61.うわさ
ここはとある町の広場。いつものように子供達は駆け回りワイワイと遊んでいる。そんな子供達を眺めながら二人の男が話し合っていた。
「面白い話ね~。あっ、そうだ!カイニャール連合軍の軍事侵攻、失敗になったらしいぜ。」
「マジで?タノラにでも妨害されたのか?」
「ああ、第五騎士団に壊滅させられたらしい。」
「第五騎士団ってあの?」
「そう、あの英雄がいるとこだ。」
「そりゃ負けるわな。」
「でも噂によると、陽動で上手く第五騎士団からは逃れたそうらしい。」
「へー、じゃあその噂では実は上手く行ってるのか?」
「いや、ハーロル辺りで壊滅したとか。」
「はあ?」
「凄い嵐に襲われたらしい。あるものは雷に打たれ、あるものは気がつけば斬られていたとか。勿論暴風もヤバかったらしいぜ。」
「まあ、ちょっと前に聞いた話だとハーロルとかカルワルナは更地になるぐらいの被害を受けてたらしいから、怪物が残ってたのかもな。」
「確かにそうだな。」
そこに串屋と書かれた屋台を引いた男が通る。
「おっ!にーちゃん、串一本くれ。塩で」
「あいよ、毎度あり!」
屋台の男は予想していたかのように素早く牛串を渡した。
「お前ホントにそれ好きだな。」
「旨いからいいだろ。で、何の話してたっけ。」
「何か面白い話ない?ってお前が言い出したから、朝、役所の掲示板で見たこと話してたんだよ。」
「そうだった。で、もっと明るい話ないのか?ここは何もなかったけど、ちょっと前、各地で魔獣発生してたことで暗い話しか入ってこないんだけど。」
「それなら、最近子供らを中心に少し広がってる各地で魔を討伐している英雄の話でもしとくか?」
「何それ?俺知らないんですけど。」
「それはそうだろうな。どっかの旅人がホラか知らないが、子供らを楽しませようと話したっていうのがこの話の元だからな。」
「何だ、ただのデマかよ。まぁいいか。概要はどんな感じ何だ?」
「竜を連れた青年が魔獣を退治するって感じだったと思うぜ。青年の斬撃は夜を昼にかえるほどの光を放ち、その光は大魔を蒸発させたとか言ってたと思う。竜は植物を操り、その咆哮は辺りを更地にするとか何とか。」
「どうせ光を放つ能力を持ったちょっとした戦士を誇張しまくっただけなんだろうな~。こういうのでマジだったって話、俺はほとんど聞いたことねーぜ。」
「デマでもいいじゃないか。ロマンがあるしな。」
「確かにそうだな。百年後には凄い英雄にされてそうだ。かなりの数の国を実質滅亡させた大災害を個人で解決した英雄、良いじゃん。」
「竜も連れてるがな。」
「じゃあ一組?」
「もう何でも良いじゃないか。」
男達の前を銀髪の少年が通りすぎた。
「もしかしたら、嘘じゃないかもな。」
「さっきまでデマとか言ってたじゃないか。」
「俺はこの先町に来て天才って言葉を知ったことを思い出しただけさ。」
「あー、確かに。」
「ああいう奴が上手く育てば英雄になるんだろうなってことを最近思ったよ。」
男達は銀髪の少年を目で追いながらそう言った。
「子供を見ながら何を話してんだい?誘拐とかアホなこと考えてないだろうね?」
男達に巨大な盾をもった女性が話しかける。
「そんなわけねーよ。俺達はいつから、奴隷商になったんだよ。」
「テル!準備できたよ!」
男達のところに手を振りながら黒髪の少女が走ってくる。
「俺は!?何でテルだけ?」
呼ばれなかった男は少女にそう反応する。テルと呼ばれた男はその様子を笑っていた。
「あ、お猿さんもいたのね。気づかなかったわ。」
少女は棒読みで答えた。
「誰が猿だ!」
「少なくとも顔に関しては完全に猿になるだろ。」
テルは男にそう言った。
「確かに。だが、俺の名はヨドリであり猿ではない。」
「しょうもないコントするな。」
盾を持った女がアリサとヨドリが喧嘩になりそうだったので二人を止める。
「明日仕事が入ったから、今から宿でミーティングするよ。」
四人は広場から離れて宿へと帰っていった。




