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聖剣の担い手探し  作者: かざむき
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58.模擬戦

 炎天下の中、大量の黒い騎士がひたすら何かを地面に振り落としている。


「分身の数がえげつないな。」


 アルマスはその光景を見て呟いた。

 アルマス達がハーロルに到着してから既に一週間が経過していた。アルマスはロットと交わした契約を履行するために倉庫などを魔法を使って制作していた。カノンやワルド、風丸は付近に残る魔獣を狩ったり、探索などを行っていた。ハクは少年の身体機能を測るのも兼ねて付近の荒野で遊んでいた。

 そして、やることがなくなったロットはアルマスから植物の種をもらい農作業を始めていた。大量の騎士は全てこいつの分身である。分身は全員がロットと同じ知能、というか全てが本物なので独立して行動し、効率はとてもよく、あっという間に土地が耕されていく。

 彼の鎧はアルマス達と初めて会った時とは違うものであった。こちらは彼の能力や武器に由来するものであり、初めに着ていたほうはスラル王国から支給されたものであった。ロットの黒い鎧は完全に彼を覆っており露出している部分が一つもない。


「なんか、、うん、、シュール、、だな」


 本人は気にしていないが、立派な鎧を完全装備した騎士が鍬を扱い、種を蒔いていく光景はなんともいえない雰囲気を醸し出していた。

 アルマスは大体の仕事を終わらせたのでロットの様子を眺めていた。しばらくするとロットはアルマスが暇そうにしていることに気が付いた。

 すると、分身が一体増えてアルマスのところに近づいてきた。


「今暇か?」


 ロットはアルマスに尋ねた。


「ああ、暇だ。契約したことはしたんでな。」


「それはご苦労様。で暇なら少し鍛練に付き合ってくれないか?」


「具体的には?」


「模擬戦だ。お前は不死身、俺も分身が有る限り死なない。つまり、安全に全力を出し合えるからな。一応、生命に関わるような攻撃は無しということで。」


「いいぞ」


 アルマスは軽い気持ちで了承した。彼は久しぶりの少し激しい運動くらいの感覚であったのだ。


「では、この石が地面に落ちたら始めようか。まあ、()()()()やろうじゃないか。」


 ロットは足元に転がっていた石を蹴りあげる。

 アルマスは本を召喚し、杖と虚剣を取り出して構えた。身体強化などの術を一通りかけ、体の周りには何重にも結界を張った。

 ロットは鍬から剣に持ちかえた。ロットの剣は刀身が青く輝いており、大きさは彼の背丈より大きかった。

 石が地面に落ちた瞬間、音が届くよりも前にロットはアルマスに斬りかかった。

 アルマスの結界は紙のように破れたが間一髪でロットの剣を虚剣で受け止めた。


「流石に受け止めるぐらいは出来るか。」


 ロットは一気に力を込め、思いっきりアルマスをぶっ飛ばした。アルマスは魔法を使って空中で体勢を立て直し、大量の魔法をロットにお見舞いした。

 ロットはそれを見越していたのか、即座にアルマスの真下に移動し、剣を掲げた。


「充雷」


ピシャッ!!ゴロゴロゴロ!!!


 突然、雷がアルマスを貫き、ロットの剣に落ちた。ロットはそのまま大きく突きの構えをする。


「そっちがその気なら!!」


 アルマスは雷は効いていないのか、それとも回復したのか、剣を一旦空中において、本を持ち一瞬で陣を展開する。陣は何層も重なっており、中には一本の虚剣が装填されていた。


「これを無詠唱いや、取り出したのか?」


 ロットがそう言った瞬間、アルマスは虚剣を発射する。

 ロットはその構えから発射された剣に突きで対抗しようとした。


「なっ?」


 発射された虚剣と衝突するように放った突きは外れ、ロットの兜は虚剣に貫かれ砕けた。そこからはロットの血が飛び散り辺りは軽く赤に染まった。

 ロットの突きのタイミングと位置は完璧であったが、アルマスは発射した虚剣の軌道を僅かながら変化できるように細工していたためであった。また、アルマスのほうでも突きから放たれた雷撃により半身が吹き飛び地面に落ちた。


「中身がない?」


 アルマスは倒れたロットを見て呟いた。

 ロットの分身である鎧の中には何もおらず、鎧の中は空っぽになっていた。さっきまで飛び散っていたはずの血も既に見えない。


「中に何もいないのに、これが最後まで生き残ったら本物になるのか?」


 アルマスはワルドより簡単にロットの能力について聞いていた。なので、この空っぽの鎧が最後まで生き残れば本物になることは知っていた。そのため、中身のないロットの分身に疑問を覚えた。


「完全に体を覆い鎧で中身を観測させないことで存在を不確定にして、やられた奴は偽物として世界に観測させているっていうのが種だ。いってる俺も良くわかってないがな。世界を騙せるほどの幻術が必要らしいが、それは剣がやってくれている。血が飛び散っていたのも世界を騙していたからだ。俺がそこに居ないと世界が気が付いた時点で修正されて血の跡も消失しているだろ?」


 いつの間にか鍬を持ったロットがこっちに来てアルマスに説明した。


「だから鎧の状態じゃないと分身できないのか?」


「その通りだ。それにしてもさっきの技良かったな。あれに対応するには本気でやらんと無理そうだな。」


「対応出来るのかよ!」


「まあな、第一普通の戦闘ならあれは普通に回避するからな。雷は溜まってたし雷撃ブッパでもいけそうだ。といっても本来ならあれ、周囲に一気に展開してやるような奴なんだろ?それじゃあ、あの状態からなら俺は、、、意外となんとか出来そうだな。」


 ロットはまたアルマスと距離を取り、剣を構える。


「さて、第二ラウンドと行きますか。」


 剣はかなりバチバチいっており、さっきよりも出力を上げているのは明白だ。


「もうやる気ねえよ!」


 アルマスとしては、ロットとの模擬戦が想像以上にガチだったのでもうやりたくないのだ。


「うっせえ!戦士たるもの暇な時は特訓だ!」


「俺は運び屋だ!!」


 アルマスはそう言いながらさっきの陣を大量に展開する。装填されているのは剣から槍、斧、鎖などもあったりする。


「材料は虚剣か?」


「もちろんだ!」


「高コストだな!」


 次々と発射されてくる物体をロットは避け、受け流し、弾いたりしてアルマスに近づいていく。


「おらよっと!!」


 ロットはアルマスの眼前に迫り、剣を思いっきり振り落とした。アルマスは身体強化を何重にも重ねた上でそれに虚剣で対抗する。


「その剣は絶縁体か?」


「任意だよ!」


「ズルいな」


「その剣のほうがヤバイでしょ!」


 アルマスはロットの地面を魔法で陥没させる。ロットはその瞬間にアルマスを蹴り飛ばして自身もその反動でそこから離れる。

 アルマスはすぐに姿勢を立て直して陣を展開する。


「対象土、水、起動、泥人形(巨人)!!!」


 周囲の土や大気の水分から巨大なゴーレムが作成されていく。泥で作成されたゴーレムは巨人の形を型どってはいるが、泥ゆえに決まった形がなく、また、アルマスの命令一つで簡単に形を変えることができた。


「これは俺と相性が悪いな。」


 ロットはできたゴーレムを斬りつけてみるが、やはり泥がただ飛び散るだけであり、その泥も直ぐにゴーレムの元に戻っていくため意味がない。

 ゴーレムは周りの土を吸収しどんどん巨体になっていく。アルマスはゴーレムでロットとの距離を作り、ゴーレムと虚剣の弾丸でロットに攻撃をしていく。

 ロットは上手くゴーレムと虚剣の弾丸を避けるがゴーレムによって地形を変えられ追い詰められていく。


「これで決めるか。」


 あと一手でロットの逃げ場が失くなるとアルマスが思った瞬間、ロットはそう呟いた。

 そして、次の瞬間、凄まじい雷光がアルマスを襲い、気がつけば、ゴーレムの分厚い腹には風穴が空けられ、アルマスの首もとにはロットの剣があった。


「これで俺の勝ちだな。」


ゴロゴロゴロゴロ!!!!!


 音が遅れてやって来る中、ロットは満足げにそう言った。





 この後、地形をぐちゃぐちゃにした二人はカノンにボコられました。

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