66.サーサにて
レポートつらい
スラル経由で砂漠に来た者の大多数が初めに立ち寄るであろう砂漠の端っこに位置する町サーサ。砂漠の入口の一つとして栄えているが、それもこれも奴隷制あってのものである。この先の町ではよく取り入れられている制度であり、この制度のせいで大陸内では肯定派と否定派で対立が起こっている。
「女で14!10000から!」
町の広場では月に一回、奴隷の競りが行われる。
「20000!」
「25000!」
「50000でどうだ!!」
「55000!!!」
「55000で落札!!!」
奴隷の競りは町の一大イベントであり、奴隷を買いに来る来訪者などが落とす金は町の運営に欠かせないものとなっている。勿論奴隷に自由や権利はなく買い手の所有物としての一生を送る義務だけがあった。
「奴隷制か。あまり考えたことなかったな。何だ、慣れてないからかもしれないがかなり気分が悪いな。」
ワルドは町の様子を見ながらそう呟く。アルマス達は商業登録のために役所に向かっている途中である。町の労働は全て奴隷の仕事であるらしく、商人といった来訪者を除いて奴隷以外で働いている者は見えなかった。
「強さではなく身分による支配、前から思ってたけど面倒だね。」
ハクも奴隷を落札した人間を見ながらそう言った。
「気分が悪いならさっさとこの町からは出ていくがどうする?」
アルマスはカノンやワルドを見ながらそう言う。風丸はこういう光景には慣れているのか、いつも通りの調子であり、ハクも特に面倒な制度だぐらいにしか考えていない。カノンとワルドは明らかな嫌悪感を漂わせていたのでアルマスはそう聞いた。
「大丈夫。金儲けなんて所詮こんなもんだからね。」
「まあ、その内慣れるだろ。やってることは対象が人になっただけで家畜とかと変わらんしな。」
カノンの表情が少し不安ではあるが二人とも問題ないなとアルマスは判断した。
アルマス達は役所に行き、短期間自分達が商売する場所を借りると、町で商売をするアルマスと町の調査に出かけるカノンと風丸、付近の砂漠を探索するハクとワルドに別れた。
「5000です。ありがとうございます。」
今日は奴隷の競りで人も多く、財布の紐が弛んでいる人も多く、ここら辺では珍しいハルルやカルワルナ、リアナで仕入れた物はかなりの高値であっても簡単に売れていった。
「いやー、助かっわい。最近あっちの方は物騒だからのう。君達若いのにようやっとる。何処から来たんだ?」
ターバンを巻いた老人がアルマスに話しかけてくる。どうやら商人のようであるらしく、最近は厄災のせいでスラル側の品を仕入れることができず困っていたらしい。
「ハルルの方からリアナ、カルワルナ、ハーロルの順にやってきました。まあ、運が良いのか悪いのか。」
「おお、それは凄い!その話詳しく聴かせてくれんか?200出すぞ?」
「、、、わかりました。では、ハルルから出航するところから……」
アルマスは脚色を挟みながら老人に今までの話を語った。脚色と行っても誇張ではなく矮小化し、重要なことは結構隠して話した。老人は目を輝かせてアルマスの冒険に聞き入る。気が付くと周りには多くの人が集まりアルマスの話を聴いていた。
「……となり、この町にたどり着いたという訳です。」
アルマスの話が終わると聴いていた者達は歓声を上げた。彼らにとって話が事実かどうかは関係がない。面白いかどうかが問題なのだ。結果は大好評であった。
「良いもん聞いた。これ買っていくぜ!」
「お兄ちゃん達凄いね!!!」
「死んだ人には不謹慎だが、邪竜見てみたいな~。」
「蛇ゴリラってネーミングセンスが悲しいな。」
彼らはアルマスの商品をどんどんと買っていきあっという間に今日の分は売り切れとなった。
アルマスが話をしている時間、カノンと風丸は町を見て回る。市場などを巡り、物資を調達しつつ、今の世界情勢を聞いて回る。
「スラルが滅んだなんて既に常識だぜ。どうせこの後、後継を狙って内乱になって他国に侵略されるのがオチに決まってる。」
「カルワルナの学生が消えたのは世界の損失だとか言ってる奴らいるけど、どう思う?」
「パラジオンが軍事演習をしたらしいよ。」
「聖光の騎士の活躍を聞くのが最近の娯楽だね。聖光の騎士を知らない?今時珍しいね。竜を従える騎士の話だよ。」
「北の魔獣域は最近静かだそうだ。いつもそうなら嬉しいんだがどうも何かの前兆かもしれないから怖いんだよ。」
「新しい魔法使いが西のほうで新しく誕生したらしい。俺には魔法使いの定義がわからないだよな。魔法と能力、ついでに呪術とか幻術とかの違いってなんだよ!って思うんだよ。」
「俺思うんだけど宗教って無駄だと思うんだよ。実在しないものを崇めて何になるってんだ。」
「知ってる?最近竜の数が激減してるらしいよ。みんな地上を飽きちゃったのかな?」
「雑食骸骨っていう特殊個体が最近生まれたらしいよ。恐いね。」
「カルワルナの巨塔についてどう思う?わたしゃホラだと思うがね。」
「術使いが現れたらしいぜ!術使いとはだって?うーん、、俺の町では能力に頼らずにあらゆる術、魔法とか呪法とか幻術とかを使える奴のことって聞いたぜ。」
「風の噂でどっかで戦争が起きてるらしいぜ。原因?さあ、奴隷制とか土地とか金とかそんなもんじゃねえの?奴隷についてどう思う?お前ら奴隷は初めてなのか。俺はいいと思うぜ。何で牛や馬は良くて人はダメなんだ?俺は差別が嫌いなのさ。」
風丸とカノンは大部分が自身達が関わってるなと思いつつ、情報を集めた。
そして、空が少し暗くなり始めた頃適当な店に入った。
「トルクス達もう有名人だね。」
「はい、順調に特殊個体を討てているようで安心しました。」
「でも、聞いてる感じだとアズラは別行動なのかな?」
「そのようですね。ヘーテスから何かしら仕事を受けていたようなので、そちらで忙しいのだと思います。」
「私、アズラの眼、苦手なんだよね。」
突然カノンはそう言った。風丸はその言葉に首を傾げた。
「何か分からないのだけど、全部見透かされてる感じがするのよね。」
「そうですか?ああ、でも確かにアズラは相手が話さなくても会話を成立させますからね。商売には必須スキルなんでしょうか?」
「あのレベルは必要ないけど相手の望むものをある程度察する能力は必須よ。私はあんまり無いけど。アルマスとかは得意だと思うよ。私達は今のあの島に必須の人員だったから何もしてなくても基本的に仕事が舞い込んでくるの。まあ、今は航海術について教えて回ったから人員不足は解消されてるけど。」
カノンはそう言うとジュースのおかわりを貰いに行った。
「デートはどうだった?」
突然、風丸の後ろから声がした。風丸は驚いて後ろを見るとそこにはワルドとハクがいた。ワルド達は大きな荷物を背負っており収穫は上々だったのだろう。
「デートではないな。どちらかと言うと用心棒です。第一カノンの本命はアルマスだと思いますが?二人ともその事に気がついてるか知らないですが。」
事実カノンと風丸にそんなつもりはない。
「確かにあいつら同士の認識ってライバルだもんな。そういや俺達も用心棒として雇われたのが始まりだったな。」
ワルドはそんなことを言ってまだ半年もたっていない旅の始まりを思い出す。
「そういえば徴兵された兵士ってどうなったんだ?」
ワルドの言葉に風丸は彼らのその後の情報が一切無いことに気がついた。
「僕も知らないよ。僕の耳には大陸外から兵を集めたという情報すらないよ。」
実はカルワルナで結構情報を集めて回っていたハクも知らないと言った。
「奴隷狩りですかね。奴隷に俺達のような力の強い種族は嫌われる傾向にあります。」
風丸は外で力仕事をしている奴隷を見ながら言う。
「あー、確かに抵抗されて惨殺されましたはアホ過ぎるもんな。」
「あっ、ワルドとハク。どうだった?珍しいのいた?」
カノンが戻ってきて、ワルドも風丸の言葉に納得したのでこの話は終わった。
「上々だったぜ!珍しいのについては俺達からしたら全部が珍しかったから知らねえがな。」
「サボテンっていう棘がいっぱいの植物があったけどおいしかったよ。」
「あれは毒があるからお前以外、食えねえよ。」
四人はしばらく雑談した後、アルマスの所に戻っていった。




