傷ではなかった。

 あまりの光景にトルクスの思考は冷静になる。

 そして、その眼はしっかりとこの奥にいる緑肌の人型の魔を捉えていた。



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