80.救世之剣とヒュドラ退治
冬休みが終わってしまうではないかあぁぁぁぁぁ!!!!!!!
泥はトルクス達を認識すると、一気にその体積を膨張させ、津波となって襲い掛かってきた。波は円形に広がり、森を飲み込み焼いて行くことが容易に想像できた。
「アズラ、鍛冶場を展開しろ。カナ、お前はその空間を広げてその空間を隔離しろ。」
それをいち早く察したトルクスはすぐに指示を出し、二人もすぐさま指示を行動に移す。
「鍛冶場展開!」
「空間拡張、異界化」
アズラは鍛冶場を展開し、カナがその空間を泥全体をカバーできるまで広げ、異界化することで泥の広がりを阻止する。
また、トルクスはその空間に入っておらず、外で剣を振るタイミングを待つ。
「トルクス、できたぞ。」
カナとアズラは転移で異界化された鍛冶場を脱出し、それを見てトルクスは異界化された空間に向かて剣を振るう。
「聖光よ。あまねく邪悪を撃ち滅ぼせ!」
剣からは光の奔流が放たれ、その空間をまるごと消し飛ばす。
「やったか?」
しかし、アズラがお決まりのフラグを建ててしまったせいなのか、それとも単純に火力が足りなかったのか、泥の大部分を消し去ることは叶っても、核となる泥の中心部は消えていない。
すぐさま泥の生産は始まり、それと同時に泥からは大量の魔が生産され始めた。
「きりがねえな。」
アズラは押し寄せる魔の大群を相手に大暴れをしている。相手に合わせ、流れるように武器を持ち替えていく様は、最早芸術の域である。押し寄せる魔に対して、打ち倒した魔の数は圧倒的に少ないが、魔の注意を引きつけるという意味では十分な働きであると言えよう。
その上空ではカナが魔法を行使している。
「緑の怪物を見せてあげるわ!」
カナの声とともに、カルワルナで猛威をふるった植物の怪物を出現させる。緑の怪物は湧き出る魔を片っ端から襲い吸収していく。また、バーバルムの影響によってか、触手の一部は龍となって魔を喰らい尽くす。触手は主に泥を囲むように配置され、魔をこの領域より逃がさないようにしている。
そして、トルクスはその光の剣を持って、泥の中心部にて聖光を放ち続けている。生産される泥の九割以上がこの聖光の相殺に当てられていることを考えるとトルクスの働きは十分すぎると言えるだろう。さらに言うと、泥の方はほんの少しずつではあるが生産量が減っている。このままの状態が続けばトルクス達の勝利は確実であると言えるであろう。
だが、しかし、事態はそううまくは動かない。突如として、泥と魔は自身をエネルギーへと変換し、ここ一帯を巻き込んで自爆しようとする。
「くそが!」
トルクスは咄嗟にカナとアズラを超音速で回収し、その場から大きく離れる。
「ヤバいヤバいヤバい!!魔力の高まりはカルワルナの時以上よ!」
カナによるとそのエネルギーの総量はカルワルナでおこった魔獣発生に匹敵するかそれ以上らしい。
「って、ことは蛇ゴリラ以上の奴が出てくるってことか?」
アズラはカルワルナ近郊に現れたあの怪物と同レベルの怪物の出現を危惧する。
「下手したらそれ以上ではないか?」
トルクスはその眼で魔力の高まりを見て取る。自爆のエネルギーは外ではなく内側に向けられており、何かを圧縮しているようにとらえられた。
そして、自爆は起こった。もともと広がっていた泥の面積を考えるととても極小でだが、凄まじいエネルギーの物体が出現する。
トルクス達は何が起こっているのか何が目的であるのかがわからないため、手出しができない。
そして、エネルギーは形を固定化させていき、物質へと変換されていく。
「まさかとは思うが、一切の無駄なしに一体の生命体を作ろうとかしてねえだろうな、、、」
アズラはその光景を見ながら恐怖を覚える。
エネルギーは一体の怪物へと変貌していく。
「魔龍なんて冗談じゃねえぞ。」
トルクスは冷や汗を垂らす。バーバルムほどではないにしろ、そのエネルギー量は規格外と言っても過言ではない。
怪物の表面は漆黒の龍鱗に覆われ、九つの長い首をを持っている。家すらも丸呑みできる程の大きな口には細かな歯がびっしりと並んでいる他に、蛇の毒牙のように大きく鋭い歯があった。名は九頭龍いや、ヒュドラと言ったところであろうか。
グラァァァアアアア!!!!!!
カナは完全に竜体に変化し、ブレスを怪物に放つ。
「えげつねえな。」
あまりの威力に、ブレスが直撃した地点には巨大な爆発が起こり、周囲には濃密な魔気が充満する。蛇ゴリラならば一撃で粉砕されていたであろう。
だが、龍はそれほどやわではない。逆にその魔気を食らい更にその力を増していた。
「カナじゃ相性が悪いか。」
トルクスはそう呟くと、一人でヒュドラに突っ込んでいく。
「うおおおお!!!」
光体化した剣は容易くヒュドラの首を落とし、瞬きの間で、9つの龍の首は地に落ちた。
しかし、ヒュドラは死んでいない。首はすぐさま消滅し、傷はすぐに再生する。更に再生するだけではなく、枝分かれし、龍の数はニ倍になっている。トルクスの剣捌きの速さによって確認が難しいが既にその龍の数は三桁に達しているだろう。
「不死身かよ。」
アズラの言う通り、ヒュドラは不死身に近しい存在だ。あらゆる攻撃、あらゆる干渉に対して塵一つとして残ってしまえば即座に再生し、再生前よりより強く強大となる。
「我が身、我が剣に触れし万象よ。」
トルクスは自身を剣を光化させ、意志あるエネルギーの塊となる。
「光へと還り、我が力となるがいい。」
トルクスの周囲の空気、大地、重力、あらゆる物全てが光となってトルクスへと集まっていく。
「汝は魔。故に、、、いや違うな。」
トルクスはカナをちらっと見て、言い直す。
「お前は邪魔だ。故に我は汝の存在を許さず。」
瞬間、トルクス付近の空間が暗黒で包まれる。空間内のエネルギーは一点に集まり、洩れ一つとして存在していない。
そして、今この瞬間、虚剣の虚は聖光によって満たされる。
「これ為るは邪悪を滅す光の刃。」
今この瞬間において、聖剣は新たに誕生した。アルマスの持つ聖剣が魔王を打倒し希望を与える剣であるならば、こちらは魔を排し、人の世を救う救済の聖剣。
虚剣とは持ち主の持つ固有の内なる世界と同じ世界を宿す。故に、担い手と同質の世界を持つ剣ならば、その担い手の名がその剣の銘にふさわしい。
「救世之剣」
暗黒は極光へと変わり、巨大な光の柱がヒュドラのブレスと衝突する。聖光の特性は魔と衝突すると対消滅をするということ。つまりに総量の多い方が打ち勝つということ。そして、一定量のエネルギーを持つ聖光を打ち消す為に必要な魔のエネルギーはその数十倍である。よって、
グラァアアアアア!!!!
ヒュドラは全身丸ごと聖光に飲まれた。
先程も言ったが、ヒュドラの不死性は大概で、塵一つも残れば復活する。だが、それもアルマスのような完全な不死にはほど遠い。なぜならば、塵一つも残らなければ死んでしまうのだから。
そうして、光に飲まれたヒュドラの抵抗は虚しく、ヒュドラは完全に消滅した。
これからもゆっくり投稿していきます。




