72.砂漠旅
更新が遅れました。すいません。
だだっ広い砂漠を大きな馬車が疾走している。引いているのは馬ではなく黒い怪物であるが問題はないだろう。
ここら辺は岩場であるが怪物は岩石を気にせずに突っ走り、岩石は唐突に黒く変色し道を開けていく。黒砂となった砂は馬車が通り過ぎた後、怪物の手元に集まり、圧縮吸収されている。
「生態系は破壊していないから問題ないよな。」
揺れの少ない快適な馬車の中でアルマスは外を見ながら言う。
「大丈夫だと思います。聞いた話、砂漠の生物は基本的に地下にいるらしいので。黒く変色した砂を残すのならば話は変わってくるかもしれないですがそんなことはないので。」
風丸がアルマスに答える。
現在、馬車の中に居るのはアルマス、カノン、風丸と、依頼人達のマターラ、テル、アリサ、ヨドリの合計で九人である。また、馬車の中はアルマスによって空間拡張されており、三部屋に分かれている。一つはアルマス達、一つはヨドリ達、一つは荷台となっている。
ワルドは黒い怪物となって馬車を引いており、ハクは見張りと称して、馬車の上で景色を楽しんでいる。景色はただただ広い砂と岩の大地であるが、岩石の形がお気に召したらしい。
「いい加減暑いんだが変わってくんねえか?」
ワルドがアルマス達に声を掛けた。出発してから早6時間流石に疲れてきたらしい。彼なりにゆっくり走っているようで、足的には問題ないようだがずっと暑い中走り続けるのは精神的に嫌なようだ。
「逆によくそこまで休憩せずにいられるな。飯も食ってねえだろ?」
アルマスが本を開けながら言う。すると二頭の鋼鉄の馬がポンポンと現れ、ワルドと並走している。
ワルドの背中からは黒晶の腕が生え、器用にも自身に繋がっていたローブを馬に移し替えていく。
「あー、涼しー。」
ワルドはローブを繋ぎ終えると馬車に跳び乗った。馬車内はアルマスによる冷房が効いているのでかなり涼しい。
「それにしても奴隷がどうとか言う話はどうなったんだ?」
ワルドはアルマスに聞く。
「色々考えたけど、どうでもいいやってなっただけだった。気にしないだろお前ら。」
「そうだな。」
「気に入らない人のルールに従うのは嫌だもんね。」
ワルドだけでなくハクからも返答があった。聞き耳を立てていたのか、耳がいいのか。
「アルマス、あの岩壁どうするの?」
カノンが前方を見ながらアルマスに聞く。馬車の前方は巨大な崖がそびえたっている。崖は彼方まで続いている。
「転移しましょうか。」
「それじゃあ、風丸頼んだ。精度に関してはお前のほうが良いからな。」
アルマスが風丸に依頼すると、馬車は崖の上に即座に転移した。
「思ったよりボコボコしてやがんな!」
転移した崖の上はさっき以上に岩石が酷く、まともに走れる道などなかった。ショートカットで来た弊害だろう。
この景色はずっと続いており、転移などのショートカットでは越えれる距離ではなかった。
「僕が行くよ。馬消して。アルマス頼んだ。」
「マジかよ。」
前を見てハクが下りてきてそう言った。アルマスは言う通り、瞬時に馬を収納する。
ハクは白獣となって馬車の綱を軽く装着した。
「陣を馬車に固定、対象をハクと馬車、相互距離固定、起動」
アルマスはハクと馬車の位置関係を本の術で固定した。ハクはアルマスの術の発動を確認すると、彼の脚は空を蹴った。そして、白獣の引く馬車は空を駆けた。
「空中走法とは無茶苦茶だな!ハッハッハッ!」
ヨドリが窓から顔を出していう。彼の言うとおり滅茶苦茶な策である。アルマスからすれば、ヘーテスから止められてる以上あまり長時間したくはないのだがなかなかこの地形は終わらない。
「しかし、こんな地形あったか?地図通りならここら辺は平らな大地と聞いているが。」
ヨドリは周囲を見渡しながら言う。彼の言うとおり少し前まではここら辺は平らであった。痕跡を見るに岩の大地は岩石が積み上げられているという雰囲気である。
「怪物が下で蠢いてるとか?」
「まっさかー!ここら辺にそんなバカでかい生物なんて居ねえよ。」
風丸の言葉にヨドリはそう言う。
「心配する必要はないよ。」
ハクが走りながらそう言う。彼が言うならばその通りなのだろう。さっき一瞬殺気があったなんて気のせいだろう。
結局、何かトラブルに巻き込まれることはなく、夜になる頃にはアルマス達を乗せた馬車はこの地帯を抜けていた。




