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聖剣の担い手探し  作者: かざむき
64/92

63.理由

テスト前だ!!!!

 巨大な壁に覆われた黒色の広場で紺色の人狼と白い獣が猛スピードで移動している。


「適応力高いね。さっきまで全くついてこれなかったのに、」


「それが、、僕の、自慢なの、、、さ!」


 本人達はじゃれあっているような感覚であるが、この広場でなければ今頃、地形は大きく変わり荒れ果てていただろう。

 人狼は右手からレーザーを放ち、獣は炎を伴った咆哮でそれに対抗する。


グオオオオオ!!


 咆哮はレーザーを押し切り人狼は場外まで吹き飛ばされた。


「うべし!!」


 人狼は地面に背中から落ちると少年の姿に戻った。


「あっちゃー、やり過ぎちゃったかな?」


 白い獣は少年に謝りながら近づく。


「昨日より動きのキレが良くなってたじゃねえか。ワンチャン俺負けるかも。」


 黒い広場は一瞬で消滅し、ワルドが二人のもとにやってくる。


「僕の力量じゃまだまだ届かないので気にしなくても大丈夫ですよ。」


 少年はそう言いながら起き上がる。


「そうでもないぞ。俺達が居なくなってから稽古をつけるのはロットになるだろうから、技術の向上はあっという間だと思うぜ。あいつの強さはこの大陸の純粋な人類の中でトップレベルに入るんじゃねえかと睨んでいるしな。」


「ワルドってこの大陸の人の強さをある程度知っているのかい?」


 ワルドの発言にハクが質問する。


「いや、知らん。でも、あいつ無尽蔵に完全な分身を作れるし、よっぽどの化け物じゃないと倒せないぜ。あと、剣の技術、雷撃もあるし、何を隠し持ってても可笑しくないだろうしな。」


「確かにそうだね。不意打ちは無しとして勝てそうな人は底が知れないヘーテス、カトとか、理性有りバーバルム、串屋の兄貴ぐらいしか思いつかないしね。ああ、あとイグテスとかそこら辺の怪物も。あっ、じゃあワルドでも行けるんじゃない?」


「知らん奴がいたが、まあいいか。俺はまだそんな広範囲の侵食が出来るわけじゃないから無理だと思うぜ。」


 ワルド達は昼飯を食いにテントに向かい始める。


「そういや、今日アルマスは何してんだっけ?」


 ワルドがせっせと働く黒い騎士達を尻目にハクに尋ねる。


「風丸との剣術の稽古してるぜ。今回は特別講師として俺も参戦している。あとはカノンも参加してたぜ。」


 ワルドの問いにハクではなく黒い騎士、つまりロットが答えた。


「剣術かぁ、僕もやってみたいな!」


 人狼の少年はロットの剣を見ながらそう呟いた。


「その体に慣れたら教えてやるから楽しみにしとけ。」


 ロットは少年に嬉しそうにそう言った。


「おっ、いたいた。」


 ワルドはテント近くに休憩しているアルマスがいたのが見えたので瞬間的に鱗を纏い体を強化してアルマスの隣に高速で移動した。


「うおっ!ビックリした!」


 アルマスは急に現れたワルドに驚いて反射的に後ろに下がろうとして、少し遅れてきたハクに足を引っ掛かられ仰向きに倒れた。


「やーい、引っ掛かった!」


 倒れたアルマスをハクは煽る。


「疲れている俺に計画的犯行か?」


 若干キレ気味にアルマスが聞く。


「全く、俺はただ移動しただけだ。悪いことはしていない。」


「僕も足を引っ掛けただけで悪いことはしてません!」


「ハクは完全にアウトじゃん。」


 ハクの発言に少年がため息を吐きながら言う。


「で、アルマスお前にしては偉く機嫌が悪いな」


 ワルドはアルマスがすぐにキレそうになったことを指摘する。


「敗けたんだよ。」


「ん?」


「だから、剣術を習って三十分の奴にしっかり敗けたんだよ!」


 どうやらアルマスの機嫌が悪いのはカノンに惨敗したことが原因らしい。


「あー、うん、乙」


 ワルドは悲しいなと思った。ハクと少年は笑っていた。


「アルマス!休憩終わりだって!」


 カノンがアルマスを呼びに来た。


「おっ、カノン!アルマスに勝ったらしいな。強かったか?」


 ワルドはカノンに聞く。


「まあまあじゃない?私の方が上手だけど。」


 カノンはアルマスを挑発する。


「知ってるよ。それでも初日くらいは勝てると思いたかった。俺の一ヶ月はお前の三十分に敗けることが証明されて俺は悲しい。」


 アルマスはそう嘆いた。アルマスはカノンに一瞬で抜かされることはわかっていたようだ。


「だが、真剣勝負なら敗けねえ!」


 アルマスはカノンに向けてそう言いはなち、


「そらそうだろ。不死身の人間は精神が折れない限り敗けにはならないからな。」


 ワルドにそう言い返された。

 その後も話が続きケンカになりそうと思われたが、


「無駄話は終わって修行を再開しましょう。」


 強制的に風丸がカノンとアルマスを転移で連れていったので話は終わった。

 ワルド達も修行場所に移動しアルマス達の様子を見る。

 現在、風丸とロットが軽く手合せをしている。剣術がメインのため、技術面を重視して行われるため、いつものような力強さは抑え目ではあるが、二人の剣の打ち合いは舞のようであり、とても綺麗であった。


「何か学べる所はありましたか?」


 手合せを終えた風丸がアルマス達に聞く。


「全く」


「さっぱり」


 アルマスとカノンはそう答えた。風丸も正直見て学ぶという方針は上手くいかないと察していたようなので、特に何かを思うということもなかった。


「さっきまでと同じ感じていいんじゃないか?」


 ロットがそう言うと風丸も頷いた。


「じゃあ、アルマスは俺とカノンはロットとで打ち合って悪いところがあったら指摘、修正という形で。」


「わかった。」


「わかりました。」


 アルマス達は剣を抜き打ち合いを始め、ワルド達はそれを眺めるが、昼飯を食べていないのを思い出し、テントに戻った。

 テントに戻ると待っていたかのように鎧のロットがいた。


「飯ならそこに並んでるやつを取っていってくれ。」


 彼が調理したのだろうか、並んであるのは牛串とご飯であった。


「唐突に串屋が来たのでな大量に買わせてもらった。今日から毎日牛串だ。」


「は?栄養バランスは?」


 ワルドがロットに質問し、ロットは問題ないと頷いた。ワルド達はそれならいいかと昼飯を食べ始める。

 ハクと少年は余程お気に召したのかすさまじい速度で自身の分を食べきった。


「もうちょっとない?」


 ハクはロットにそう聞くがロットは


「昼の分は終いだ。」


と、言ったため、ハク達はすぐさま外へと遊びにいった。

 そんな訳で現在テント内にいるのはロットとワルドだけになった。


「お前、このままアルマスについていくのか?」


 ロットは唐突にワルドに問いかけた。


「ああ、勿論。」


 ワルドは当たり前かのようににそう言った。


「なぜ?」


 そんなワルドにロットは追及した。


「どうしてわざわざ危険な道へ進もうとするんだ?」


 ワルドはそう言われるとはっきりとした理由がないことに気がついた。


「アルマスは受けた仕事は達成する義務があると言った。運び屋としての矜持があるのだろう。風丸は任務があると言った。調査のためならその問題の中心に近づくことは有効だろう。カノンは仲間を失いたくないと言った。守るためには側にいるのが一番だろう。ハクは、、、あれは例外だな。人が推し量れるものではない。さて、お前はどうなんだ?」


 ロットは既に他の奴らにはこのことを聞いていたようだ。


「俺にそんなご立派な理由は、、、ないな。あえて言うなら、帰る場所がないくらいか?第一俺はあいつらの雰囲気が好きだ。」


 ワルドは取り繕うこともせずに正直に答えた。


「それでいい。世界を救うためとかいう英雄的思考なら殴り飛ばしていたが、その必要はなさそうだ。」


「世界を救うというのは立派だと思うが?」


 ワルドはロットの発言に対し質問する。


「聖剣の担い手を探すこと、そして魔王を討伐する事、この行為は場合によっては世界を滅ぼす結果につながる。ヘーテスも言っていなかったか?聖剣の全力戦闘は最悪を引き起こす可能性があると。そう言えば、あいつは聖剣の代わりにもう数も少ない悪魔と天使総出で対抗するつもりだったらしいが、骸骨の出現で大きな修正が必要になったらしい。」


 さらっと話された重大情報に水を飲んでいたワルドが咳き込む。


「あー、すまんすまん。まあ、その話はあいつらが考えてくれるさ。でも覚えておけよ。魔王と戦うこと、それは世界を救う戦いではない。世界を壊す戦いである。」


 ロットはそう言うとテントから出ていった。

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