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聖剣の担い手探し  作者: かざむき
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75.脱走奴隷

◇ ◇ ◇は場所または時間の移動のどちらかまたは両方を示しています。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」


 石造りの入り組んだ通路を少女は走る。行く手を阻むように配置された棘の障害物は大人を想定して雑に大きく作られていて、少女の体はスルスルとその隙間を抜けていく。


「どこ行きやがった!!っち、、買い手が決まってるっていうのによ!」


 男の焦った声が通路に響き渡る。少女は響き渡る声からより離れるように進んで行く。

 男の発言から考えるに男と少女は奴隷商と奴隷という関係であると考えられる。


「いたぞ!捕らえろ!!」


 男の部下が通路を走る少女を発見する。


「撃ってかまわん、兎に角捕らえろ。」


 男の部下が右手の拳を前に突きだす。


「ロケットパンチ!!」


 男の右手首辺りが、ドカンと爆発して物凄い勢いで拳が発射される。


「ん!!」


 少女は一瞬の迷いもなく回避行動に入り、ロケットパンチは少し奥の棘にぶつかって爆発を起こした。周辺の棘は粉々になったが通路は頑丈なようで、ただ、少女の行く道を通りやすくするだけになった。


「外れました!」


「バカ野郎!道を作ってどうする。外に出られたら信用がパーになるだろ!さっさと出口の守備に回ってこい!」


「はい!」


 男の部下はその場から離れていく。男はその場で立ち止まっていた。どうやら、ここは出口への一本道のようだ。部下は別の通路から一旦外に出て、出口で少女を待ち構えるつもりらしい。

 男は手を壁に当てる。その瞬間、壁から生えていた棘が成長し、どんどんと通路を塞いでいく。


「殺してしまっては意味がないな。」


 男はある程度棘成長させた後、生成を止めた。これにより、少女がこちらに帰ってくる道はなくなった。


「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」


 少女の動きには迷いがない。棘に阻まれた道の隙間を一切スピードを落とすことなく進んでいく。


「何でそんなけ体力あるんだよ。」


 出口に待ち構える男の部下は今度は今度は拳ではなく、指を飛ばす。さっき飛ばした拳は既に元通りとなっており、治癒能力もセットで持っているようだ。


「自身の身分を受け入れろ!!」


 少女の体や服は爆発で飛散した瓦礫で傷だらけだ。それでも少女は止まらない。


「糞が!!」


 出口まで残り数メートル、男の眼前に少女が迫る。男は自身の腕を盛大に爆発させた。


◇ ◇ ◇


「ここが事件現場?」


「ああ、奴隷が逃げたらしい。」


「飼い主はなにやってんだよ。」


「怖いわ~」


「爆発系の能力を持ってるらしいぞ。」


 商店街の一角が野次馬で賑わっている。その周辺には大量の瓦礫が飛び散り、周りの店にも大きな影響が出ている。


「信用ガタ落ちって感じか。商売はもう無理だな。」


「商売する奴すらもういねえよ。」


 ここは奴隷商店だったらしい。地下には少し大きな収容施設があったらしいが、主人部下、取り扱っていた奴隷全てに行方不明らしい。


「マジで?あのコンビって正直、そこらの傭兵にも引けを取らないのに?」


「マジ、なんなら爆発に関しては部下のほうの仕業だと俺は考えるぜ。」


「確かに、爆発人間だからな。じゃっ、俺は仕事行ってくる。」


 集まった野次馬は次第に散り散りになっていく。人がいなくなるのを見計らってか、一部の瓦礫がガラガラッと崩れて小さな人影がそこから路地裏へと移動した。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁっ、」


 じゃらじゃらと鎖を鳴らして少女が暗い路地裏を歩く。布一枚で作られたようなボロボロの服には血が滲んでいる。

 

「うっ、、」


 全身が傷だらけでまともな治療を受けなければもう数時間の命だろう。しかし、少女は誰にも頼れない。カイニャールでは脱走奴隷は犯罪奴隷としてすぐに捕えられ、一生を過酷な労働で使い切られる。また、脱走奴隷を捕らえたものには差はあれど報奨金が出るために力ある市民は嬉々として捕まえに来る。


「ゲホッ!!」


 少女は体力の限界を迎えているのに無理矢理動こうとして血を吐いて倒れ込む。


「たす、、け、て、」


 少女の口から言葉が零れた。誰に向けられたものでもない。本来誰の耳にも届かないだろう。少女でもなぜ言ったのかも分からない。しかし、それは人の理から外れた白い獣に届いた。


「対価はある?君は僕に何を払える?」


 少女はそれの姿を見て、答えを口にした。


「全部、、わたしの、、」


「全てを束縛される奴隷から逃げたというのに答えがそれかwwww。人間って面白いねwww。いいよ。正直君にそれだけの価値は僕は見出してないけど、愉快な気分になれたから。、、でも、気分で合理的な判断をしない僕はそれはそれで人間らしいのかな?」


 少年の姿をした獣は少女の返答を気に入った。


「では、君を僕の奴隷、、は何か違うな。、、そうだ、君を僕の眷属とし、二代目として転生させようか。」


 少女は突如、白い炎に包まれた。その炎は熱くなく、暖かかった。



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