64.乗っ取り
コツ コツ コツ、、、
暗闇に包まれた町をみすぼらしい布で全身を覆った何かが歩く。その歩みはとても遅く、ゆっくりと町の中心を目指していた。辺りは住宅街であり、全ての家が寝静まっている。
「そこの怪しい奴、止まれ」
それはこの付近を巡回している衛兵に見つかり呼び止められた。
「貴様、この夜遅くに何をしている!クスリの取引か?洗いざらい吐くんだな!」
衛兵は高圧的な態度でそれに怒鳴り付けるが、それは全く反応しない。
「聞いているのか!貴様!」
衛兵は眠くてイライラしていたのか持っていた槍の棒の部分でそれを殴った。
ガーーーン!!!
それはびくともしなかった。それは全く反応を示さない。それはひたすら衛兵を見つめていた。
衛兵は気味が悪くなり、それと距離を取る。
「貴様何か反応をしろ。さもなくばこの槍の錆びにしてくれる。」
衛兵は槍を持ち直し構える。この町に置いて衛兵は個人の判断で夜での殺人を許可されている。この町では夜の時間に外に出ることは違法とされており、出歩いているものは基本的に悪事を働いている者が大多数であるためだ。後々の手続きは面倒であるが、この衛兵は目の前にいる奴はヤバイものであると確信し、この声に応じない場所はその手段を取ろうと判断したのだ。
それは一向に動く兆しを見せない。衛兵は手足に力を込める。
ゴキャ!!
そして、衛兵の意識は消失した。
先程まで、それがいた場所にはそれが羽織っていたみすぼらしい布が落ちていた。衛兵の首から上はねじ切られていた。
衛兵の後ろには衛兵の首を持った隻腕で頭蓋骨が一部欠けている骸骨がいた。骸骨は少し首を眺めた後、それに食らいついた。
グシャ! バキッ! グチュ!、、、
骸骨は意図も簡単に頭を噛み砕き飲み込んだ。まだ、足りなかったのだろうか、その後、衛兵の体も食べる。
食べ終わった後の骸骨を見ると欠損していた腕が少しだけ回復していた。
骸骨は食べることで回復する事を理解した。
しばらくすると、衛兵達は仲間が帰ってきていないことを不審に思い、この通りに来る。
明かりは手に持った小さなランタンしかないが、それでも見える血に汚れた地面と黒い骸骨を見て、彼らは即座にそれが怪物であることを理解した。
ある者が武器を作成し他のやつに配る。
「明かりを灯した瞬間始めるぞ。」
リーダーらしき男が全員にそう伝える。骸骨との距離は五十メートルあるだろうか。
カチャリ
彼らは武器を構えた。
そして、
「突撃!!」
暗闇は昼のような明るさとなり、それと同時に亜音速の槍が放たれる。
骸骨は瞬時に前方に障壁を展開し、槍を防ぐ。
ガギギギギ!!!
投擲者の能力によるものだろうか、槍は障壁に当たったというのに勢いが止まらない。骸骨は障壁をといて拳と槍は正面からぶつかり合い槍は粉砕された。
そのすきを狙っていたかのように腕がない方向から衛兵の刃が迫る。
ジュア!!
「なっ??!!!」
刃は骸骨に触れた瞬間融解した。黒かった骨は赤みを帯びていた。そのまま、骸骨は熱気を放出する。刃を向けた衛兵だけでなくその回りにいた数名もそれにより炭化した。
骸骨は黒い泥で炭化した死体を溶かした後、それを小さな球にして呑み込んだ。
熱気により、住宅街はところどころで火事がおき始めた。
ここで衛兵のリーダーが冷気を放出して強引に炎を消火する。
「凍死しろ!!」
バキバキバキッ!!
彼は仲間を後ろに下がらせ、前方を一瞬で凍らせた。それと同時に雷のごとき矢いや、雷が放たれる。それでも当然かのように骸骨は凍らず、雷もまともに効いていないようだ。
骸骨は陣を展開し、黒い光線を放つ。瞬く間に衛兵はそれに貫かれ、呆気なく全滅した。
骸骨はさっきと同様に泥を利用して衛兵だったものを呑み込む。
熱気は辺りに火をつける。泥が辺りを飲み込んでいく。悲鳴は一つも聞こえない。
夜が明けた。そこに町はなく、大きな更地となっていた。
更地の中心に骸骨が立っている。腕や頭は完全に修復されているようだ。
骸骨は食事をしたことでリソースに余裕が出来たのか自身に刻まれた過去の記録を見る。
穴を空けたこと、この世界に誕生したこと、この世界の頂点に座する物達の内の一つに触れた感覚と代償、自身を圧倒した人間達、一歩間違えれば焼死したかもしれない疑似人格による失言、また、取り込んだ生命の記憶、これらの記憶を解析し学習していく。そして、人間の記憶を辿っている時に異変は起こった。
偶然か罠か、とある人間の記憶を起動した瞬間、骸骨の中にその人間の人格が現れた。自我の薄い骸骨はその人格に意図も容易く乗っ取られた。
骸骨には急速に泥が纏わりつき、肉となって人の姿となった。
「一縷の望みを掛けて、やってみたが成功したようだな。生前の俺優秀過ぎないか?」
骸骨だったものが喋る。
「穴を空け、大陸各地にパーツを出現させたは良いがワルナトロティカに運悪く触れてしまったことによって距離など関係なく黒晶化して壊滅。最重要であった頭部部分が何とか生存したってところか。それもあの生まれたての最後の一に焼かれて今まで瀕死だったと。運が良いやら悪いやら分からんな。」
彼は服を纏い、自身の体を見る。
「さて、この骸骨野郎本体の精神は俺のとリンクさせてと。」
"セイコウシタナ"
「喋りづらいなこれ。」
"アーアーハローハローテステスアイウエオシャルビビデバビデブウスカルマンジュゲムジュゲム"
「何言ってんだ俺?」
彼は骸骨が行っていた特殊な声を使って適当なことを言う。それは音を媒介としておらず、任意の範囲に相手を選んで強制的に聴かせることができるようだ。
「まあ、練習しておくか。こうなった以上、あいつらと敵対するのは確実だろうからな。」
彼は一人呟きながら自身の状態を調整する。銀髪の青年の姿になり、彼は何処かへと向かって歩き出す。
「あっ、そうだ。取り敢えず、戦争を起こそうか。」
彼はそう不吉なことを言ってその場から消えた。




