70.バトル
「もう立派な魔法使いだな。」
シャルは杖と本を持つアルマスにそう言った。
「魔法の本場の魔女と悪魔に教えて貰ったのさ。第一、魔法ならお前ももう使えんだろ?バーバルムを召喚したカールの知識、持ってんだろ?お前ならあれだけで十分だろ。」
「そうだな。だが、それでもお前の術は解読出来ない。それは一体何なんだ?」
シャルはアルマスの本を指差す。
「さあな、逆に教えてくれよ。骸骨の野郎のキャパがあって、お前の眼なら構造まで読み取れるんじゃないか?」
アルマスは油断なくシャルを見つめながら答えた。
「聖剣の方の解析といい、その本といい俺には読み取れん。キャパで言うなら、もうワンランク上の物が欲しいところだ。」
「大量の能力を得ていて何を言ってるんだ。いくらでも最適化できるろ。」
「いやそうでもねえぞ。何よりあの悪魔たちに対抗するための道具を作るのにほぼ全部使っちまった。」
そう言うシャルの手からは少しずつ禍々しい色をした泥が溢れ出てくる。
「それは、、、」
アルマスはその存在に恐怖を覚えた。
「どうだ、記念すべき魔王第一号だ。怪物とは無条件に万物を恐怖させるものだ。これはそれだけを軸に作ったもんだ。勿論失敗作だが、武器としては優秀だぜ。」
泥は気が付くと辺り一面に広がっている。いたる所の泥からは巨大な手が出現し、辺りの建物を溶かして同化させていく。
「残念だったな。護衛の最後に一には既に対策は打ってある。さあ、久しぶりに運動しようか!」
アルマスは展開していた虚剣をしまい、本と杖だけを改めて持つ。
「できる気はしないが、ここでお前を浄化してやる。」
「やれるもんならやってみろ!!」
シャルの言葉と共に泥の増える速度は増した。
アルマスは早速、転移してシャルの目の前に現れる。
「最初ぐらいカッコつけて、一斉照射ぐらいしろよ。」
アルマスは超至近距離で杖をシャルの胸に向ける。
「そんなに欲しいなら詠唱してやるよ。安定するからな。聖なる光は魔を穿つ、汝は魔、故に塵となれ、極光砲!!」
シャルは咄嗟に杖と胸の間に泥が溢れ出している手を入れ、泥で聖光を相殺する。
「予想はしていたが、あのトルクスとかいう奴と同じ力かよ。相性最悪だ。」
シャルは泥を操作して、四方八方から泥の竜にアルマスを襲わせる。
「結界、起動」
アルマスは一瞬シャルを結界に閉じ込めてアルマスに干渉できないようにし、その隙に自身にたかって来る泥竜を聖光で一気に浄化した。
パリン!
シャルはすぐに結界を破壊し、アルマスに殴りかかる。アルマスは咄嗟に虚剣を照射してそれを防ぐ。
「流石に形だけとはいえ聖剣か。泥で飲み込むには時間がかかる。」
シャルは穴だらけの肉体を泥で直す。
「骨には響かないか。ならば、聖杖解放!」
アルマスはシャルの状態を見ながら、そう呟くと、アルマスの杖が光を纏った。
「対象無差別、範囲最大、出力最大、聖炎、起動」
アルマスの杖の先には陣が展開され、その先には巨大な火球が生成され、アルマスは杖をふり、火球をシャルに剥けて放つ。
「聖杖を解放したぐらいで押しきれると思うなよ!」
シャルは泥を倍増させ、今ある泥全てをその火球にぶつけ火球を喰らい尽くした。
「貰うぜ、そのエネルギー!」
泥の温度は一気に急上昇し始める。
「何が泥だ、溶岩の間違いだろ!改名しやがれ!」
アルマスは天井付近に巨大な陣を展開する。
「そんな大きさで大丈夫か?こちらは失敗作とはいえ魔王だぞ!!」
アルマスの陣に対抗するようにシャルの泥は凄まじい速度で増えていく。それをシャルは手のひらに乗る程度の大きさに圧縮する。
「ならば、こちらは最後の一だ!」
アルマスの陣から灼熱を纏った白い獣が現れる。巨大な陣はハクを呼び出し更に多重の強化を施すためのものだったらしい。
「内と外からされると流石に無理だったか。」
シャルがそんな言葉を零す。その瞬間、
「久しぶりだね。じゃあ、死んで。」
ドス!
ハクの前足がシャルの胸を貫いた。聖杖を使用して強化されたハクの速度はシャルの予想を上回っていた。
シャルは咄嗟に自身の頭を自ら切り離し遠くへぶっ飛ばす。その瞬間にシャルの胴体は一瞬で蒸発した。
「ははは!怪物だな。ここらが引き時か?」
首だけの状態でシャルは愉快そうに喋る。アルマスの虚剣がその頭蓋を串刺しにし、ハクは彼を躊躇なく殺しに行くが、
"フットベ"
首を中心にこの空間全体に外向きに強力な斥力が発生する。
「じゃあ、またな。」
シャルは泥を全てエネルギーに変換し暴走させた。
「クソが!!」
眩い光が周囲を照らす。この瞬間、砂漠に巨大なクレーターが生まれた。




