79.魔骸の残泥
どんどんと投稿頻度が減っていてすいません。
「村長さん。俺達への依頼はこれで最後ってことで良かったな?」
「おお、これはトルクス様。はい。これで依頼は達成でございます。また明日よろしくお願いします。」
時刻は五時頃、トルクスは村の役所で依頼の報酬を受け取って宿屋に戻った。
「アズラ、カナ。帰ったぞ。」
「お帰り~。」
「今新作作ってるから先に飯食っといてくれ。」
カナは邪竜より得た知恵で魔法を使い、晩御飯の料理をしていた。アズラは鍛冶場を出現させ、鉄を打っている。最近、鍛冶場の外側の大きさを変えずに内部の空間を拡張する技や建物の一室を鍛冶場に変質させるという技を覚えたらしい。
トルクス一行は昨日野宿の後、昼頃にこの村に到着し、そこからトルクスは近くの魔獣を討伐しに回っていた。
「俺に飯は必要ないぞ。」
「食べた方が精神的にはよろしいとヘーテスが言っていたのを忘れましたか?」
「別に良いだろう?精神なんてすぐ回復する。」
トルクスは飯をほっといて虚剣の手入れをしようとする。
「ロット王はしっかり食べてたわよ。あの人曰く、人としての生活習慣は極力捨てないことが強さの秘訣なんだって。」
「わかったよ。」
トルクスがそう言うと、ポンポンポンと椅子、机、食器が現れて、晩御飯が配膳されていく。
「あんたも中断してお食べ。」
ついでにアズラも強制的に作業を中断させられて、椅子に座らされている。
「それじゃあ、」
「「「いただきます。」」」
三人は晩御飯を食べていく。
「この町じゃ剣があまり売れそうじゃねえわ。でも包丁とかは上々だったぜ!」
「金のある狩人とかはほどんど外に逃げて行ったようだからな。お前の剣はどちらかというと高級品だろ?売れる訳ねえよ。」
「そういうトルクスはどうだった?」
「付近の魔獣か?ウサギ、猿、狼と多種多様だった。特殊個体とかはいなさそうだが、面倒臭いことには変わらないな。」
「それだったら、私が一カ所に集めようか?」
「トラウマを掘り起こすようなことをしてまた怪物化されたら厄介だし却下で。」
「心配し過ぎだよ。」
食事中の情報交換は日課となっている。
食後三人は少し休憩した後、夜の見回りを始めた。魔獣は獣の特性からか夜行性の物が多い。そのため夜に襲撃されて滅ぶ集落は少なくはない。
「本当に大した奴らはいねえな。」
アズラは魔獣の首を跳ねながら退屈そうにしている。
「だったらなんだ?前の牛狼が恋しいのか?」
「いや、あそこまではいらん。」
この近辺では最上位に位置する獣達も彼らには歯が立たない。一応、純人間であるアズラなら可能性という感じであろうか。
「それにしてもやけに静かだな。」
アズラの言葉でトルクスとカナは耳を澄ませてみたが、今まで旅してきた森とあまり、大差ないように感じた。
「勘って奴だよ。そんな気がしただけさ。」
「静けさと言えばお前、初めて出会った時よりも口数減ったよな。」
「確かにアルマス達も全部察せられているようで口を出す暇がなかったとか言ってたよ。」
唐突なトルクスの疑問にカナも乗っかった。トルクスの質問に少しアズラは考える。
「そうだな~。あれは興奮状態だったからとも言えるが、何よりもお前らがどんどんと底知れない存在になっているからというのが大きな要因だろうな。」
「竜とか精霊とかか?」
「カナはあのおかしな竜を宿し、トルクスお前は聖光を扱う精霊に近い存在だ。人だった頃の様には読めんよ。第一、商売でもないんでね、会話の主導権を躍起になって取りに行く必要がないんだよ。」
トルクスとカナはその説明に納得しながら、突如現れてくる魔獣を殺戮していく。
時刻は七時、魔獣はこれからどんどん増えてくる時間だろう。しかし、魔獣の数は増えるどころか減っている。魔獣にまともな知恵はない。特に怯えや恐怖を持つなんてことはまずありえない。そのため、トルクス達を恐れているという線は考えられないだろ。そう考えると可能性として考えられるのは、元から魔獣が少ないかそれとも、
「この先で魔獣すら殺戮してるような奴がいるんじゃないか?」
「俺達みたいにか?」
「んなわけねえだろ、トルクス。怪物だよ。」
アズラの言う通り、魔獣を殺戮する怪物がいる線を警戒すべきであろう。ヘーテスのセンサでは此処一帯に特殊個体はいなかったことを考えるに新たに生まれたかそれとも移動してきた奴であろう。
「ちょっと偵察してみますね。」
カナは植物に魔を宿らせて使役し、全方向を探索させる。
「魔を以て魔を制すってか?」
「仕方ないじゃん。私はまだ龍を使役できるほどの力も持ってないし、何よりもその龍も魔に染まってるから。仕方なくこれを使うしかないのよ。」
カナの腕が少し黒く変色して、地面を触ると禍々しいオーラを宿した鎧を着た木偶の騎士が現れた。
「こいつ俺かそれ以上に強そうだな。」
アズラはそれを見て、カナに宿った邪竜の理不尽さを再認識する。
「魔偶騎士って名前らしいよ。」
カナは他人事のようにそう言った。雰囲気からしてカナと邪竜は会話ができるような状態にあるようだ。そこで色々な術や力の使い方を教えて貰っているらしく、仲も良好のようだ。それにしてもどういう風の吹きまわしだろうか。あのバーバルムが人と仲良くするなど。まあ、金輪際、直接世界に干渉するつもりもないようなので、育成ゲームでもやってるつもりなのだろうと推測する。
「で、どうだ、探知の結果は?」
しばらくしてトルクスはカナに質問した。
「いいタイミングだね。丁度北の方角に向かっていた数体の反応が消失したよ。」
魔偶騎士の反応が消えたということはかなりの強敵であろうことが推測される。
「警戒態勢に入れ。」
アズラの一声でトルクスは虚剣を光の剣に光化させ、カナは翼や尻尾、角を生やして竜人状態になっている。
「よーし、俺に合わせて北上するぞ。」
アズラも武器を虚剣に持ち替えて、三人は北上を始めた。
「正直な話、アズラは足手まといにならない?」
「馬鹿か。この中で空間侵食系にたいしてのまともな対抗策も持っている奴はいないだろ。」
「アズラの言う通りだ。相手のフィールドで戦うのは極力避けたいからな。」
そうこう北上していると、周囲の木々が無くなっていることに気が付いた。
「お出ましだぜ。」
アズラの言葉と共に周囲から触手のように襲い掛かって来る泥が現れ始めた。
「トルクス、周囲の被害を考えるな!」
アズラの一言でトルクスは剣の光を強める。カナはすぐさまアズラを掴んで空に逃げる。
「我が一斬は万魔を滅す光の刃。」
その瞬間、その光は周囲を昼に変える。
「死ねぇええええ!!!!」
トルクスは剣を大きく振るった。周囲の木々や泥は消滅し地面は抉れ、まっさらな平地が森の中に出現した。
「化け物か。」
トルクスは目の前に存在する。巨大で禍々しい泥の塊に対してそう呟いた。
彼らは知らないことではあるが、この泥は先日アルマスとハクが交戦したシャルの泥と同一の物であった。
そろそろ就活を始めなきゃいけないんだよな~。
だるいな~。でもやらんとな~。




