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聖剣の担い手探し  作者: かざむき
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67.五秒間の戦い

 サーサに着いて二日目、アルマスは出店をカノンに任せて町を散策していた。


「そこの兄ちゃん、初めて見る顔だね。その雰囲気、砂漠は初めてだろ?この焼蛇どうだい?安くしていくよ!」


「ありがとうございます。じゃあ、おすすめありますか?」


 アルマスは値段を見て安いなと思った。


「おすすめはこの自家製のタレだね。」


「じゃあ、二本お願いします。」


「毎度あり!」


 焼蛇はここの町では伝統的な食であるらしく、蛇を串に刺して丸焼きにして食べるというものであった。

 アルマスは焼蛇をかじりながら町を歩く。昨日、奴隷市が開催されていたため、その熱気がまだ町には残っていた。


「昨日の競りの最高額知ってるか?1億だってよ!」


「知ってるぜ!あの真っ白の女だろ?彫刻みていでこの世の物とは思えないほどの美しさだったぜ。随分抵抗していたらしかったから、出品時は眠らされてたがな。いやー、綺麗だった。さらに今回の総取引額が過去最高の100億を突破したらしいぜ!」


「マジか、初っ端からいつもと熱気が違うからもしかしたらと思ってはいたがそこまでとはな。最近は難民も多かったからな。」


 道行く人の会話を聞き、アルマスは金額の大きさから奴隷業の規模の大きさを再認識し、奴隷制について少し考えをめぐらした。特に新規奴隷について、どうやってあの量を確保しているのかが気になった。アルマスは少し考えたあと、予想が付いたため、確かめに町の暗がりへと進んで行った。


「そこの旅人さんや、奴隷はいらんかね?」


 適当に歩いていると老人に声を掛けられた。場所は昼でも建物の陰で暗い治安の良くなさそうな少し大きい一本道であった。


「いや、遠慮しておく。そういう趣味はないんでね。第一、個人間での取引は違法なんだろ?衛兵にでも突き出してやろうか?」


 アルマスははっきりと断り、追加で脅した。


「驚いたね。昨日来たばっかりなのにこの町の法を知っているのかい?まあ、儂らは捕まらんし、そんなことをすればお仲間がどうなるか知らないよ?」


 アルマスは既に囲まれていることに気が付いていたがあえて気にせずに話を進める。


「衛兵もグルか。なるほど、奴隷が集まる訳だ。客なら奴隷を買った時点で逮捕、その他も侮辱罪とかいうの方法で捕まえて売り飛ばすとは良い商売してるじゃないか。」


「衛兵がグル?それは名誉棄損ではないかね?名誉棄損は現行犯で奴隷墜ちだよ?」


「何を言っているんだ?事実を述べたまでさ。」


「貴様、そこで何をしているんだ!」


 都合の良いタイミングで数名の衛兵が出てきて、アルマスを取り囲む。


「貴様、今、衛兵をつまりこの町のシステムを侮辱したな。よって現行犯で逮捕する。」


 衛兵も芝居をするのが面倒になのか、言い掛りをつけてアルマスを襲った。


「焼き尽くせ」


 アルマスは結界でこの空間を覆い、手始めに取り囲んでいた衛兵を魔法で炭化させる。悲鳴は上がるが外へは届かない。


「すまんが仲間に被害が及ぶのは面倒だから皆殺しにさせて貰う。」


 そう言ってアルマスが老人の方へと目を向けた瞬間、


ガキッーーン!!


「ほお、今のを防ぐかね。」


 アルマスの剣が宙を舞った。


「眼がいいのかね?いや咄嗟の判断が優れているのほうがあっているかね?」


 アルマスの頬から血が垂れる。


「全力の不意打ちであったつもりだったんだがね、瞬時に剣を取り出して流す程度には余裕があったとは、儂も衰えたね。」


 アルマスは虚剣と杖を取り出し、本を開いた状態で空中に浮かばせる。既に身体強化などの術による自身の強化は行っており用意は万全である。

 老人は刀を軽く持っている。構えているようには見えない。老人はゆっくりと歩いてアルマスに迫る。

 距離にして十メートル。老人はそこで止まった。


「用意はいいかね?」


「、、、」


 老人の問にアルマスは無言で返す。時間にして三秒、何もない時間が過ぎ、先に動いたのはアルマスであった。

 空中に大量の剣が現れ、老人に向かって連続で放たれる。


ドドドドドドドド!!


 凄まじい数の虚剣が地面に突き刺さるが、どれも老人に当たるどころか防がれていない。

 アルマスは結界を頭上に集中して張り、自身は後ろに回避する。


パリーン!!


 壁を走って来たのだろうか、上から老人の突きがアルマスの張った結界を容易く突破しアルマスがもといた場所に突き刺さる。

 アルマスは陣を展開し、自身の周りに瞬間的に強力な斥力を発生させた。周囲の建物は簡単に吹き飛び、地面にはクレーターができる。

 斥力が無くなった瞬間、アルマスの眼前に老人の刀があった。

 アルマスは自身の顔と老人の剣の間に本を召喚する。アルマスの本は今代に発生したものでは傷つくは在り得ない。故に刀は本を断ち切ることが出来ず、アルマスに伝わったのは本を挟んだ打撃だけであった。

 アルマスは一瞬距離をとり、


「瞬間強化(重)」


 骨が鉄でも粉砕される力でアルマスは地面を蹴る。


「はああああ!!」


「甘い!」


 アルマスの杖による速攻と老人の突きがぶつかり、アルマスは拮抗することも出来ずにぶっ飛んだ。また、老人もアルマスが空中に展開した魔法による炎で火傷をおった。


「まさか、魔法使いであったとはね。標的を見誤ったようだね。魔法、占術による探知、厄介だね。呪術、幻術がないだけマシだろうか。そして、見たことの無い謎の術。補助したり収納する術は魔法にもあるがそれとは毛色が違う。」


 老人の眼が白く光る。


「古い、あまりにも起源が古いね。そして、歪だね。他の術と比較して共通点があまりにも少ない。独立している。なぜ、そこまで徹底したものが必要だったのね。いや、この考察は無意味か。全ては過去に終わったことだ。」


 老人はアルマスを見るのをやめた。これ以上は見てはいけない領域だと判断したようだ。老人は刀を握る力を緩める。その隙を見ては一気に接近し首を飛ばそうとするが、


「厄介だ。奴隷にするには強すぎるね。すまんが死んでくれ。」


アルマスは老人に到達する寸前で爆散した。


「やはり、予防線は張っとくもんだね。爆蛇を仕込んでおいて正解だったね。若い頃ならもっとやれたんだが、老体には厳しいからね。」

 

 老人には妖精の血が混じっていた。そのせいか彼は眼はよく、心や物の仕組みを読むことが出来る。強靭な身体能力もそこからきている。だからこそ、油断してしまった。

 この世界において、強者同士の争いでは相手が死んでも油断してはならない。能力というイレギュラーな存在があるためだ。

 老人は思うまい。まさか、相手自身が自身の不死性を忘れていたなどと。

 老人は炭化し、塵となった。ただただ強かった金の亡者は呆気なく人生に幕を下ろした。


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