62.来訪者
「どうだ?大量虐殺に荷担した気分は?」
鎧姿のロットは荒れに荒れた荒野を見下ろしながらカノンに聞いた。
「気分はあまりよろしくないわ。」
カノンの顔色はかなり悪い。
「そんなもんか?普通なら罪悪感に押し潰されても可笑しくない年頃だと思うんだが?」
「人殺しならやったことはあるからね。今までにいったい何十隻という海賊船を沈めてきたのかしら?敵対して殺し合いになったら容赦なく殺らないと生き残れない世界なの。でも、今回は友達が死んだ時よりかは悪い気分よ。」
「これが十八程度の女子が言うことなのか?学友ほぼ全員死んだり、侵略兵を皆殺した奴はやはり精神が頑丈なのか?」
「大陸部ではどうか知らないけど、田舎では働き始めが早いからそういうメンタル的なものは乗り越えてる人が多いの。」
「海上っていうのは魔境だな。」
「大陸の方がよっぽど魔境じゃない。そこそこ強い海獣は結構いるけど、特殊個体みたいな怪物はほぼいないわ。」
「ハルルがいるだろ。」
それを聞いてカノンは吹いた。
「あれは例外。第一、気を付ければ普通は遭遇しないから。」
「確かにそうだな。あれの相手をするのは神でも不可能だときく。まっ、余計なことを聞いたな。俺は話し合いがどうなるか見てくるとしよう。それじゃ。」
ロットはそう言うと黒い塵となってその場から消えた。
「大丈夫、私の手は元から汚れていたから、、」
カノンはポツリとそう呟いた。
ハーロル テント内
「こんな形で再開するとは思っとらんかったな。ここの代表はお前でいいのか?アルマス。」
テント内にいるのはアルマスとロット、そして第五騎士団のダカスとハロンクであった。
「ええ、ロットより土地を買い上げたので。其方はどういったご用件で?」
「堅苦しい言い方はせんでいい。今回俺達は個人的に寄っただけだ。兵は連れてきておらんし。」
「わかった。じゃあ何で寄ったんだ?」
アルマスの口調は一気に砕けたものになった。
「急激な温度の上昇、異常気象による連合軍の壊滅、消滅したらしい同盟国の首都。ここまでいろいろ起こってたら上層部に言われる前でも来たくなるだろ?」
「いや、ならんでしょ。そんな危険な所にわざわざ行きたがる物好きはごく少数ですよ。」
バシーーン!!!
そう言って、ダカスにハロンクがハリセンで叩く。
「相棒に突っ込まれてるじゃん。で、あんたのそれ、どっから出てきたんだ?」
ロットがハロンクに聞く。
「私の能力で出しました。」
「収納系だったりするのか?」
「いえ、ゼロから扇を創る能力です。以外と便利ですよ。扇であって持てるなら制約はないですからね。」
ハロンクは自慢気にそう言った。アルマス達も確かにと思いハロンクに対しての警戒心を強めた。
「で、用件だったか?まあ、マジで観光の予定だったんだが、気が変わった。アルマス、お前、国主にならないか?」
「へ???」
アルマスはダカスの提案に間抜けな声を出す。
「スラルの後釜ってことか?」
ロットがダカスに質問する。
「実質的にそうなるな。スラルの主要都市が完全に消滅したこと、その他の都市もまともに機能しているところはごく僅か。そうなると、タノラとしてはスラルと国交を続けることは不可能になる。しかし、このスラルの領土は海外との貿易拠点としての立地は優秀であり、タノラとしては何かしらの形で確保しておきたい。今までは同盟だったが、いろいろ自由にさせて貰ってたし。だが、常駐させる兵力が足りているわけでもない。ってことでどうだ?という話だ。」
ダカスがそう話すとアルマスは
「嫌だ、面倒臭い」
はっきりと断った。ダカスもハロンクをその返答を予想していたかのように「でしょうね」と頷いた。
「だが、この土地を国にすることは問題ない。世の中が荒れるのはこちらとしても不都合だし、国王とかはロットに押し付けよう。」
アルマスの言葉にロットが反応する。
「はぁ?ちょっと待てよ。俺の役割はこの土地の防衛じゃねえのか?」
「別にいいだろ。俺達がここを離れたら当分二人暮らしだろうし、先日の件もあってここに近づく奴らはそういないだろうし、何よりも国を維持するための戦力は十分だろ?俺達としても何かあったときの避難場所は複数あっても困らないからな。」
「なんだよ、その今からお尋ね者になります感は。」
「最近まで、あっち勢力は単独だと思ってたんだが、骸骨の件で知略も使ってくるんじゃないかと思ってな。」
「なるほど、、まあいいでしょう。なってやりますよ、国王とやらに。」
どうやら、ロットはやる気らしい。その後四人でいろいろ話した後、ダカスはハロンクからとある紙を取り出した。
「こいつは、、あれだ。お前らを国として認めるっていう書状だ。正式名称は忘れた。まあ、タノラ第五騎士団団長ダカスが認めるってだけだがな。うちらの国王さんもロットが王なら認めると思うがな。」
アルマスはその書状を見て、変な契約や術が掛けられていないことを確認した。
「問題はなさそうだな。じゃっ、長居することもないし俺達は帰るわ。」
アルマスの様子を見てダカス達はすぐに帰っていった。ハロンク曰く仕事が山積みらしい。
アルマスはダカスが帰った後、ロットに尋ねた。
「半分冗談のつもりで言っていたがマジで王をやる気か?」
「ああ、魔獣の大量発生といい、この大陸は大きな転換点にある。悪いことが重なれば秩序は一気に崩壊する。そういうのに上手く対策できるように新たな国を作ってやるのが効果大きいと思ってな。」
「新たな制度でも作るのか?」
「ああ、成功すればきっと栄える。第一、ヘーテス辺りが最後、魔王に総力戦を仕掛けるだろうから、質のいい戦力の集めやすいシステムは作っとくべきだろ?」
「確かにそうだな。」
その後、アルマスとの話が終わったロットは再び黒い鎧を纏い大量の分身を出現させ、町作りを再開した。




